怪物のストレート

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コラム
伝説はいくつもある

1998年夏の甲子園
準々決勝でのPL学園戦での延長17回250球の死闘
決勝での京都成章戦でのノーヒットノーラン
史上5校目となる春夏連覇

この時すでに剛速球は最速155km/h
切れ味鋭いスライダー、カーブ、チェンジアップ
多彩な球種は高校生とは次元の違うエースだった

そんな松坂にも唯一の負けがあった

高校2年生の夏の神奈川県大会準決勝
横浜商業戦 2-1 リードで迎えた9回
連日の疲労により連打を浴び同点

なおも1アウト3塁の場面
スクイズを外したボールは暴投
この1球が野球人生を変えたと語っている

野球は自分一人じゃない
みんな、俺のせいだ。悪かった。

松坂は「サボりのマツ」を返上し
練習に明け暮れた

チームの練習にも加わるようになった
チームのことを第一に考えるようになった

この瞬間から新しい松坂伝説が始まった
チームは前代未聞の44連勝をスタートさせた

卒業後、西武ライオンズドラフト1位入団
当然のように新人王を獲得、3年連続最多勝

メジャーでもレッドソックスで
ワールドチャンピオンも経験

しかし2年目に再び悪夢が松坂を襲う

これからと言う時にケガして壁にぶち当たった
こんなはずじゃなかった
自分がうまくなるために
考えられることはずっとやってきた

すべてを書き出して整理した
とにかく悔しくて叫びたくなる時が何度もあった
ぶつけるところが無くて車の中で一人叫んでいた

2014年日本帰国

再起をソフトバンクホークスにかける
気持ちは焦るがケガに悩み続ける

2018年中日ドラゴンズに移籍
完全復活を思わせる6勝をマークした
しかし昔の感覚とは明らかに違っていた

もう投げられる自信がなかった
でもプロをやめる気はなかった
1年休んで肩を直せば投げられると思い続けていた
ケガで投げられなくて辞めることはしたくなかった
最高の姿で、余力を残したままやめることに憧れていた

怪物の決断
10/19 引退

グランドに入る時から拍手がすごかった
自然と涙が流れた

マウンドに立つとまったく音がしなくなった
あんなに静まり返るマウンドは初めてだった

スタンドは総立ちでベンチも相手チームも
総立ちで見ていてくれたと後から聞いた

自分が目指した引き際と正反対の終わり方だった

平成の怪物と言われた男が
ボロボロになるまでやり続けてしまった

ホントに情けなくてカッコウ悪い
・・・でもすごくシアワセだった

シアワセとは何だろう

栄光と挫折を味わった男だからこそ
直球ストレートにこだわり抜いた男だからこそ
味わえるシアワセなのかもしれない

平成の怪物は
最後にメッセージを残した

人は常に決断を求められる
決断する時の勇気
決断するまでの努力は
先の人生に生きてくる

だから
きっと乗り越えられる

前に進んで欲しい
どこまでも

平成の怪物
松坂大輔

プロ野球人生最後の1球は
こだわり抜いた
渾身のストレートだった

Written by Kaz Okayasu

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