療育では「感覚統合の視点」がとても大切です。今回はその一つ「前庭覚」を基に「落ち着きのないお子さん」の「落ち着きのなさ」を療育的視点で記述していきたいと思います
前庭覚についてはいまだ研究がなされている分野でもあります
お子さんの様子を見た実践や、私の経験則的な部分もありますので参考までに…
前庭感覚(平衡覚)とは
前庭感覚は三半規管が司る感覚です。主な役割は
・「揺れる」、「傾く」、「回転」、「速さ」を感じとる
・視覚から回転の刺激を入れる。眼球運動のコントロールをしている
・揺れで、興奮や、リラックスなどの情緒のコントロールをしている
・身体の姿勢のバランスを保ち、「傾き」を調整している
私はお子さんの前庭覚を見るとき3パターンに分けています
①順調に育っている
②前庭覚の「過敏さ」で育っていない
③前庭覚の「鈍麻さ」で育っていないようにみえる
過敏だと前庭覚を入れる遊びを怖がり、感覚が成長しません
鈍麻だと強い感覚でないと身体が受信できないため、長時間、強刺激を入れ、異様にみえます
私が関わった前庭覚が鈍麻・過敏なお子さんは以下の行動、特徴がみられました
・長時間回転運動をしているのに目が回らない(鈍麻)
・目が回らない(眼振がない)
・落ち着きがない(鈍麻)
・長時間椅子に座れない(鈍麻)
・様々なものに注意がそれ、動き回ってしまう(鈍麻)
・夜遅くまで起きてしまう(鈍麻)
・回っているもの(扇風機、室外機、車のタイヤ等)に強い興味をもつ(鈍麻)
・ブランコ、滑り台などの遊具を何度も行う(鈍麻)
・以上のことをしない及び、参加しない・逃げる行動をとる(過敏)
が挙げられます
基本的な行動は「鈍麻さ」が中心に起こっていることが多い印象です
前庭覚をご自身で肌で感じると良く分かります。以下に児童発達支援センターの懇談会でやっていたものをご紹介します
眼球運動の体験
前庭覚がしっかりしていると、無意識に自分の見たいもの、注目したいものに焦点を合わせてくれます
手短な本の文字を見てください。文字を揺らしてみると文字は見えません
しかし、自分が揺れる分には文字は見えるんです
これは前庭覚が目を揺らして焦点を合わせる運動がしっかりなされているということです。周囲の動きは無意識的に取り入れないことで、視覚情報を調整しているのです
眼の焦点を合わせようと眼球が合わせて動きます。あまりに回りすぎると目が痙攣し人は酔って気持ち悪くなります。自立神経とつながっているためで、前庭覚がしっかり育っているといえます
バランスボールでの体験
バランスボールに座ったり、横になってみてください。その時に、身体が傾かないように無意識に戻ろうとします
これも前庭覚が正常に働いてるということです
次回は「落ち着きのないお子さんの問題を前庭覚の視点で考える(後編) 関わりや対応」を投稿します
https://coconala.com/blogs/1630470/194633