ハラスメントアンケートをしない方がよい会社

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法律・税務・士業全般

アンケートは行うべきなのか

ハラスメント防止措置は中小企業者でも実施が義務となっており、社内アンケートのそれら防止措置のなかでも有用な措置の一つです。
ハラスメント対策として社内アンケートを行っている会社は、中小企業ではまだまだ少ないようです。

「相談窓口があるし、ウチは小規模だから何が起こっているかは簡単にわかるんだよ。」

という経営者さんが多いのですが、そもそも中小企業では社内相談窓口の運用がとても難しく、まともに運用されている会社はごくわずかです。
中小企業だからこそ、相談窓口よりもアンケートを活用する必要性が高いのです。
では仮に、ハラスメント発生状況についてアンケートを行ったとしましょう。

アンケートの結果が予想外に悪いことに驚いて、<なかったこと>にしてしまうという会社もありますが、愚かすぎてもはや問題になりません。
悪い結果を得るためのアンケートなのに、良い結果を期待してアンケートを行行うのは本末転倒です。

アンケート後に会社がなにもしない理由

では、アンケート結果を会社として前向きに生かすとすれば、まず

①アンケート結果を整理して分析します。

②次に、分析の結果として得られた実情(問題点)を明らかにします。

③その実情に応じて、会社として何をするかを考えます。

中小企業では、この「会社として何をするか」の段階にまでたどり着けない場合があります。
なぜたどり着けないか。担当者が多忙だからという言い訳はよく聞きますが、経営者がハラスメント対策に関心を持っていれば、担当者はいかに多忙であろうとも優先的にその仕事を進めるはずです。

つまりは経営者のやる気が薄いから、アンケート後に何もしなくなります。
もしやる気があったら、アンケート結果を分析した後、「やるべきこと」が定まり、それに対して社員に説明をし、協力を求めることになります。

ここまでに時間をかけすぎてしまうと、せっかくのアンケートも無駄になってしまうばかりか、会社に対する信頼を失うことにもなりえます。なぜか。

社員の気持ち

そもそも、その企業で最初に行われたハラスメントアンケートに対する社員の期待度は、

うちの会社のアンケートなんてカタチばかり意味がないよ。

このアンケートに答えたら自分の意見が生かされるかも。

どちらの思いが強いかは会社によっていろいろです。

いずれにしても、社員はアンケートに答えるときにいろいろなリスクを考えます。

本当のことを書いて、もし誰かにバレたら面倒なことになるのではないか。
だったら無難なことだけ書いて終わらせよう。

会社に対する信用が薄い会社では、こんな心理状況の社員が多いのです。
そして、実際のアンケート結果がずさんに扱われていたり、アンケートが原因となって社員が面倒なトラブルに巻き込まれたりしたら、「アンケートにはもう二度と本音を書かない」という気持ちになり、アンケートの意味がなくなってしまいます。

そういった複雑な思いを乗り越えて社員はアンケートに答えます。
そのあと、アンケート結果に対して会社がなんの反応も示さなかったら、社員はどう思うでしょうか。

あのあと会社はどんなふうに処理しているのだろう。
これからどんな変化が生まれるのだろう。
やっぱりアンケートなんて無駄なのかな。

など、いろいろなことを考えます。そして、ほったらかしの時間が長ければ長いほど、良くない方の意味で「やっぱり・・・」と思います。

こうして「どうせウチの会社はなにもやらない。経営者はハラスメント対策なんてどうでもいいと思っている。バカらしい。」といった感想を持ちます。

こうなると、相談窓口も信用されないし、トラブルが発生しても会社に頼ろうとも思わないし、誰かの人間関係がギクシャクしても自分には関係がないと思うし、会社に明るい未来を感じにくくなります。

こんな結果になるのなら、アンケートをしない方がまだマシです。

信頼関係はコミュニケーションの相互作用で築かれる
こういった有害なアンケートにしないためには、アンケートに対してなるべく早めに会社として反応を示すべきです。
信頼関係は相互作用で築かれるものです。メッセージに対してリズミカルに反応しないと、無視されたという印象を相手に持たれてしまい、信頼の相互作用が期待できないのです。
忙しいのなら、小まめに少しずつ情報を出してもよいです。会社が前向きに取り組んでいることを印象付けるためです。
アンケート結果は、誰かどんなことを答えたかがわからないように工夫しなければなりませんから、細かい内容でなくてよく、<こんな回答が多かった><こういう状況がうかがえる>といった程度で充分です。
分析結果としては、<こういった結果の背景にはこんな問題点が推察できる><このような傾向がうかがわれる>といった表現でもよいです。
それらをふまえて、会社としてこのようなことをしてゆきたい、社員に対してこのようなことに注意してほしい、これこれの協力をお願いしたい、といったことを伝えます。
こういった判断や反応がリズミカルに行われているかどうかで、その会社組織がうまく機能しているかどうかが見えてきます。
「忙しいから」と言い訳をしだしたら危険のサインです。
アンケートを実施するならそれなりの覚悟が必要です。覚悟がないならやらない方がまだましです。
もちろん、ハラスメント防止措置はすべての事業者の義務であることは言うまでもありません。












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