【怪談】第一夜 道連れにする幼女

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このお話は今から30年以上前のお話しになります。
当時伯母は旦那の実家に暮らし、旦那は単身赴任で働いていたので義母と娘二人の四人で暮らしていました。
伯母は昔から霊感が強く、その当時は家が新築であったにもかかわらず霊現象を何度か体験していたと言います。
もちろんそれは子供達にも遺伝していて、特に長女はその傾向が強かったようです。

長女が5歳くらいの時に「家の中に知らない女の子がいる」と言い始めた時期がありました。
実は伯母も何度か目撃していて、娘は同じ物が見えているとわかったんです。
それは長女と同じ5歳くらいの女の子で、家の廊下を歩いていたり一階の部屋でよく見かけるけれど、何を言ってくるわけでもなくたまに現れる様子を伯母はよく目撃していました。
その頃は次女はまだ小さかったので手がかかっている時期で、伯母もこの時は長女の面倒をよく見てあげれなかったようで、ワンオペで子供達の面倒を見るのが大変な時期でした。
同居の義母は自分の部屋である仏間にこもっていて、育児や家事に全く手を貸してくれないと嘆いていた時期でもあります。
義母だから口出しできないのではなく、実は義母は昔から宗教にはまっている事もあり、面倒ごとに巻き込まれる事を避けるために伯母は距離を取りながら同居している状態でした。
出かけるといえば宗教の集会、家に帰れば部屋にこもり何か念仏のような物を唱えたり何かを拝んでいる様子があり、ご飯も殆ど一緒に食べず部屋で食べるといった様子。
とても同居しているとは思えないほど義母の生活は独特な物があり、頼れる存在どころか不気味な存在でもありました。

同居の義母があてにならない、かといって一人では育児に限界があるので、伯母は休みの度に娘二人を連れて実家へ帰っていたようです。
実家は家から車で20分くらいの距離にあり、港町のため海が近く当時の祖父は自分の船を持って漁業をしている時期でした。
冬のある日、実家に帰った伯母が次女の面倒を見ていて、少し目を離した隙に長女の姿が見えない事に気づきました。
「母さん、●●は?」
「今まで庭で犬と遊んでたけど・・・いないんか?」
庭には犬が小屋でぽつんと座っていて、長女の姿は見当たりません。
胸騒ぎがして庭の外へ出ると、近所の漁師仲間のおじいさんがずぶ濡れになった長女を連れて帰ってきたんです。
「いま浜に降りたら●●ちゃん海に落ちててな、じいさんの船のロープにしがみついてるの見つけて慌てて助けてきたんだ」
その日は2月で極寒の海。
5歳の長女は一歩間違えれば凍え死んでしまうような危機的状況で、たまたま船の様子を見に来たおじいさんのおかげで命拾いしました。
「なんで一人で海に行ったの!なんで落ちたの!?」
伯母が長女に話しかけると、長女は震えながら
「女の子に足を引っ張られたの・・・」
そういって口を紡いでしまいました。
女の子と聞いて、伯母は嫌な予感がして長女に更に尋ねます。
「女の子って・・・いつも見てる子?」
「うん、家にいる子」
明らかに家で見た女の子は長女につきまとっている。
恐らく長女は庭で遊んでいる時に女の子に誘われ海へ行ったのだと推測した伯母は、急に怖くなりました。
自分が見た様子では実家についてきている姿は無かったが、長女が独りになった隙を見て現れる。
これでは自分がまた目を離した隙に長女の命を奪われかねない・・・そう思った伯母は、初めてお払いをする決心がつきました。

後日、地元では有名な神社の神主さんを家に招き、今起きていることや現状を伯母が伝えました。
神主さんは家を見渡し、何かを察したように一言
「この女の子は身内です・・・心当たりはありませんか?」
この時、伯母には心当たりが全くありませんでした。
流産をした経験がありますが、それは男の子で、その時にちゃんと供養もしていたので自分の子ではないはず。
自分の身内にも5歳くらいの女の子に心当たりはなく、残すは旦那の実家になります。
伯母はふと、義母が何か知っている気がして神主さんを連れて義母の部屋である仏間を尋ねました。
「お義母さん・・・聞きたい事があります、よろしいですか」
伯母が尋ねると義母は神主さんを見て怪訝そうな顔をしましたが、ゆっくり頷いて伯母の言葉を聞いていました。
「5歳くらいの女の子に心当たりはありませんか?」
そう尋ねると、義母はゆっくり目の前の仏壇に置いてある義父の位牌を持って避けました。
するとそこには、見た事がない古い位牌がもう一つ現れたんです。
「●●(伯母の旦那)が生まれるずっと前に病気で亡くなったわしの娘・・・5歳で亡くなった」
それを聞いて全ての理由がわかり、伯母も神主さんも唖然としました。
義母は宗教の関係なのかはわかりませんが、自分の病死した子供の存在を下の子供達にひた隠しにしていたようです。
写真は一枚も無く、遺影もなかったので、旦那の兄弟すら自分達の亡くなった姉の存在を知らずに生きてきたようでした。
神主さんはこの事実を知り、義母が宗教を信仰している事を考慮して優しく告げました。
「お子さんの霊がお孫さん達を羨ましがっていて、悪戯をしています。せめてその子の存在だけでも認めてあげてください。そうしないとお孫さんの命が危うくなります」
それを聞いた義母はそっと義父の位牌と娘の位牌を並べて置いてくれました。
義母の了承を経てお払いもそのまま行われ、それ以降は女の子の霊は現れなくなったといいます。

神主さんの話では、その女の子は亡くなった後に自分の存在をなかったことにされていて凄く悲しかったようです。
たまたま嫁いできた伯母が見える体質で、その娘も見える体質を持っていたこと、そして自分と同じくらいの年齢になってきて余計に生きている事への羨ましさがあって同じの思いをさせようとしていたこと。
全てが自分の存在と悲しさを気づいてもらう為の行いだったと説明してくれました。
幸い伯母の一族に強い守りをしてくれる人がいて、そのおかげで海に落ちた時に近所のおじいさんが直ぐに見つけてくれる幸運に恵まれていたようです。
後から聞けば、近所のおじいさんもその日はたまたま自分の船の様子が気になって浜に降りただけで、本来は浜に用事は無かったと言っていました。
今でも長女はその当時の事をハッキリ覚えてるといいます。
やはり足を引っ張られた感覚は今でも鮮明に覚えているようです。
この家族はその後も様々な霊体験を経験しているので、また別のお話をお伝えしたいと思います。

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