第36回:企業価値評価の投資銀行実務 ~ 「NTM」予想値

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第36回:企業価値評価の投資銀行実務 ~ 「NTM」予想値

この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。

以前、類似企業比較分析(Comps分析)について紹介しました。その中で、決算期が異なる会社に対するカレンダライズという調整手法も紹介しました。

【類似企業比較分析について紹介した過去記事】

今回は、その更に応用編として「NTM」予想値について紹介したいと思います。

まず、ファイナンス等の分野での企業業績に関して用いられている概念として、LTMとNTMというものがあります。LTMとは「Last Twelve Months」の頭文字で、過去12カ月(実質的には、過去4四半期)の業績実績となります。図で例示すると、以下の4四半期分の実績値を合計したものになります。

LTM.png

これと類似して、NTMとは「Next Twelve Months」の頭文字をとったもので、今後12カ月(実質的には、将来4四半期)の予想値となります。図で示すと、以下の期間の予想値の合計になります。
NTM.png

NTMを予想値として参照する便利な点としては、カレンダライズと共通する所ですが、決算期が異なる会社同士の比較にも使えるということです。

よくある質問として、「NTMは、1年先/今期予想のFY+1と似ているのではないか」ということですが、FY+1を例えばデータベース等で取得すると、あくまでも「今期」の予想になるので、決算期が異なる会社同士の場合は、違った期の数字が出てきます。

また、例えばマルチプルの過去トレンドを取得する際等において、分析対象企業の決算期が終わったがコンセンサス予想値が形成されていないとき、テクニカルな面で「FY+1というのは終わった期なのか、いま進行中の期なのか」分かりづらくなる時が生じます。
⇒ まさに本日4月24日のようなタイミングだと、3月末決算の会社は既にFY22/3期は終わりましたが、まだFY22/3期の業績発表がなされていないところが多いため、データベースで「FY+1」を指定して予想値を取得した場合、果たしてFY22/3を指しているのか、FY23/3を指しているのか、ぱっと出てこない場合があります。

こうした場合において、一旦は「NTM」で予想値を取得して、比較分析を行うという際にも活用できるものになります。

一方で、NTMの欠点としては、四半期ごとに予想値がない場合は計算が難しくなります。資本市場における予想値は基本的には証券会社のアナリストが作成することになりますが、規模が小さい会社といった場合には、通期の予想値しか作成されていない場合もあり、そうした場合にはNTMでのアプローチがやや難しくなってきます。

LTMやNTMが使われる実例を見てみます。以下はネットで見つけた証券会社によるComps分析のテーブルですが、LTMとNTMが含まれています(Lastと記載されているのがLTMだと思います)。これは恐らくは決算期が異なる会社をComps分析に含めているためだと推察致します。一方で、FY+1とFY+2についてはカレンダライズがなされていないものと推察され、脚注に各々FY+1とFY+2がどの期なのかが記載されていることも見てとれます。
Sample.png


本日は以上となります。最後までお読みいただき、誠に有難うございます!

次回以降もどうぞ宜しくお願い致します。

【ディスクレーマー】
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