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カイゼン活動相談役の「もりふじ だいすけ」です。
私は大手企業で現場作業をしながら第一線でカイゼン活動を率先垂範で10年間取り組んでおり、社内では功績が認められ、所長表彰を受けた実績があります。
カイゼン活動に関する知識と経験からあなたに分かりやすく説明しますので、最後までお読みいただければ幸いです。
トヨタ式が考えるムダはいくつもあるが、その中で最も警戒すべきムダは、「作り過ぎのムダ」です。
世の中には「機会損失」を恐れる人がいます。
せっかく売れるのに、生産が間に合わず「儲け損なった」という理由です。
しかし、実は「儲け損なう」は実害にはなりません。
企業にとって本当に怖いのは「作り過ぎ(過剰在庫の保有)」であり、作り過ぎをいかに防ぐかこそがトヨタ式カイゼンでは最も大切なポイントの一つとなっています。
ただし、実際に取り組もうとすると、ことはそう簡単ではありません。
今回はトヨタ流 在庫管理のポイントを解説していきます。
作り過ぎは会社を潰す
トヨタ式の基本は「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」にあります。
つまり、ものをつくるための部品や部材に関しても余分な在庫を持たず、製品に関しても需要に合わせてものをつくり、余分な製品在庫を抱えないということだが、トヨタがなぜこれほどに「つくり過ぎ」を恐れるかというと、やはり1950年の経験が大きかったからです。
この年、トヨタは倒産の危機に瀕して、銀行からの融資を受ける条件として創業者である豊田喜一郎氏の社長退陣と2000名近い社員の解雇という辛い決断を行っています。
なぜ、それほどに追い込まれたのでしょうか。
理由は景気の悪化もありましたが、一番の理由は、「需要を無視して売れると思っい続けていた『見込み生産』」にありました。
当時の辛さを、トヨタ生産方式の基礎を築いた大野耐一氏はこう話しています。
「いくら数百万円の車を作ったとしても、モノが売れない限りお金は入ってきません。
工場は在庫で、会社は金がないという最悪の事態でした。
工場で売れない在庫の山に囲まれて、その時、私がつくづく痛感したのは
『ともかく、作り過ぎは会社を潰すことになる。作り過ぎは罪悪だ』と
いうことでした。
売れないものをいくら作っても在庫の山を作るだけで、最終的には売れ残ってスクラップにすることになり、余分にムダな費用がかかります。
それよりも『売れるものを、売れる時に、売れるだけ作る』ことがいかに大切かを本当に身にしみて感じました」
このときの「在庫の山を抱えて困り果てた」散々な体験が当時のトヨタマンにはあります。
在庫の山を生む原因は、市場でいくら売れるかという「必要数」を無視した「見込み生産」にあります。
景気が良ければ次々とものを作って倉庫に保管しておいたとしても、いずれは売れることになりますが、少しでも景気が悪くなったり、あるいはお客さまのニーズが変化すると、せっかく作った製品在庫は決して売れることのない「罪庫の山」になってしまいます。
だからこそ、もの作りは絶えず必要数を意識しながら、「売れるものだけを作る」というのがトヨタ式生産の考え方です。
とはいえ、「売れるものだけ」をつくり、在庫は極力持たないようにすることの大切さは理解したとしても、それでも大量の在庫を抱えたがる企業がいることは事実です。
在庫がないと注文に対してすぐに応えることができず、「売り損ない」になると恐れるからです。
ですが、機会損失を防ぐには、多すぎる在庫は必要ありません。
トヨタ式改善を進めることで、たとえば注文を受けて何時間かでものを作り、すぐに納品できる体制を構築すればいいだけのことです。
つまり、大量の在庫はムダを生むばかりか、「作る力」の欠如という問題の放置にもなります。
また、物を保管するだけの生産を生まないムダなスペースも必要となり、生産スペースを圧迫するか、ムダに外部倉庫を借りて費用を払い続けることになってしまいます。
トヨタでは、過剰在庫を持たないために「JIT(ジャスト・イン・タイム)」の活動もカイゼンの中で行っています。
待ち時間短縮のための7つのポイント
在庫を最小限にするためには何が必要かというと、待ち時間短縮が不可欠になります。
待ち時間短縮には大きく分けると以下の3種類があります。
(1)生産待ち時間短縮:生産着工から完成まで
(2)商品待ち時間短縮:受注から納品まで
(3)開発待ち時間短縮:開発から納品まで
こうした待ち時間の短縮は、競争力のアップと多品種化への対応を実現することになります。
各企業が3つの待ち時間の短縮に取り組んでいる昨今、短納期は時に品質やコスト以上の競争力となります。
通常1週間かかるところを2日とか3日で納品できれば、多少割高でも発注する企業は少なくありません。
それに加えて待ち時間が短ければ、ムダな在庫を抱える必要がなくなり、コスト競争力も強化されます。
少品種大量生産であれば、在庫を抱えていても、いずれ売れるため待ち時間の長短はさほど問題になりませんが、商品寿命が短くなり、設計や仕様が次々と変わる多品種小量生産の時代には、在庫は可能な限り減らし、売れ行きに合わせて柔軟に短期間でものを作る力が不可欠となります。
待ち時間短縮のためには、次のような改善が重要になります。
①生産ラインを見直し、細くて速い流れをつくる
余分な運搬や取り置き、段取り替えをしなくてもよい生産ライン構成にする。
②生産ロットの縮小化
理想は「一個流し」ですが、そうでない場合も可能な限り最小のロットにして、一個あたりの待ち時間を短くする。
③生産順序の平準化
ジャスト・イン・タイムの前提として生産するものの種類と量を平均化します。
④段取り替え時間の短縮
一本のラインで複数の品種を生産する場合、できるだけ短い段取り替えにする工夫が必要です。
⑤工程内のムダの削減
生産ラインの改善を行い、ムダを徹底的に排除する。
⑥不良品を作らない
不良品を作ってしまえば作り直し等のムダが発生します。
良品100%を目指して改善することが重要です。
⑦目で見る管理の実践
現在の生産量が計画に対して工程が「正常」か「異常」かが一目で分かる仕組みを構築する。
こうした改善を積み重ねることによって初めて在庫をほとんど持たずに「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」⇒「JIT(ジャスト・イン・タイム)」での生産が可能になります。
遅いのはダメだが、早いのはもっとダメ
「待ち時間の短縮を」というと、とにかく「早さ」だけを求めて納期が来ていないものまで早く作ろうとする企業さんがいますが、これは大きな間違いです。
トヨタ式生産方式で大切なのは「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」を作る「ジャスト・イン・タイム」ことであり、納期より早く作ることは、たくさんのムダを発生させてしまいます。
もちろん納期に遅れるのはダメですが、早過ぎることもムダにつながります。
待ち時間の改善にあたってはこの点もしっかりと念頭に入れておくことが重要になります。
このように「納期」を改善するためには3つのことをしっかり理解し、管理していくことが重要になります。
①「在庫は罪庫」と心得よ
在庫を持つことは安心につながりますが、在庫を持ち過ぎることは、作り過ぎのムダを生み、生産能力の低下とムダに保管コスト増を招くことになります。
「在庫」は資産ではなく『罪庫』です。
②「必要数」を厳格に
売れると思ってまとめて作るほど愚かなことはありません。
まとめて生産すると、あたかも安く作ったように錯覚しますが、売れなければ何の意味もありません。
むしろ、過剰在庫を保管する場所・費用や処分する費用がムダにかかることになります。
もの作りは市場で売れる数、つまり「必要数」をいかに安く作るかを考えるべきです。
③「早すぎるのはダメ」を忘れずに
先ほども書いたように遅れるのはダメだが、「早過ぎる」を許すと作り過ぎのムダにつながりやすい。
上記内容を念頭に置き、待ち時間の短縮に取り組み改善していくことが、在庫を持たないもの作りを可能にし、他社との競争力を高めることが出来る企業体質につながります。
(*^-^*)
〔参考文献〕
『「トヨタ式」大全』(若松義人著、PHP文庫)