こんにちは。
今回は換気システムについての記事です。
換気について甘く考えていないですか?
換気をしないことで健康被害や住宅の劣化に繋がる恐れがあります。
第一種なのか第三種なのか、賛否両論ありますが、一歩踏み込んで理想の換気システムについて考察しました。
1 換気をしないことによる被害
まずは換気をしないことによって発生する被害を紹介します。
1.1健康被害
換気は室内の空気に含まれる水蒸気の量を下げてくれる除湿効果があります。
その換気を行わないということは、結露を発生させる要因になります。
結露といえば、冬場の窓につく水滴を想像される方が多いかもしれませんが、それだけではありません。
「内部結露」が発生します。
室内の空気に含まれた水蒸気は壁の隙間を通過し、壁内に移動します。
そこで空気が冷やされ結露を起こします。
壁内で結露を起こすとカビが発生します。
カビが発生するとダニが繁殖します。
ダニが発生するとシックハウス症候群を引き起こします。
また、ダニの死骸や糞も喘息や気管支炎の原因になります。
子供や高齢者がより症状を起こしやすいです。
1.2耐久性の劣化
換気をしないことにより発生する内部結露は木材の腐朽をもたらします。
木材の腐朽は建物の耐久性の劣化を起こします。
鉄骨造の場合でも構造体以外は木材を沢山使っています。
また、壁内だけでなく、床下も結露する恐れがあります。
床下は構造体等もむき出しになっており、木造の場合は床下の環境は特に大事です。
鉄骨造の場合は、夏場は鉄骨自体が熱くなっており、温度差による結露をより発生させやすくなります。
断熱材はグラスウール等の繊維材の場合、水に弱く、結露により濡れている時間が長いと性能自体落としてしまいます。
2 三種類の換気方法
換気をしないことによる被害を知ったところで、基礎知識になる換気システムについて知っておきましょう。
換気は大きく3つに分類されます。
第一種換気システム、第二種換気システム、第三種換気システムです。
それぞれの特徴は以下の通りです。
2.1 第一種換気システム(機械給気、機械排気)
〈メリット〉
〇計画通りの換気量が確保できる。
〇高性能フィルターを通すことによって綺麗な空気を供給することができる
〇熱交換器と組み合わせることで室内の温度を給気する外気に与え、空調効率がUPする
〈デメリット〉
〇金額が高い
〇ダクトの清掃が容易にできない
2.2 第二種換気システム(機械給気、自然排気)
第二種換気システムは手術室等に使われるシステムの為、一般住宅で採用されることはほとんどありません。
以前のパナソニックホームズが第二種を採用していましたが、現在は第一種になっています。
2.3第三種換気システム(自然給気、機械排気)
キッチン、浴室、トイレ等の換気扇から機械排気し、排気した分を各居室に設けられた自然給気ガラリから外気を流入させる方法です。
〈メリット〉
〇初期費用が低コスト
〇ランニングコストも安い
⇒第一種+熱交換器の電気代が1000~2000円/月に対し、第三種の場合は200~600円/円程度になります。
〇第一種換気システムより固定資産税も安い
〇メンテナンスがしやすい
〈デメリット〉
〇計画的な換気量が確保しにくい
〇居室の数だけ給気ガラリが壁に取りつく
〇熱交換器を使用しない為、空調効率が良くない
〇高性能フィルター等を設置しない為、室内の空気環境は外の環境に左右される
3 大手ハウスメーカーの第一種換気システム比較
第一種換気システムを採用している大手ハウスメーカーはほとんどダクト方式の換気システムです。
2つのメーカーを例に挙げてダクト方式を分析します。
3.1 P Homes
特徴は
〇基礎から空気を取り入れている
給気口が基礎につきます。低い位置から給気する為、給気口付近は砂利、できれば犬走を施工しておいた方が良さそうです。
〇床下に流入した空気はダクトに引っ張られ、HEPAフィルターで粒径0.3μm※1 の微小粒子を99.97%カットし、室内へ供給される
〇熱交換器を使用しない(3階建て商品のみオプションで選択が可能)
熱交換器を使用しない理由は、地熱を利用している為。
夏涼しく、冬暖かいという地熱の自然エネルギーを活用した基礎内の環境をつくっている為、熱交換器を使用しなくても適度な温度が確保できるようになっています。熱交換器を使用しない分、電気代を安く抑えることができます。この方式で省エネ大賞2021を受賞しています!
個人的な懸念としては、
〇地中からの湿気は防湿シートにより防ぎますが、夏場に給気口から高温多湿の外気を基礎へ流入させてしまうことが結露の原因にならないか。基礎内は地熱効果で比較的涼しくなっている為、可能性としては考えられます。結露が乾かない状態が続くとカビや雑菌の繁殖に繋がる恐れがあります。
〇冬場の給気口付近の温度はすぐには温まらないのではないか。
階段直下の基礎に給気口をもってくると冷気の影響が少なくすみ、良さそうです(下図参照)
〇給気口が低い位置の為、冠水する可能性がある地域に建築の場合は、水が入ってきてしまう可能性が考えられます。
基本はGL(建物を建てる基準高さ)を高く設定するといった対応かと思いますが、万が一水が入ってしまった時のことや積雪に対する対策まで抑えておきたいですね。
3.2 S Heim
こちらのメーカーもダクト方式第一種換気システムを主に採用しています。
鉄骨造は床下を利用し、木造は小屋裏を利用しています。
鉄骨造の特徴は
〇外壁から外の空気を吸い込み、外壁から排気
〇3層のフィルターを通して室内と基礎内に給気(HEPAフィルターに加え、排気ガス等をカットするNO2フィルターが入ります)
〇熱交換器の併用
〇居室の床に付くグリルから給気
〇床下も換気の対象となっている
こちらの懸念としては、2階や3階に立ち上がるダクトが2,3階床下と壁に隠ぺいされる為、取替工事は容易ではありません。
ダクト内結露を発生させるとカビ臭くなることが懸念されます。
ダクト内結露を発生させにくくする為に“換気を止めない”ということがポイントになります。
また、1階の床には基礎に吹き出した綺麗な空気が直接上がってくる換気グリルがついており、基礎内を居室同様の扱いとしています。
上棟前に雨が降った場合はしっかりと乾かしてから棟上げ工事をしないと床下がカビ臭くなる原因になりそうです。
基礎断熱は上棟前に施工すると思いますので、基礎断熱の下に雨が入り込むと除去に手間がかかると思います。最後のクリーニングでもしっかり基礎内を綺麗して頂けるのか確認したいですね。
4 ダクトレス第一種換気システム
例に挙げた2社のダクト方式と異なり、第一種換気システムでダクトレス方式というものがあります。
各居室に換気システムが付きます。
最大のメリットは名前の通り、“ダクトがないこと”
つまり、メンテナンス性で優位です。
デメリットとしては
〇ショートサーキットを起こしやすい
⇒1つの機械で70秒ごとに給気と排気が入れ替わる為、機械近くの空気のみが入れ替わりやすく家中心部の空気が入れ替わりにくいです。また、空気の出入りが入れ替わるので排気する際にフィルターに付着したものが、70秒後には切り替わって室内に戻されます。
断面図
〇排気が居室からされる
⇒本来換気は居室に綺麗な空気を供給し、非居室(第一種ダクト式であれば玄関等、第三種であればトイレ・浴室等)で行いたいですが、室内で汚染した空気が居室を通って排気されていきます。
この辺りが改善されてくるとかなりいいシステムになると思います。
5 おすすめは?
金銭面、メンテナンス性を考慮すると第三種換気システムが優位です。
しかし、在宅勤務も普及する現代では、家にいる時間がより長くなっている方が多いと思います。
人生の大半を家の空気を吸って過ごすことを考えると、やはり空気の綺麗さや計画的な換気による結露防止は健康面から考えても魅力的です。
健康をお金で買えるのであれば、そこにはお金はかけるべきでしょう。
私がおすすめするのはダクト方式第一種換気システムをメンテナンスしやすい配管経路で計画することです。
ポイントは
〇ダクト経路は極力短く、曲がりは少なく
〇縦配管はなるべく1つにまとめる(縦配管を万が一交換する際にダメージが少ない)
〇横引き配管は床下や小屋裏を利用する(ダクトの交換がしやすい)
先ほど紹介した2社のダクト経路のいいとこ取りというイメージですね。個人的には基礎内環境が悪いと住宅の劣化の原因になる為、基礎内も換気範囲に入れた方がいいと思っています。
ダクトのメンテナンスはダクト清掃業者に頼むという手もありますが、相場は5~20万のようです。
恐らく第一種換気のダクトとなると、配管長さもありますので余計見積もりが高くなると思います。
メンテナンスさえしやすいようにしておけば、交換の方が安くつくか同等かもしれません。
ダクト自体の部材費はそんなに高くありませんし、接続も難しくありません。
どちらかというと配管を交換する為に壁や天井を開口し、内装を補修する金額が高くなります。
また、延べ面積の大きい住宅を建てられる場合は、換気計算上、機械が1台では足りない可能性があります。
基礎内も換気計算に含めると延べ面積(各階床面積の合計)130㎡以上は2台になってくる可能性がでてきます。(非居室は計算に含めない為、プランによります)
その場合、換気システムを基礎内に1台、小屋裏に1台と分けることができれば、縦配管が不要になる為、理想ですね。
6 まとめ
換気は結露とも大きな関わりがあり、住宅の劣化にも関わりますし、毎日吸う空気の綺麗さは健康にも関与します。換気がとても大事なことはお分かり頂けたと思います。
私のおすすめは空気の清浄度や換気効率、快適さにメリットがあるダクト式第一種換気システムで長期的なメンテナンスに配慮したダクト経路を計画するのが望ましいとしました。
そもそも第一種換気システムを採用できない会社も中にはありますので、第一種換気システムを必須とされる方は事前に採用できる会社を調べて建築会社を絞りましょう。