ミックス③ 「バランス」における2つの視点

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音声・音楽
レコ―ディングエンジニアのStudio UDです。
前回で歌のテイク選びやピッチ補正も完了して全トラックの準備ができました。
いよいよミックスに入ります。
ミックスとは、複数に分かれたトラックの音を混ぜてステレオ2ミックス(他にもあります)にする作業ですが、実際には単純に音量を決めるだけではなくEQやコンプ、リバーブ等、様々な処理を加えていきます。
その判断基準となるのは「バランス」です。
「バランス」については、大きく分類すると2つの視点から判断して行きます。

①音楽的バランス

それぞれのトラックが曲の中で担っている役割を、音楽的な視点から判断して行きます。しっかり音量を出すべきか微かに聞こえるべきなのか、楽器ごとにバランスを決めていきます。
これはオーケストラの指揮者が行っていることに通じるかも知れません。
音楽の三要素と言われる「リズム、メロディー、ハーモニー」のバランスを取る作業と言えます。

楽器やアレンジによって理想のバランスは様々ですが、例えばポップスの多くは、
・ドラム(特にキックとスネア)
・ベース
・ボーカル
これらは音楽的バランスの面で重要な(存在感のあるべき)トップ3に入るのではないでしょうか。(実際センターに定位させることが多いはずです)

「リズム、メロディー、ハーモニー」の中で「ハーモニー」が入っていないと思われるかも知れませんが、ベースとボーカルもハーモニーの一部を担当しています。
さらにギターやピアノ、シンセ等のハーモニー(とリズム)を強化するトラックが加わってきます。音数の多いアレンジであっても、上記トップ3以外のトラックが増えていくことがほとんどです。

したがって、まずはドラム、ベース、ボーカルの3つのバランスを作っていきます。

その次に、ピアノやギター等のコード楽器、それ以外の上モノのバランスを決めていきますが、混ぜていく過程で上記の重要なトラックをマスキングしないように慎重に決めていきます。ここではパン(定位)が重要な役割を果たします。
アレンジやサウンドの特徴を決定づけるのはむしろこれら上モノであることも多いので、どうバランスを取っていくのかが腕の見せ所であり、ミックスの個性が出てくる部分だと思います。
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今回ミックスした曲は、ドラム、ベース、歪み系エレキギター2本、ピアノ、琴、ストリングスという楽器編成でした。
キックとスネア、ベースの音作りと音量が決まったら、ボーカルを出してみて全体のバランスをイメージします。
次にギターとピアノ、琴、ストリングスの順で決めていきました。
各トラックの役割分担がとても整理されたアレンジです。
コード感を支えるピアノ、ロック感を担うギター、曲の世界を表現する琴、歌に絡むもうひとつのメロディを奏でるストリングス、どれも重要です。
単に音量だけではなく、EQやコンプ、リバーブ等を駆使して、基本の3パートの存在感がありつつ他のパートもしっかり聞こえるというバランスを目指していきます。(この辺りの詳細はまた別の機会に…)

②周波数(帯域)的なバランス

こうして音楽的に理想的なバランスができたミックスですが、もうひとつ別の視点から見てみることも必要です。

音楽ではなくオーディオ的な視点から見ると、
・超低音域~低音域はしっかり出ているか、あるいは出過ぎていないか
・中音域が混雑していないか
・高音域はしっかり出ているか、あるいは出過ぎていないか
・特定の帯域に音が集中して、耳に痛い部分やこもって聞こえる部分がないか

実際にはもっと細かく帯域を分けますが、こういった確認をしてみると音楽的なバランス取りでは気付かなかった問題点があると思います。
問題の原因となっているトラックを調整してそれまでのバランスもキープしながらも解決していきます。

これらはマスタリングの領域でもありますが、ミックス段階でこれに気付きトラックの調整で解決できるとさらにクオリティが上がると思います。

例えば今回のミックスでは、音楽的バランスを取った結果、高域(ドラムのハット、シンバル等)に少しだけ耳に痛い部分があったので、ディエッサーを使用して6~8kHzあたりのピークを抑えました。
また、コード楽器が集まった結果、中音域に少々音が集まり過ぎたので、トータルEQ(ミックス全体にかける)では特定の周波数を1dbくらいカットしました。

これでオーディオ的に見てもクオリティの高い調整ができました。

次回はミックスご紹介の最終回として、ボーカル処理の仕上げとマスタリングをご紹介したいと思います。
なかなか文章ではうまく説明できないこともありますので、質問等ありましたらお気軽にメッセージください。
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