一度目の休職⑧

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人に期待することを諦める時

“うつ”に入った状態は自覚していた。
心と身体がリンクしていないような感覚。
一部の感情の配線が繋がっていないような、そんな違和感をはっきりと自覚していた。

きっと、本当の自分は解っていたのだ。
ネガティブな情報を認めてしまえば、これ以上、仕事が続けられる状態では無い事を。
だから、仕事を続ける為に、そういった事を感じることができないように、仕事を続けるべきだと思っている自分が、その配線を外したのだと思う。

追い詰められてる状況に対して、何もしなかった訳ではなかった。
上司Aには相談していた。
その結果、「その日にやる仕事が、その日の朝に変わると作業者の負担が増すから止めてほしい。予定を変更するなら、せめて翌日にできないか?」と言ってくれたらしい。
しかし、突然の予定変更は無くならなかった。
聞く耳を持たなかったのか…はたまた、それをできるだけの能力が無かったのか…真相は解らない。

問題の解決を望んで行動をする時、行動することで、問題が少しでも好転することを望むのが人の常ではなかろうか?
その問題が深刻であればあるほど、より強く、良い未来を望む。
しかし、行動したにもかかわらず、何も得るものが無かったら、期待した分だけ傷つき、もう傷つきたくないと思った分だけ距離を置く。
傷ついても得られる物が無いのだと悟った時、人は諦める。
私は上司Bに期待することをやめた。

その日もまた新人がやるはずだった仕事が私の予定に組み込まれていた。
何度も伝えていたのに、その日の作業が変更されていたのだ。
内から湧き上がる感情を制御することができなかった。
怒りの感情と悲しみの感情にまかせて、力の限り予定表をぶん殴った。
拳からは出血していた。

近くにいた上司Bは、その音を聞きつけ、私に話かけた。
「…どうした?」
「こんな予定… うつが出てるで… もう、無理だし…」
「うん…」
どんなに鈍感で無能でも、ここまで言えば配慮してもらえるだろう。
その時は、確かにそう思った。

翌日、出勤して予定を確認すると予定はそのままだった。
「うつが出ている」と言ったのに、予定はそのままだった。
「無理だ」と言ったのに、予定はそのままだったのだ。

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