写真の手ぶれはなぜ起きる? どう防ぐ? いまさら聞けない初歩的な写真の疑問

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「カメラの手ぶれを防ぐにはどうしたらいいか」は、ネット上でもよく紹介されています。また、カメラボディー・レンズの広告では「シャッタースピード○段分の手ぶれ補正効果」がよくアピールされています。

ただ、「手ぶれとはどういった現象か」がわからないと、これら「手ぶれ補正効果」なども、なんのことかよくわからないのではないでしょうか。この記事では、カメラの手ぶれそのものを中心に解説します。

手ぶれが起きるのには、撮り方だけではなく、ボディーのメカニズムが原因の場合もある

手ぶれは単純にいえば、「シャッターが開いている間に、カメラボディー&レンズを揺らしてしまって、揺れた方向に画像が流れること」です。一般的には「カメラをしっかりとホールドしていなかったことが原因」とされます。これだと、カメラを使う人に問題があるわけです。

しかし、カメラ内のパーツが動くことで振動が発生し、それが手ブレとなる場合もあります。

・ミラー式カメラとミラーレスカメラ
「ミラーレス」と「ミラー式」は対になる存在です。ただ、ミラーレスはよく聞く言葉であるのに対し、ミラー式はピンとこない人もいるかもしれません。

「デジタル一眼レフ」は、自動的にミラー式のことです。Nikonでいえば、D5・D6・D850・D7500のように、名前の冒頭に「D」がつくものがミラー式です。Canonならば、EOS 5D Mark IV・EOS 90D、あるいはEOS Kiss X10のように、名前に「D」か「X」が入っています。また、SONYやFUJIFILMは現行商品ではミラー式の機種はありません。

「ミラー式」の場合、レンズから入った光は最初に、イメージセンサーの前で上方斜め45度に向けられたミラー(鏡)で反射します。光は、ボディー中央上部にある、鏡を組み合せた部分を通り、ファインダーから出てきます。つまり、ミラー式のファインダーで見ている像は、合わせ鏡の類をいくつか使って送られてきたものです。

・ミラーショックとは
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これらの仕組みは、あくまでファインダーのためにあります。実際に写真を撮るには、ミラーを跳ね上げてからシャッターを開け、レンズからの光を直接イメージセンサーに当てなければいけません。そのミラーが跳ね上がることで起きる振動がミラーショックです。

ミラーショックの大きさは、機種によって様々です。イメージセンサーが大きいとミラーも大きくなるので、全体的な傾向としてはAPS-C機よりはフルサイズ機の方が大きくなります。また、高級機ではショックが抑えられていることが大半です。

ただ、ミラーショックが手ぶれにどれだけ影響するかは、機種や撮り方次第です。とりあえずいえることは……

(1)思い当たる原因は全部チェックした。それでも手ぶれがなくならないならば、ミラーショックを疑ってみる。

(2)カメラの正しい持ち方・構え方をすると、手の中でミラーショックを受け止めることにもつながる。つまりは、手ぶれの原因をひとつ減らせる。

……です。

・シャッターショックも多少はある
シャッターが動くことでの振動もあり、「シャッターショック」といいます。

一般的なカメラには、「フォーカルプレーンシャッター」が採用されています。メインのパーツは2枚の幕で、片方にフィルムやイメージセンサーの前を開いていく役割り、もう1枚が閉じていく役割りがあります。

この2枚の幕が、縦に動くもの(縦走り)と横に動くもの(横走り)の2種類があり、今のデジタルカメラでは縦走りが主流です。微妙にカメラを振動させるだけではなく、それもフィルムやイメージセンサーに光を当てている最中なので、ブレを発生させます。

ただし、シャッターショックによる振動は、ミラーショックよる振動ほど大きくはありません。また、シャッターショックだけの対策もなかなか取りようがありません。「シャッターを切ったとき、カメラボディーのなかでは、あれこれパーツが動いて、それが振動を与える。手ぶれにつながる可能性がある」ぐらいに覚えておけばいいでしょう。

望遠レンズほど手ぶれが起きやすいわけ

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よく、「手ぶれを防ぐには、広角は1/60秒以上のシャッタースピードで撮ればいい。標準以上は『レンズの長さ分の1以上』」といいます。

たとえば、24ミリ相当の単焦点レンズか、ズームレンズで24ミリ相当で使っているのならば、1/60秒以上かそれ以上に速いシャッタースピードで撮ればいいということです。200ミリ相当の望遠ならば、1/200秒・1/250秒か、それ以上の速さでOKということになります。

ただ、これはあくまでめどです。雑にカメラを構えると、これらを満たしていても、手ぶれします。また、カメラの持ち方・構え方を訓練して、体調にも問題がなければ、200ミリ相当を1/60秒で使ってもぶらさないぐらいのことはできるでしょう。

望遠レンズになるほど速いシャッタースピードが必要なのは、とらえる画角が狭いために、手元のほんの少しのぶれが大きく反映するためです。たとえば、標準レンズ(50ミリ相当)の画角は47度程度ですが、200ミリ相当ならば13度程度です。レンズの方向を同じだけずらしまったとして、画面の中でのずれは200ミリ相当のほうが4倍近くも大きくなります。

手ぶれ補正機能は、このずれた分をイメージセンサーやレンズ内のパーツを反対側に動かすことで相殺し、その効果は、「○段分」と表現されます。

「段」で表現されるのは、カメラにエレクトロニクスがほとんど使われていなかったころの名残です。そのころはシャッタースピードは倍刻みでした。1/30・1/60・1/125・1/250といった具合です。「1/60」の次が「1/125」となっていますが、これも実際は倍の違いとみなしてください。

この倍刻み1個分が「段」です。ですから、たとえば「4段分」の手ぶれ補正効果があると、200ミリ相当の望遠レンズは1/30で撮ってもぶれないということになります。ただ、これもあくまでめどです。

手ぶれ補正を頼りにすると、カメラボディー・レンズの選択肢が狭まる

手ブレ補正を採用することでのデメリットは次のようなものでしょう。

(1)機能をボディーに入れる場合とレンズに入れる場合があり、同じメーカーの製品でも混在している。ボディー・レンズの組み合わせ次第では、手ブレ補正がないこともありえる。

(2)どちらに組み入れても、その分コスト高になり、小売価格も高くなる。

(3)特にレンズに組み入れた場合、サイズが大きくなるのが問題になる。

(4)レンズに組み入れた場合に、わずかとはいえ画質が落ちる可能性がある。

これらを全部ひっくるめていうと、「『手ブレ補正がないと写真を撮る自信がない』ようでは、カメラボディー・レンズの選択肢が狭くなる」といったところでしょう。初心者のうちは大丈夫でも、いろいろな機材を使いたくなった場合に制約になりそうです。

「手ブレ補正がないと……」を自動車の世界にたとえれば、「持っている免許がオートマ限定」みたいなものかしれません。

また、NikonやFUJIFILMの場合、広角・標準・中望遠の単焦点レンズでは採用していないものの、同じ焦点距離を含む標準ズームレンズでは採用しています。単焦点を好むのは主に上級者です。一方、標準ズームは初めてデジイチを買うような人向けの製品です。うがち過ぎかもしれませんが、「メーカー側も『望遠レンズでもないかぎり、上級者には手ぶれ補正は不要』と判断しているのかもしれません。

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