【住宅の地盤改良、建築会社任せで大丈夫?】地盤改良の基礎知識とHM設計士の体験談

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こんにちは。
今回のテーマは「地盤改良」です。
建築会社の担当者に全てお任せで本当に大丈夫でしょうか?
地盤改良の考え方について学びましょう。

この記事を読むとわかること
・地盤改良の基礎知識が身に付く
・地盤改良の要否の簡単な判断ができるようになる
・地盤調査報告書の結果を見て気を付けるべきポイントが分かるようになる


1地盤改良工事決定の流れ

(契約前)
概算で地盤改良費が見積もられています。

(契約後)
①地盤調査を行う
②地盤調査結果をもとに地盤改良の要否を決定する
③地盤改良が必要な場合、営業担当が何社かに見積り依頼をかける
④営業担当や設計担当が地盤改良会社と地盤改良工法を決定する

地盤改良会社の中でも金額差はかなりあり、工法も異なります。

杭長の決め方については建築会社側がルールを設けている場合が多く、地盤改良会社はそのルールに則って見積もりを作成します。

予想以上に地盤調査の結果が悪く、契約時の予算をオーバーする場合、1番安い見積もりの会社が勝手に建築会社側で選ばれていることがあります。

施主に工法を選んで頂いても大抵の方が判断できない為、施主に選択権を与えないケースがほとんどです。

2地盤改良工事の概要

2.1表層改良

表層改良.png

建物の基礎の下を1m程度、全体的に締め固める工法です。

セメント系固化剤を混ぜて強固な地盤をつくります。

それほど地盤が弱くなく、圧密沈下防止が必要な際に採用されます。

しかし、基礎をつくる部分を全体的に掘削するため、残土処分費用が他の改良方法に比べ大きくなります。

結果的に総額が高くなることから採用率は低いです。

2.2柱状改良

柱状改良.png

基礎の下に柱を施工します。土との摩擦抵抗で建物を支えます。

一般的にはソイルコラム工法が多いです。

セメントと土を混ぜ合わせながら柱を地中でつくっていく工法です。

ソイルコラム柱の中に鋼管の杭を入れ込み、より耐久性を向上させる工法もあります。

また、環境パイル工法といって木の柱を打ち込む工法もあります。

柱状改良工事はあまり深くまでの施工ができません。(およそ8m程度が最長です)

あまりに深い層まで地耐力が不十分であったり、液状化の危険度が高い層が深くにある場合を除けば、一般的には柱状改良の採用率が高いです。

2.3鋼管杭

鋼管食い.png

柱状改良の長さでは不足する場合は、鋼管杭工法になります。

費用は柱状改良より高くなります。

また、地耐力のみならず液状化の危険度も地盤改良の設計に関与します。

建築会社の基準にもよりますが、1番安全な考え方としては、液状化の恐れがある層より下まで杭を打ちます。液状化を起こすとその地盤の地耐力はないものとみなされますので、万が一そうなった時に建物が傾かない可能性が高いのは液状化層の下まで杭を施工しておくことになります。

3地盤改良に関する保証

地盤改良を建築会社に選んでもらっている以上、安心だと思ってはいけません。

通常地盤保証を受ける際の手続きは施主ではなく建築会社が地盤改良会社に対して行うことが多いです。

“地盤改良会社としての保証”は、液状化により建物が傾いた際は基本的には保証対象外となります。

※最近では液状化保証がセットになっているプランもあるようですので、加入しているのか建築会社に確認しておく必要があります。

多くの会社が液状化に対して保証対象外となるにも関わらず、
建築会社側は確実な工法で見積りを出している会社を退いて、
1番安い見積りの地盤改良会社を勝手に選んでいる場合があります。

悪い言い方をすれば、地耐力のみ見て杭の計画をしておけば、液状化で建物が沈んでも責任がないわけです。

地盤改良会社側も仕事を取るために、液状化を考慮しない計画で見積りを出してくる会社も見受けられます。

しっかり出している会社が仕事がなかなか取れず悩んでいる状況です。

液状化や地盤沈下は地震によって発生するケースが多いです。

その為家の傾きの補償を受けるには、火災保険だけでは効かなくて、
ご自身で地震保険も加入する必要があります。

地震保険の保険金額設定は火災保険でかけた保険金の30~50%、
つまり3000万円の火災保険金額の設定の場合、900万~1500万円程度の設定金額となります。

実際に建物が傾いてしまった際の保険金額は、建物の傾きの程度に応じて変わります。

まずは、建築会社の保証内容を液状化も含め確認すること。

そして建築会社の保証内容や実際の地耐力報告書の情報をもとに地震保険の加入をご検討ください。

4地耐力と液状化の簡単なデータの見方

地盤調査が完了すると「地盤調査報告書」があがってきます。

それをもとに結果の説明が建築会社側からあります。

初めて見る方でも判断できる簡単な見方をご紹介します。

見るべきポイントは2つ。「N値」と「液状化資料」です。

4.1N値

N値とは土の締まり具合や地耐力の強度を示す指標です。

超簡単な見方は

<砂質土の場合>
N値が5以下⇒弱い

<粘性土の場合>
N値が3以下⇒弱い

です。(住宅レベルの基準です。)

この数値を基準として見ればとりあえずOKです。

次の資料の場合、ちらほら弱い層が見受けられますが、深さ4.25mの”N値2”より下の層は強固な地盤と考えられます。5m程度の杭を打っておけば地耐力上は安全とみなすことができます。
SS-2.png


4.2液状化資料

液状化の結果はこのようなフォーマットが使用されます。
液状化.png


左側が液状化マップで調べることができる予測情報です。

右側が実際のデータで、右上に液状化の程度が記載されます。

見ておきたいのはその間にあるデータです。

このデータでは液状化の可能性がある層を

〇⇒液状化の可能性があるものの、その程度が小さいとされる層

●⇒液状化の可能性がある層

で示しています。

●がある層の下まで杭を施工するというのが1番安全な考え方です。

しかし、●の層が10mほど深くにある場合等は、それ以上の杭となると、杭長が長すぎて金額が跳ね上がります。

建築会社によって●の下まで打つのか、ある程度の深さにあるものは無視して良いのか分かれているのは建物の荷重やバランスにも関係があるからです。

しかし、社内ルール上「●の下まで施工」となっていても、あまりに施工費が高い場合、営業担当が設計に相談し、最終判断は担当設計者になります。

●のある層の下に達しない杭長を提案された際は、その根拠まで聞き、安心して住めるようしっかり把握しておきましょう。

5HM設計士の経験談 ー異なる地盤調査結果ー

以前、驚いた出来事がありました。

ある分譲地で、地盤調査を入れたところ、地耐力は申し分なく強い結果でしたが、

3.25mの深さに水位があり、液状化の可能性がある層が4.25m~7.5mまでまでありました。

この結果をもとに見積もりをとったところ11mの鋼管杭の施工が必要で総額190万円程度です。

しかし、その分譲地内で地盤改良不要の結果が出ている区画がいくつかあると噂を耳にした営業担当が、他の会社で地盤調査をもう1度依頼しました。

そしたらなんと、同じ敷地にも関わらず地盤改良不要の結果に!

そのデータを私に送付し

営業担当「地盤改良無しでいいよね?」

私「良い訳ないでしょう!!」

データを詳しく見たところ

A社⇒8mまで調査し3.25mの位置に水位発見

B社⇒3.7mまで調査し水位確認できず

何故このような違いが生じたのか?

まず、戸建住宅の地盤調査で主に使用されるスウェーデン式サウンディング試験はスクリュー(ドリルのようなもの)を先端に取り付けたロッド(鉄の棒)におもりを載せ、荷重による貫入と回転させながら貫入することで、地盤の硬軟や締まり具合または土層の構成を調べます。
image-20-1024x713.png


硬い層にあたり、それ以上進まなくなったところまでが試験範囲になります。

B社の場合、3.7mで止まってしまいその下は問題ない地盤と判断。

A社は機械の差か、ポイントが違うせいか、8mまで調査をすることができ、3.25mの深さに水位を発見。

水位は調査日付近の天候にも多少左右される為、B社が調査したときにはA社が調査した日より水位が低かったことが予想されます。

A社が水位を発見して液状化の危険度が高い層●がある結果となった以上、私としては見逃すわけにはいきません。

このようなことを経て怖いなと思ったのは、同じ敷地で違う結果が出てしまったということ。

通常、同じ敷地で地盤調査は1度しか行いません。(解体がある場合は解体後再調査のこともあります)

今回の結果が初めから地盤改良不要の結果になっていたら私もそれを信じて地盤改良不要で進めていたでしょう。

大切なことは近隣の情報を知っておくことです。

新しい敷地の場合、建築会社側に調べさせても良いでしょうし(地盤改良業者に依頼して近隣データを教えてもらう流れになります)、もともと近所付き合いがある敷地でしたら、比較的新しい家が地盤改良をどの程度の杭長で施工したか聞いてみても良いです。

それらの近隣データと自宅があまりに一致しないときは再地盤調査をしてください。(通常再地盤調査の費用は約5万円程度です。)

再地盤調査の際は、他の業者で入れてもらうと良いです。

また、より正確な地盤結果が知りたい場合はボーリング試験(標準貫入試験)を行うことができます。

費用はスウェーデン式サウンディング試験より高くなりますが、よりしっかりした数値が出ます。

6建物が傾いてしまった際の対応方法

地盤改良の選定の基礎知識がついたところで、万が一建物が傾いてしまった時の対応方法を紹介します。

基本的にはジャッキアップとなります。

ジャッキアップにも

建物と基礎を切り離してジャッキアップする方法

基礎の下からジャッキアップする方法

があります。

併せて地盤改良を行う場合もあります。

7まとめ

地盤改良について、大多数の方が建築会社を信用して任せていらっしゃいます。

安全を最優先し、間違いない改良工法を選択する建築会社の担当もいれば、金額しか見ず決めてしまう担当もいることも事実です。

また、「同じ敷地でも地盤調査結果が異なった」という私の経験から、
「地盤改良工事不要だった!ラッキー!」
と思うのはまだ早いです。

しっかり近隣データも見て、建築会社としっかり話したうえで初めて安心してください。

土地から探される方は、液状化の可能性が高かったり、地耐力が極端に弱い土地を買わないということも検討してください。安い土地を買っても後から地盤改良費300万円!?というケースも見たことがあります。

長く住む家になりますので、いくらいい家を建てても地盤から沈んでしまっては台無しです。

地盤に関しても慎重に考えるようにしてください!
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