【仕事と生活の調和】

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コラム
 私の大学卒業後の最初の勤務先では遅く
 まで残っていることが意味もなく美徳と
 され、定時で帰れるのは女性社員のみで、
 男性社員は連日22時23時が当たり前
 だった。それでいて残業代の支給もない。
 今の基準に照らし合わせれば間違いなく
 ブラック企業だと言われるだろう。当初、
 親会社からの出向社員扱いだったために、
 自宅から通勤可能であるにもかかわらず、
 その親会社の方針で入社一年目は寮生活
 を余儀なくされた。しかも、寮費として
 給与から毎月三万円天引きされるという
 理不尽極まりない有様だった。そんな中、
 昼休みの雑談である先輩社員が口にした
 「幸せになるために仕事をしているのに、
 その仕事のせいで幸せでないのは、本末
 転倒」という言葉が今も頭から離れない。
 その後、新婚の同僚がそんな状況のため
 夫婦仲がうまくいっていないという話を
 聞いたり、ある日その同僚が愛妻弁当を
 食べる間もないほど忙しく、持って帰る
 のは拙いからと言って私に食べてくれと
 頼みに来たりしたことがあったり、私も、
 自分自身が忙しさに紛れて想いを寄せて
 くれた後輩の女性社員に対してきちんと
 向き合えず悲恋に終わり、以後、人生が
 一変し、現在に至るまで影響を及ぼして
 いる、という事実があるので、当時から
 そうだが、今でもこの言葉は身に沁みる。
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 「幸せになるために仕事をしているのに、
 その仕事のせいで幸せでないのは、本末
 転倒」という言葉は言い得て妙だと思う。
 現在は、2007(平成19)年策定の 
 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・
 バランス)憲章」により、様々な取組が
 進められているが、ハラスメントですら
 セクハラ以外あまり騒がれていなかった
 あの当時、「就労による経済的自立」と
 「健康で豊かな生活のための時間の確保」
 のバランスを取ることが仕事の生産性の
 向上に繋がる、などと職場が考える筈も
 なく、「早く帰る暇があるのならば何か
 できるだろう」という根拠のない論理を
 一方的に押し付けるのみだった。今では、
 従業員がメンタルヘルスを悪化させれば
 集中力や注意力が低下し、仕事の生産性
 や企業イメージの低下に繋がるとされる
 ようにもなったが、「ワーク・ライフ・
 バランス憲章」がなかった当時の企業の
 認識は、「殺されてもやれ」「死んでも
 やれ」の如き仕事ファーストが多かった。
 実際には、労働基準監督署の是正勧告を
 何度か受けていたし、退職した元社員が
 退職後間もなく亡くなり、死因は苛酷な
 労働環境のせいだとしてご両親に裁判を
 起こされたこともあったから、「仕事と
 生活の調和」を考えるべきだったと思う。
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 「仕事と生活の調和」が大切なのは何も
 社会人だけではあるまい。私自身の経験
 で言えば、中学生になった頃から日曜日
 以外はテレビを観ずに机に向っていると
 いう形だけはとっていたが、大学生の頃、
 それが失敗だったようだとふと気づいた。
 と言うのも、当時、放送部でアナウンス
 を担当していた私は、昼休みに音楽系の
 クラブの野外ライブの司会をする機会が
 多く、その度に、自分のボキャブラリー
 不足やキャラクターの平凡さを痛感して、
 「いろんなところから情報を得ることが
 できていなかったのは俺の致命的な弱点」
 と思うようになっていたからで、これも、
 「健康で豊かな生活のための時間の確保」
 をしてこなかったために仕事の生産性が
 低下している、と考えていいと思うのだ。
 また、テレビを観ずに形だけ机に向うと
 いうのは、「早く帰る暇があるなら何か
 できるだろう」と同じで、「テレビなど
 観る暇があるなら勉強できるだろう」と
 いうことになる。この二つの根拠のない
 論理の共通点は、その奥に「やっている」
 という安心感を得たい欲求があることと、
 自分に無理を強いた結果として集中力や
 注意力の低下により十分に力を出せない
 でいること、である、と私は思っている。
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 今後、コロナの影響でパラダイムシフト
 (当然とされていた認識・思想・価値観
 等の劇的な変化)を余儀なくされるのは
 必定だから、ワーク・ライフ・バランス
 に関係なく「多様な働き方・生き方」を
 選択肢に入れて考えなければならないと
 思う。かく言う私自身も、コロナ騒動の
 前から、組織の一員には向かない自分に
 見切りをつけて、これまでの苦い体験を
 無駄にしない生き方を模索中なのである。
 「久木弥九蔵」の顔を持つ現在の私には、
 クッキーだのソーイングだの替え歌だの
 ボランティアだののプライベートを充実
 させる要素がいくつもあり、寧ろそちら
 の方にバランスが傾きがちになっている
 くらいだから、日々の研鑽さえ怠らねば、
 いずれは、カウンセラーとしての向上も
 果たせるだろうと根拠もなく信じている。
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 御閲覧、心より感謝申し上げます。
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