背景をぼかすのがそんなに大事か? ぼかさないと何が駄目なのか? いまさら聞けない初歩的な写真の疑問 

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「背景をぼかす」は、初心者向けの『写真の撮り方』の本でもサイトでも定番のテーマです。「背景をぼかしてプロ並みの写真を撮ろう」としているものも少なくありません。一段上のあこがれのテクニック扱いです。

しかし、背景がぼけていなくても、何ら不都合を感じていない人も多いのではないでしょうか。そこへ「あこがれのプロのテクニック」とされても、食指が動かなくても無理はありません。

「背景をぼかすことが、なぜ大事なのか」をご説明し、「背景をぼかすことに興味のない人は、なぜそうなっているのか」を推察してみます。

文章同様に写真にも大事な「見せたいものが明確」

新聞記者になって半年もたたないころ、先輩から言われました。「写真のうまいやつは、文章もうまい。なぜなら、見せたいものがしっかりと意識されているから」。その後の経験も思い出してみると、確かにその傾向はあったと思います(ただ、逆の「文章のうまいやつは、写真もうまい」はありませんでした)。

この「見せたいものがしっかりと意識されている」を、文章について少しかみ砕けば、「論旨がシンプル」「不要な内容がない」「冗長な表現がない」などと考えていいでしょう。

おそらくは、この「不要な内容がない」「冗長な表現がない」に相当することを、写真で実現できる手段のひとつが「背景をぼかす」です。

なんのために背景をぼかすか

ほとんど同じといえばそうですが、背景をぼかす理由は、「目障りなものを半ば消す」と「見る人の視線を誘導する」です。また、背景ばかりではなく、「前景をぼかす」もありますが、主役となる被写体と前と後ろが変わるだけで、同じことです。

・目障りなものを半ば消す

初心者の写真にありがちなのが、「背景がごちゃごちゃしている」です。先にこのココナラブログでも、『知らずにやっていませんか? 「首切り写真」「くし刺し写真」は、見る人を追い払ってしまうぐらい不快』をアップしていますが、これら「首切り写真」なども「背景がごちゃごちゃ」の一種と考えていいでしょう。
写真の主役がいるのに、そこへ写真を見る人の視線が行かないのです。

自身の撮る写真では、そんなことは気にしたことがない人も少なくないでしょう。常にそんな写真ばかり撮っているので、気が付かないだけではないでしょうか。

また、おそらくは、他人の写真を見るときにも、意識していないでしょう。しかし、どうでしょうか。じっと見る気になったり安心して見たりする写真がある一方で、すぐに目を離してしまう写真もあるのではないでしょうか。となると、それがサイトに掲載されているものならば、訪問者はそのページやサイトからはすぐに立ち去ってしまいそうです。

すぐに立ちされてしまう写真の一種が、背景がごちゃごちゃしているものです。訪問者の滞在時間を下げ、離脱率を上昇させてしまいます。ネットオークションの出品写真ならば、十分に購入を検討してもらえません。

・見る人の視線を誘導する

「背景をぼかす」ととりあえずいっていますが、「背景」といえるほど奥ではなくても、ぼかす部分を作る場合もあります。

次の写真3枚を見比べてください。招き猫を使っていますが、人の顔でも同じことです。
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1枚目は左目(向かって右の目)にピントを合わせ、右目をぼかしています。2枚目もピントは左目に置いていますが、ぼかしを弱くし、両目ともくっきりと見せています。3枚目は1枚目と逆に、右目にピントを合わせ、左目はぼかしています。

本当は先に、ご自身で、「どのような写真の見方をしたか」とご確認いただきたいところです。しかし、そうもいかず、先に答えをいってしまいます。

1枚目ならば、まず視線が落ち着くところは、左目でしょう。ほかの部分を見るにしても、しばらくしたら、左目に戻ってくるはずです。この効果から、おそらくは顔を集中的に見るはずです。

実際、俳優やタレントなどをドアップで撮って表情を印象付けたいときに、よく用いられるピントの合わせ方です。

2枚目は特段の不都合はないでしょう。しかし、表情(顔面)に対して、さほど集中してみることもないはずです。

3枚目は、右目に視線が着地するのではないでしょうか。しかし、端にあるために、そこから顔のあちこちに視線を走らせるには、窮屈感があります。言い換えると、見る人がすぐに嫌になってしまう写真です。

ぼかさないのが正解の写真もある

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背景のぼけた写真を撮るのが、いつも正解なわけではありません。被写体次第・撮影意図次第です。

たとえば、旅館の夕食メニューの紹介を撮るとしましょう。

「メインはブランド牛の鍋(なべ)だが、それだけを撮ると、全体の品数の多さがわからない」ならば、「ブランド牛の鍋にピントを合わせ、ほかのメニューは背後でぼかして入れる」が考えられます。

あるいは、「ブランド牛に、カニ、刺し身など、ぜいたくな食材が盛りだくさんに出る」を強調することもあるでしょう。となると、見せたいのは「盛りだくさん」なので、全体にピントを合わせたほうがいいかもしれません。

この「全体にピントを合わせる」ことを「パンフォーカス」といいます。比較的よく用いられるのは、「なにかものがあって、密集しているのを表現したいとき」「奥行きのある被写体の全部を見せたいとき」などです。

ぼかすは手段のひとつ、構図なども考えて撮る

背景をぼかすのは、目障りなものを半ば消し、見る人の視線を誘導するのに有力な手段ですが、唯一の手段ではありません。

そもそも、目障りなものがあって、どうしてもそのアングルではければならない理由がないのならば、アングルを変えたり、場所を変えたりすればいいだけです。背景をぼかすことに興味のない人は、かなりの確率でアングルや構図にも興味がないはずです。

つまり、「何を見せたいのか」を整理ぜずに、あとは見る人へ丸投げしています。「見せたいものが全く伝わらない」とまではいいません。しかし、「工夫をしたならば(写真の撮り方を知っていたのならば)、よりよく伝わったはずだ」は、いっていいのではないでしょうか。

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