恋愛ミステリー小説:おっとり妻【朗読動画】

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 おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。

 youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。
 自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。
 たまに作者自身の北条むつき朗読もございます。
 今回ご紹介の朗読動画は、ミステリー調の恋愛小説のお話です。
 良かったら聴いていただけると嬉しいです。

・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉おっとり妻
作者:北条むつき
朗読:Meg

 私は特に美人と言われる存在ではない。至って普通。それに性格も大人しいとは昔から良く言われた物だ。そんな私を選んだ今の夫からは良い妻だといつも褒められる。

 私たち夫婦は、この住宅街に3ヶ月前に越して来た。ご近所の関係も良好で、至って幸せで普通な生活をしている。結婚したのはこの住宅街に越して来る少し前だ。夫は気だても良く、私の世話を焼くのが好きならしい。

 それに近所付き合いも積極的で、自治会などにも夫が自ら進んで色々とやっている。そのお陰か、私も夫に付いて世話係的な役目で自治会にお邪魔する事がよくある。その光景を見てか、近所では中々おっとりしていて、良い奥様じゃないかと噂が立てられている。夫もその事に対して自慢げで、嬉しいようだ。そのお陰か、夫との関係も今のところ良好。

 それに私としては、夫の稼ぎもそこそこで、一般サラリーマンの平均年収以上は有に貰っている。中の上と言うところか。それでいて優しく頼もしいところ。それが第一に嬉しい。
 夫と私の間にはまだ子供無く、夫には早く子供が欲しいとせがまれては夫婦生活に勤しむ毎日。
 しかし私は子供があまり好きではない。
それより新婚である今は、夫婦二人での生活を充実させたいと思っている。
だから、近所付き合いは大事だ。今が、いえ、これからが一番幸せな二人の時間を過ごし始めているのかもしれない。だから、私は夫の参加する自治会や町会にも顔出す。笑顔でご近所さんに対応し、私自身も心地よい気分になれる。なんて、幸せな毎日なんだと・・・。

そして、先ほど言った充実と言っても、さほど高級品を集めたり、月に一度や二度も海外旅行にこだわる私でもない。至って普通の洋服を好んで着るし旅行も年に一度近場で行ければ良いと思う。
 炊事も洗濯も掃除も別に苦ではない。どちからと言えば綺麗好きな方ではある。しかも近所付き合いも良くし、町会などにも参加もする。だから、夫にイヤな顔をされた事はまず無い。

 まぁおっとり淑やかに夫を支える妻…。とでも言えば良いのか…。それに夫は先ほども言ったが、私の世話を焼くのが好きだ。

 もっとお前には、良い暮らしをさせてやりたいからと、月の小遣いも多く渡したいが、必要以上に受け取らない。というか、自分の為に使いなさいと逆に洋服を買ってくれたりもする。
 そのお陰か、少しは化粧品も良い物を使ったり、たまに洋服も良いショップで購入したりする事はある。ようは、夫はいつでも綺麗な妻で居て欲しいからだと、嬉しく思う。

 第一、好き嫌いの少ない夫にも、大変感謝している。最近は主婦友達の間で、モラハラ夫や、妻が丹精込めて作った料理を、「食えるか!こんなもの!」と投げつけてくる、理解不能夫たちが、増えてきていると嘆いている友達や世間の主婦たち。そんな中でも、私はとてもいい夫を捕まえたと思っている。
 優しくて頼り甲斐があり、そして包容力もある。そんな夫に私は惚れて良かったと思っている。
 何も申し分の無い夫。
それに、ご近所さん達。こんな私をおっとりとした良い妻だと褒めてくれるのは凄く嬉しい…。そして何よりもそれを支える良い妻・・・。私・・・少し自分に酔ってるのかしら?
アハハハッ!ダメダメ・・・。正気に戻らないと・・・。
でも…。
私には秘密がある…。
しかも夫は私の料理を美味しいと言ってくれる。確かに料理も得意な方だ。先日の事だ。
「おぉ!今日は俺の好きなビーフシチューじゃないかぁ!」
「そうよ?」
「…うん!おぅ、うまいなぁ…やっぱり愛情こもった料理は違うな!」
「やだ!当たり前の事じゃない?そんな大げさな…」
「うまい!これは俺だけの特権だなぁ!早く子どもが出来たら食わせてやりたいよ」
「ウフフッフ、もう!あなたったら…」
「なぁ?今日も頑張るか?」
「んも!ちょっと…食べてる時に何?」
「…愛してるよ!」
「ありがとう」
「皿は置いておいてくれ、俺が洗うから!」
「えっ?いいわよぉ…」
「じゃあ、一緒に手伝うのはどうだ?」
「ありがとう」
 それは嬉しくあり、だが「お前の作る飯はいつもいつも美味しくてたまらないよ!」と神を崇めるが如く嬉しそうな顔つきになる。
正直嬉しい!「ありがとう!またがんばる!って思う


でも、心の中じゃ・・・。
フフフフッ…男って、たーんじゅーん!
胃袋さえ掴んじゃえば、笑顔でいてくれる。
 実は、そのビーフシチューは隣隣の市に売られているホテルの物。
ホテルが味を世間に広めようと始めた販売会。毎週水曜日に特別販売するご自慢のビーフシチュー試食会で手に入れた代物だ。もちろん、温め直せばそれだけで美味しくなる。

 美味しくて当たり前。私が作ったものと勘違いしちゃって…。私の腕もソコソコだが、この味はまず出せない。だから、ある所に言った帰りに、必ずと言ってこのビーフシチューを手にして帰る。
 夫にはこれは時間と量力が掛かるから、月に1度ね?と伝えてあるから…。それを信じきっている男ってまるっきり単純で面白い。


アハハハハッ!


そう、私には秘密がある。

 今日は夫が会社の同僚と一緒にゴルフで朝早くから出発。だから私は夫より早く起きて、朝ご飯の準備をし夫を優しく起こす。

「子供が出来れば、良いママになりそうだな」と朝ごはんを作ってくれたというだけで、夫は私を好意的に見ている。

新婚なんてそんな物だろう。

 と、まぁそんな具合に一緒に朝食を済ませ、優しく夫を見送る。見送る際には、私は夫の持ち物等を色々準備もする。

「いいってぇ?お前はゆっくりしてて」と優しい言葉。
でも私も世話焼きなところがある。


だって私はおっとりとした良い妻。

そんな朝で夫をゴルフに送り出し、私は戦闘モードに入る。
「あっ…その前に、後片付けと、掃除、洗濯」はもちろん済ませないと。

 それから行動開始だ。まずは、いつも以上に少し濃いめの化粧。でも少しだけだ。
そして 服選び。これが一番大変な部分でもある。これを見落とせば、今までの苦労が水の泡だ。

さぁ!準備も整った。

 今日は私も出かける予定だ。この住宅街からかけ離れた違うもう他府県と言っても良いだろう。それぐらい離れていないとまずまずい。

 今、気になっている一人の男が私にはいる。その男性は、ダンスの先生。年の頃はうちの夫よりちょっと上だ。


そのダンスの先生は、以前友達の康子と一緒にダンスショーを見に行った際に一目惚れをした。だから浮気ではありません。
 一目惚れと言っても、始めはダンス会場の2階席から眺めていただけ。そのダンスに魅了された私は、「きっと凄い男に違いない」そう踏んで、康子に色々とそのダンスの先生の事を聞きまくった。ダンス界では結構有名な存在らしい。

 女性ファンも色々居るみたいな事も聞いた。その先生の事を注意深く調べて行くと、ご結婚されている事が分かった。しかし、そのダンスの先生は今離婚調停中らしい事も耳にした。
 イケメンでダンス界では有名でも離婚調停中。調べて行く中で、そのダンスの先生と奥様との間には、子供が出来ない理由があったらしいのだ。奥様のせいではなく、ダンスの先生のせいで…。

 浮気性とかそう言うのでは無いらしい。ただ無精なだけだ。という事はだ。私にとっては好都合。だって私は子供が嫌いだ。

 ファンを大事するが奥様一筋。だが困っている人をみれば助けないと気が済まない。そんな性格の情報を手に入れた私は、そのダンスの先生に偶然を装い近づいた。ダンス会場終わり、駅に向かいファンから離れた後、駅で偶然コンタクトを落としたふりをした。
 まさかそんなので引っかかる男などいないだろうと思うでしょうね。でもこの先生、わたしの顔を覚えていた。「ダンス会場でよくお見かけする方ですよね?」と。

 その言葉を言われればもうしめたものだ。後は一緒にコンタクトを探し、さりげなくボディタッチとさりげないお礼。そしてその後も「この間はありがとうございました」と茶菓子を持ち近く。ファンの間では、あの人誰となりながらも、先生は徐々に私のペースになる。偶然を装い2度目まで外で偶然に会う。
 その後は、「もしよければ、今度お礼にお茶でもいかがですか?」と話しかける。基本男性というのは、女の押しに弱い。だから大抵は快く引き受ける。


それにダンスの先生自身には、一番のいい点がある。
それは…。
 夫の年収の倍近くの年収を稼ぐ。あっ先ほど言った事と矛盾してる?

そう…。先ほどはあくまで建前…。だって、私もっと良い生活したいもの。

 そんな離婚調停中でもダンスのショーには欠かさず出る。女性のファンがつこうが奥様一筋だったと聞かされた事も含め、私は益々好きになった。
 ただ、ダンスの先生が無精なだけで、奥様から離婚を申し立てられた。いやそれだけはないだろうが…。奥様は、もう私のことは知っているのだろうか?フフフフッ。離婚の話は進んでいる。

 まず第一に、実直で生真面目で横やりも何のその。妻を大事にしていたとファンからも好評な先生なのだ。でも残念ながら奥様はそうでは無かったみたいだが…。

 だからこそ、私がその先生ダンスだけでは無いお相手をさせて頂きます。だってもう、色々と教えてもらって、夜のお誘いもあり、深い仲にまでなりつつある。後はもう一押しと一引きと言うところか?私の魅力をこれから存分にお店するわよ?覚悟しててね先生?

最初にも言ったが、私はおっとりとした良い妻だ。

表向きは…。

 今日は戦闘モード。朝から大変なのだ。こうやって、頭の中で、これからそのダンスの先生とどうなるかと、想像するだけで背筋がゾクゾクとしない?今の夫にはないイケメンもそうだ。子供が出来ない暮らし。それと年収!住まいも豪華。幾らだって贅沢のし放題な暮らし。その思いもあるが、待ち受けている私に向けたダンスの先生の切実な思いと感情の波。

 離婚調停中の切ない感情の時こそ、付け入る時だ。唯のイケメンだけなら5万と居る。
男男していて、他の女に手を出す不埒な先生だったら要らない。奥様一筋だからこそ惚れた私でもある。

私には秘密がある…。

夫は初婚。
私は再婚。

 決して美人と言える顔でもない。でも、私は狙った獲物は捕まえて来た。おっとりとした良い恋人になる事で…。


 以前の夫は今の夫より年収も性格も少しダメだった。男だからと強い態度で出られた事もあった。いわゆる今話題のモラハラ夫に成り下がったのだ。
 今の夫はそれがまだ無い。でもいつかまた同じようになるだろうか…不安。でも一番は今の夫よりそのダンスの先生がより優れていること。女として優れた遺伝子を残したいという思いは私にはない。
 悪どい女だと思いでしょう?フフフフッ!!だって、私には秘密がある…。
 だっておっとり妻として生きるのも悪くは無いが、私には野望がある。今より良い暮らし、今より良い男。今より良い関係。ただ、私にとってのいい関係が、だ・い・い・ち!

 私の思いを知った男性はどう思うでしょうね?フフフッ…。
だって私はおっとりとした良い妻…。

いいえ!私は夫取り妻…。


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