「依頼したいを伝えるだけ」── ココナラAIマッチング「発注AIアシスタント」、開発の舞台裏

2026年6月29日、ココナラは「発注AIアシスタント」の提供を開始した。まずは一部の新規登録ユーザーを対象とし、順次拡大する予定だ。

「ホームページを作りたい」「動画編集したい」──やりたいことはあるのに、誰に、どう頼めばいいかわからない。ココナラスキルマーケットにはオンラインレッスンからマーケティングまで740カテゴリを超えるサービスが並ぶが、その豊かさが逆に選びづらさにも繋がっていた。訪問者の多くが「使いたい気持ちはある」まま離脱してしまうという現実が、長年の課題としてあり続けた。

この課題に正面から挑んだのが「発注AIアシスタント」機能だ。やりたいことを言葉で伝えるだけで、AIが追加質問を重ね、ココナラ経済圏の中から最適なマッチング方法を提案する。機能リリースに向けて、開発チームはどんな壁を越えてきたのか。

アセット&AI戦略部で本プロジェクトのプロダクトマネージャー杉山友翔(すぎやま ゆうと)と、プロジェクトリーダーかつココナラスキルマーケットの事業責任者で専門役員の外崎匠(とのさき たくみ)が、それぞれの視点から開発の舞台裏を語る。

目次

なぜ「発注AIアシスタント」が必要だったのか〜豊かすぎるプラットフォームの逆説〜

杉山 友翔 (すぎやま ゆうと)/ アセット&AI戦略部 プロダクトマネージャー

この機能が生まれた背景を教えてください。

杉山:今のココナラは、スキルマーケット・募集・エージェントと、さまざまな方法で外注や人材採用を支援しています。でも、サービスが多機能であることが逆に選びづらさを生んでいました。スキルマーケットだけでも740カテゴリを超える仕事が並んでいるのに、「いったい何を、どう頼めばいいか」がわからなくて離脱してしまうユーザーが多かったんです。

ユーザーインタビューをしても、「ココナラで何かお願いしたいと思っていたんですが、結局どうすればいいかわからなくて」という声が繰り返し出てきました。発注の経験が少ない方ほど、「最初の一歩」が高い壁になっている。そこをAIで解消したい、というのがこの機能の出発点です。

具体的にどんな体験になるのでしょうか?

杉山:やりたいことを言葉で入力すると、AIが追加質問をしながらニーズを絞り込み、最後にユーザーにとって最適なサービスを提案します。たとえば「ウェブサイトを作りたい」と入力したら、制作の目的や優先したいこと、テイストなどに関する選択式の質問をAIが投げかけ、依頼先の候補を提示します。

ココナラスキルマーケットには今回提供開始した発注AIアシスタントと類似のAIを活用したサポート機能がありましたが、最も違うのは、提案できる範囲です。従来はスキルマーケット内のサービスしか提案できませんでしたが、今回はスキルマーケット・募集・エージェントというココナラ経済圏全体が対象になりました。経理業務の相談なら、スポットの単発依頼なのか毎月の継続業務委託なのかによって、提案するサービスが変わる。ユーザーの状況に応じて「どのサービスに案内するか」を自動で判断できるようになったのが、今回の大きな進化です。

740カテゴリ全対応、言葉にできないニーズと格闘した〜カテゴリによって、聞くべき質問がまったく違う〜

開発で一番大変だったことは何ですか?

杉山:AIが追加質問をする設計の難しさです。ウェブサイト制作なら「コーポレートか、LPか」を聞けばいい。でも占いなら「チャット形式か、電話か」を聞く必要があるし、ロゴなら「どんな用途か、どんなスタイルか」が重要になってくる。ユーザーが依頼したい内容ごとに、聞くべき質問の軸がまったく違うんです。

ココナラは占いもビジネス相談も動画制作も、740カテゴリを超えるスキルを扱っています。「どのカテゴリに当てはまっても質問が不自然にならないように」設計しなければならない。扱うカテゴリが絞られている専門サイトであれば、投げかける質問もある程度決まってくるのですが、カテゴリが多いことで想定される質問パターンは膨大にあるような状態で、それぞれに最適化された質問フローを設計するのは、かなり骨が折れました。

それをどう整理したんですか?

杉山:「1度きりの依頼を希望するか継続的な依頼を希望するか」「何を依頼したいか」という2軸を起点に分類する構造を作りました。ユーザーが入力する自然言語の中には、目的や依頼の規模感のヒントが含まれています。「起業するので会社のロゴを作ってほしい」なら、ビジネス用途・単発依頼という情報がすでに文章の中にある。AIがその意図を読み取って正しい経路に分配していくイメージです。質問フローの設計に時間がかかりましたが、ここが不自然だとユーザーに「会話がズレている」と感じさせてしまう。ユーザー体験の核心部分なので、妥協できませんでした。

「テストが終わらない」── 品質との果てしない戦い〜精度とスピード、どちらも諦めなかった〜

外崎 匠(とのさき たくみ)/ 専門役員 ココナラスキルマーケット事業責任者

プロジェクトリーダーとして、特に苦労したことを教えてください。

外崎:テストです。とにかく、テストが終わりませんでした(笑)。

AIの会話品質を担保するには、膨大なパターンを検証し続ける必要があります。「このカテゴリでこういう入力をしたとき、AIは正しく質問を返せているか」「最終的に適切なサービスに案内できているか」──チェックすべき項目が際限なく出てくる。740カテゴリ×入力パターンの組み合わせを人の手で全部確認するのは、現実的に不可能でした。

どう対処したんですか?

外崎:AIがブラウザを操作して自動でテストを実行する仕組みを作りました。「ラリー回数は適切か」「日本語は自然か」「正しいサービスに案内できているか」「価格基準を満たしているか」といった評価項目を設定し、何パーセントクリアしているかを自動で判定します。不合格の項目を特定して改修し、また回す。そのサイクルをひたすら繰り返しました。

もう一つの壁が、精度とスピードのトレードオフです。LLMのモデルを高性能にすると精度は上がるけれど、処理時間が増えてユーザーが「待てない」体験になってしまう。AIの精度だけ追いかけても意味がない。ユーザーが気持ちよく使えるスピードを保ちながら品質を上げていくバランスを見つけるのが、本当に大変でした。

それでも諦めなかった理由は?

外崎:新規登録してくれたお客様が最初に触る体験だからです。ここで「ココナラは使いにくい」と感じさせてしまったら、お客様は二度と戻ってきてくれない。第一印象がココナラの全てを決めるという危機感をチーム全員が持っていました。だから誰も「これくらいでいいか」とは言えなかった。それがこのプロダクトの質を支えたと思っています。

ココナラだからこそ意義がある〜マッチングの難しさが大きいほど、AIの価値は大きい〜

AIマッチングに取り組むことの意義をどう捉えていますか?

外崎:ECにおいてAIがサービスをレコメンドする機能は、他社にもあります。でも、ココナラが取り組む意義は特別に大きいと思っています。ココナラは「何を頼めばいいかわからない」という問題が、他のどのサービスよりも深刻だからです。

ネットショッピングサイトで「何を買えばいいかわからない」と悩む人はほとんどいない。でもココナラで「何をどう発注すればいいか」に迷う人はとても多い。ファッション通販サイトで服を選ぶより、はるかに難しい判断を求められるサービスなんです。その難しさの大きさがあるからこそ、AIがマッチングを助ける価値はココナラでは非常に高い。言葉でサービスを探せる体験を作ることは、このプラットフォームに本当に必要なことなんです。

最後に、発注AIアシスタントを試してほしい方へメッセージをお願いします。

外崎:「ココナラで何かお願いしたい、でも何をどう頼めばいいかわからない」と感じたことがある方に、ぜひ一度使ってみてほしいです。難しく考えなくていい。「ウェブサイトを作りたい」「資料のデザインをなんとかしたい」──そんなざっくりした言葉で大丈夫です。AIが一緒に考えながら、あなたに合ったサービスの提案をします。740カテゴリを超える専門家がいるココナラへの第一歩を、言葉ひとつで踏み出してもらえたら嬉しいです。

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