一度目の休職③

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職場で突然倒れる

グッスリ眠れる薬を手に入れた私は、“現実”から“眠りの国”に逃避できるパスポートを手に入れたような気持ちになり、毎日服用していた。

その日は朝から快晴だった。
空調の無い職場の気温はグングン上がる。
そんな暑さが原因なのか、はたまた起きてはいても薬が抜け切れていないのか、朝から足元がおぼつかない。
「なんだか体にうまく力が入らないな…」
そんな事を思った次の瞬間、突然、膝から下の力が抜けて、その場にヘタりこむ。

パニックに陥る。
呼吸が荒くなり、胸が苦しい。
顔がしびれて、身体の自由がきかない。
となりで働く同僚が上司を呼びに行く。
駆け付けた上司Aは熱中症を疑い、涼しい場所まで私を移動させる。
数分後、上司Bがやってきて、苦しんでいる私を一目見て上司Cを呼びに行く。
上司Cは私を見て「ダメだなこりゃ」と言って、ようやく救急車が呼ばれることになる。
それと同時に自宅にも連絡が入り、妻が次男と一緒に駆け付ける。
妻が私の手をにぎって「大丈夫だよ」と声をかける。
その時に前日に目にしたテレビ番組の内容が頭をよぎった。
その番組は脳卒中で突然人が亡くなるという内容だった。
「死ぬかもしれん…」
その言葉を口にした瞬間、目から涙が溢れ出た。

“無念”
その時の気持ちを表すとしたら、これほど適切な単語は他にないだろう。
死ぬことが悲しかったのではない。
生きてるうちに成し遂げたい事が達成できなかった事に対する悲しさだったのだ。

すでに倒れてから一時間ほどが経過していただろうか。
ようやく救急車が到着する。
救急隊員は私からのヒアリングで過呼吸だと診断する。
命に関わる病気ではないと思うが、念の為、病院で診てもらった方がよいのでは?という救急隊員さんの助言もあり病院で診察を受けた。

ベットに横になりながら、看護師さんが、私が職場で苦しんでいる話を聞いてくれた。
本来、一番聞いてほしかった人達には“私の問題”として突き放された話だ。
その話を、今日初めて会う看護師さんが親身に聞いて下さった。
私の心は看護師さんに対する感謝の気持ちでいっぱいになったが、それと同時に上司に対する不信感の気持ちも膨らんでいった。

看護師さんとのやりとりは
“自分がおかしいのではないか?”
“自分の力が足りないのではないか?”
そんな風にしか考えられなくなっていた私に
“もしかしたら職場がおかしいのではないか?”
と思わせるキッカケをくれた。

落ち着きを取り戻し、妻とともに自宅は帰る。
帰りの道中で妻と話す。
「とにかく、教育係を外れんことには…」
「そうだね」
翌日、通っている心療内科で診断書をもらい、それを提出すれば教育係を外してくれるだろうということで話がまとまった。

“もしかしたら職場がおかしいのではないか?”
おかしいと思う職場に、一般的な常識ある対応を期待する。
当時は、この矛盾に気が付くことができなかった。
おかしい職場は、おかしい対応をするのだ。
その事に気が付くのに、私はここから4年の歳月を要することになる。
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