「補語」の概念の拡張・変換について

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 元々、「自動詞」と「他動詞」の区別から始まり、動作対象たる「目的語」を必要とする「他動詞」とそれ自体で動作が完結する「自動詞」が分けられましたが、いわゆる第2文型のように自動詞だけでは文の意味が成立しないものが存在するので、第1文型を形成する動詞を「完全自動詞」、第2文型を形成する動詞を「不完全自動詞」とし、不完全自動詞を補う語として「補語」の概念が導入されました。この「補語」になり得る品詞としては「名詞」「代名詞」「形容詞」とされます。
 ところが、She acted strangely.やMother is out.のような文を見ると、actは自動詞であるものの、やはり「どのようにふるまったのか」といった語が必要であると思われ、あるいはoutは副詞であるから補語ではないと見なされるものの、「Mother=outの状態にある」と考えられるので、「主格補語」と同じに見ることができてしまうのです。そこでbe動詞と結合した場合は「形容詞」とも見られるという解釈や、「副詞」を新たな要素として取り込み、文型を拡大するという展開も成り立ちますが、むしろ、「補語」の概念を拡大した方が説明しやすいと思われます。
 すなわち、動詞にはまず意味的に「状態動詞」と「動作動詞」があり、「状態動詞」は必ず「状態を表わす語」「状態の内容を示す語」を必要とするので、これを「状態語」(Condition)と名付ける方が実態に沿うと思われます(「補語」だと仕方なく補う語であって、必然的に要請される感じが薄いと言えます)。そして、「動作動詞」には動作がそれ自体で完結する「自動詞」と動作対象を必要とする「他動詞」があり、「他動詞」には「目的語」を1つ必要とするもの、「目的語」を2つ(直接・間接)必要とするもの、「目的語」及び目的語をめぐる状況を示す「状況語」(Condition)の2つ(「目的語」と「状況語」はSV関係にある)を必要とするものの3つがあると見るべきでしょう。つまり、「状態動詞」が要請するものが「状態語」であり、「動作動詞」のうち「他動詞」が要請するものが「目的語」であるというわけです。そして、「状態」を表わすものが「状態語」であると定義すれば、名詞、代名詞、副詞のいずれであってもよいことになり、これによって「主格補語」は「主格状態語」、「目的格補語」は「目的格状況語」として捉えられます(「補語」を名詞・代名詞・形容詞として位置付けると、第5文型が「目的語」+不定詞・分詞という形を取る時、「目的語」に続いてこれを規定する語句を「補語」と見ることができなくなってしまいます)。通常、第5文型を形成する代表的動詞として、「使役動詞」と「知覚動詞」が挙げられますが、この場合の「知覚動詞」は「状態動詞」ではなく、「動作動詞」たる「状況認識動詞」として捉え、「目的語」+「目的格状況語」という「SV目的語」を要請すると考えた方がいいでしょう(呼称に問題があるとされる「使役動詞」も、「状況創造動詞」と見ればいいかもしれません)。
 したがって、She acted strangely.やMother is out.などの文章も、「5文型理論」で第1文型と見るのではなく(これは意味的に無理があります)、「7文型理論」で言うSVAとして見るのでもなく(そもそも「付加語」と「補語」は多分に重なります)、第2文型SVCとして見るべきとなります。liveなども「どういう状態で生きているか、住んでいるか」という「副詞(句)」を伴うのが普通なので、これを「状態語」と見て、第2文型SVCと捉える方が分かりやすいですね。「修飾語」と「状態語」の違いは、無くても文意上支障が無いのが「修飾語」(より詳しい説明をする)で、無いと文意上完結しないのが「状態語」(そもそも「状態動詞」は「状態」を表わす語を必要とします)と見ることができます。こうすると、She put the book on the desk.はSVOAではなく、SVOCとなります(「the book=on the desk」、あるいは「the book is on the desk.」の状態にputしたと見ることができます)。
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