怖い話『霊感が移る』

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小説
 専門学校時代の女友達の何名かは、よく幽霊を見たと話をしていた。
 彼女達が話す興味深い事は“霊感は移る”という話だった。

 つまり、霊感というものは、風邪のウイルスか何かみたいに他人に感染するものなのだと。

 当時、私は地元にある、幾つかの心霊スポットに、車好きの友人達に誘われて、連れて行かされていた。

 女子数名、私も含めた男子数名の組み合わせだったと思う。
 その中の女子グループの二人には、霊感があった。

 元々、霊感の強い女の子は一人だけだったそうなのだが、どうも、もう一人の方は、“霊感を移された”らしいのだ。
 友人グループで遊びに行く時間帯は、真夜中が多かった。
 深夜ドライブしながら、みなで色々な場所へと訪れた。
 心霊スポットに行く度に、女子達は何かが見えるとはしゃいでいた。骸骨が見えるだの、不気味な女の人が見えるだの。霊感がある事を楽しんでいるように思えた。

 それから、奇妙な事が立て続けに起こった。
 その友人達と行動をしていると、私も少しずつ“気配を感じる”ようになったのだ。それは、心霊スポットと言われるような場所だったり、普通の周辺の公園だったりした。女の子達は、自身の霊感に関しては、楽しんでいるみたいだった。

 ある時、その友人達と、地元のなんでもない公園の茂みの辺りを夜に歩いていると、ブツブツと念仏を唱えて座っている謎に男性が、はっきりと私にも“視えた”。そう、私にも視えたのだ。

 少し目を離した隙に、その人物は何処かへと消えていた。
 どうやら、私にも“霊感”は“移ってしまったらしい”。
 それ以来、私は視える事は少ないものの“気配だけは感じる”ようになった。
 特に夜の神社やお寺、いわく付きの場所などは“これ以上、先に進めない”という圧迫感のようなものを覚える。

 専門学校を卒業して、モラトリアム期間を続ける為に大学に通ったが、専門学校時代の女友達とは交流が無くなった後も、数年間は、霊の気配のようなものが私に纏わり付いていた。


※2021年頃に「ホラーを小説を書く」のご依頼で依頼人様に提供した作品です。無断転載はおやめください。




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