メンタル不調を来したら vol.5

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ご覧いただき、ありがとうございます。
精神保健福祉士『一教』と申します。

メンタルに不調を来してから、精神科医の診察を受けるまでのプロセスを、精神保健福祉士の立場からお伝えいたしました。
患者様へのかかわり方にも関することですので、この記事が100%正しいと断言することはできませんし、もっと違うアプローチや考え方もあるかと思います。
あくまで、いち精神保健福祉士の意見として、受診検討の際の参考にしていただければと思います。

⑤予診(インテーク)

診察の前に、予診の時間が設けられていることが多いです。
まずは相談員が、下にあるようなことを伺って、診療に必要な情報を収集します。
通常は「インテーク」と呼びます。

『相談員の力量は、このインテークに集約されると言っても過言ではない』と私は思っています。

インテークで聴取されることは、名前、生年月日、住所といった基本情報の他、
◆主訴
◆家族構成(家族との関係性)
◆生活歴
◆既往歴
◆治療への希望
◆関わりのある機関の有無(フォーマル/インフォーマル問わず)
…などです。

このようなことを聞いていくのに、なぜ相談員の力量が集約されると言えるのか。

ただ単にお話を伺い、情報シートを埋めるだけなら、誰にでもできます。

でも、家族構成や生活歴など、プライベートなことを初対面の人にいきなり聞かれて、スラスラと答えられるでしょうか?
私なら…自ら予約を入れて受診に行ってはいますが、何の配慮もなく機械的にプライベートなことを聞かれるのは、やっぱり嫌ですね。

まして、話をするのは、悩みや困りごと、辛さを抱えた患者様です。
そこには、病気(この時点で、この言い方がいいかどうかは別にして)の特徴や症状も大きく影響します。

例えば、気持ちが塞いでいる方。質問されても、思考そのものの動きが優れないために、答えたくても言葉が出てこないこともあります。

例えば、気分が高揚している方。話が止まらなくなることも。

例えば、人間関係に疲弊している方。自分のことに目を向けるのが難しくなっている時に、自分のことを話せというのもまた酷な話。
…などなど。

話したくても言葉が出てこない、話がまとまらないなどの他にも、プライベートなことを明かすという点に対しても配慮しつつ、受診や相談にいらっしゃった方の話す内容やご様子と、病気や症状との関連性を探りながら、主訴をはじめ、いろいろな情報を伺います。

このアプローチは、情報を収集するというよりは、その人の「人となりを知る」という表現の方が、私としてはしっくりきます。いわゆる「症状」を、箇条書きに列記するだけではないからです。

ここまでで、話を聞く際の配慮すべき点にしか触れていません。
この他にも、話すときの座る位置関係や向きにも気を配らなければなりません。
話していただいたことが悩みや困りごととどう関連しているのか。
家族歴や生活歴の、一見何気ないようなエピソードにどのような意味があるのか。
様々なエピソードを、視点を変えたらどう捉えられるのか(生活歴上、「真面目で率先してお手伝いする子」であっても、質問を変えると「自分の思いや希望を言えず、気持ちを押し込めていた」とも捉えられたり)。

全てを詳しくお伝えできてはおりませんが、ざっとこのような技法や知識を総動員して、限られた時間の中でその人となりを知り、考え得る問題点を医師に伝え、診察へとつないでいきます。
診察の前に、長々と聞く訳にはいかないのです。

インテークで、どういうことをやっているかを思い返しながら記事にしていますが、話の展開の仕方や情報シートの使い方など、インテークの取り方を挙げたらインテークの数だけ出てきますので、それはまた別の記事に記載いたします。

ちなみに、私たち精神保健福祉士は、診断に必要な情報を収集し、時にその情報を評価することはありますが、診断を下すことは決してありません。
医師ではないので。
診断するのは、医師の範疇です。

vol.2で、事務の方が業務領域を越えて相談を受けていたことに触れましたが、私自身も、自分の業務領域を越えてはならないのです。
専門家ですから。
自分の範疇で、しっかりと業務に取り組むことが大切なんです。

そして、患者様の気持ちや行動に対して、良いとか悪いとか、審判を下すような発言をすることも、決してありません。

このような原則を理解した上で業務に従事することが、有資格者や専門家であるということだと思います。


お読みいただき、ありがとうございました。
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