格好いいセリフ

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「敵は本能寺にあり」
「サイは投げられた」
「諸君、4000年の歴史が見守っている」
など歴史上の名言は数々ありますが、私・黒武者が「格好いいな」と感じたセリフはこれです。
「ありがとう、戦友。だが、それには及ばない。私は8年前にフランス軍の元帥になった」

これだけでわかる人は少ないと思いますので、解説を。



1812年のあるフランス軍によるロシア戦役での曹長の証言がもとになっています。

曹長が、劣勢のフランス軍の一隊を率いて進軍中、一定の間隔で大砲の音が響てくるのを聞きます。その音の方向に向かうと、一人の男が寒さの中で、13人が分担して行う砲撃作業を黙々とこなしていました。

男は手桶の中を開けると、照準レバーを操作して方角を決めました。
砲尾に回って穴をふさぎ、砲口に戻って弾を装填。砲撃を黙々と続けていました。
無駄のない男の動きに、曹長たちは驚き、呆気にとられます。
「やつは凄い」

死んだ砲兵が亡霊となって戦い続けているかのように見えたほどでした。
曹長が感嘆の言葉をかけると、「これは私の義務だ。歩き回っているうちに、この砲を見つけた。周囲はコサック兵に囲まれている。こいつを食らわせてやろう」
誰もが生き延びるだけで精いっぱいの状況で、男は一晩中、砲撃を続けていたのです。
男は、淡々と話します。顔は血まみれでした。
「負傷しているのか」
曹長の問いに、男は
「大丈夫だ。ナイフがなかったので、馬の肝臓を食いちぎっただけだ」

曹長が、所属連隊を尋ねると、男は「所属はない」
それだけでなく「砲兵でもない」と答えます。

話しながらも砲撃の手を緩めない男に曹長は
「君のような有能な兵士は昇進しなくてはならない。戦いが終わったら君を軍の偉い人たちに紹介したい」

砲撃の音が、こだまします。

男はしかし、砲音に劣らぬ凄みのある声で曹長に応えました。
「ありがとう、戦友。だが、それには及ばない。これ以上昇進する必要はない。私は、8年前にフランスの元帥になった」

男はシャツの袖で顔をぬぐいます。月の光に照らされた輝く髪と火を放つ眼。
そこには、ミシェル・ネイが立っていました。



ナポレオンをして「勇者の中の勇者」と言わしめた側近の逸話です。

ネイは、ナポレオンに生涯忠実に仕え、ナポレオンの復権を期したワーテルローの戦いでも前衛として奮戦。
敗戦後、亡命の勧めを拒否して捕縛されました。

この逸話からもわかるように下士官や将校、兵士たちからも敬愛される人物でしたが、裁判は同僚将校たちが行う軍法会議ではなく、王党派が占める議会で審議され、フランスへの反逆罪を宣告され、銃殺刑が言い渡されました。

ルイ18世による報復の色が濃い判決でした。



銃殺の前に目隠しを薦められると
「君は私が20年以上、銃弾を直視してきたことを知らないのか」と言って、拒否。

最期の言葉は
「兵士諸君、これは私の最期の命令だ。私が号令を発したらまっすぐ心臓を狙って撃て。私はこの不当な判決に抗議する。私はフランスのために百度戦ったが、一度として祖国を裏切ったことはない」でした。









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