中小企業経営のための情報発信ブログ249:捨てるべき固定観念

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
コロナ以前から働き方改革が叫ばれ、コロナ禍でそれが加速しました。しかし、働き方改革を推し進めるのは難しいものです。働き方改革は手段であって目的ではありません。どのような目的で働き方改革を実施するのかが明確でないのに、世間が「働き方改革!働き方改革!」と言うので追随しているだけでは意味がありません。社員の早期離職防止や生産性の向上、業績低迷の打破やイノベーションの創出を目指して、働き方改革を実施し、風通しのよい・働きがいのある職場を作ることは大切です。これまで推進されてきた働き方改革は、単に働きやすさばかりを重視しているように見えますが、働きがいの向上や風通しの良い職場を作ってこそ本当の働き方改革に繋がるように思います。
1「社員の働きがい」を重視し始めた企業
 日本は、世界的に見ても働く人の仕事満足度が低いと言われています。長時間労働や転勤・異動などを伴う働き方が原因であるとみられ、コロナ前から働き方改革が推進され、法規制もなされました。その結果、長時間労働の是正・休暇取得の促進などが行なわれ、コロナ禍でリモートワーク、副業など柔軟な働き方も広がってきました。
 少子高齢化が進む中、育児や介護・病気治療と仕事の両立ができるようにする必要も高まってきています。ライフワークバランスという言葉も一般化し、国を挙げて「働きやすさ改革」に取り組んできたと言えます。
 しかし、働く人たちにとって、「働きやすい環境」はあくまでも衛生要因であり、労働に「動機付け」をするためには「働きがい」を高める取組みが必要となります。先日書いた「内発的な動機付け」がなければ、働く人はやる気にならないのです。働く人の仕事満足度が低いのは、働きやすさが不足していることよりも、働きがいを感じられないからです。
 働きがいのある会社は働きやすい会社ではありません。働きがいのある会社は社員を大切にする会社です。社員を大切にするということは、社員を短絡的な資源としてではなく、長期的な経営資源と考えて教育し活動の機会を提供することです。
 社員を大切にする会社は、働きがいのある会社になりますが、必ずしも働きやすいとは限りません。社員を大切にする会社は、人材の育成に力を入れ学び直しの機会を増やしています。成長意欲がなくのんびりと過ごしたい人にとっては窮屈な職場で、働きやすいとは言えません。
 以前にも書きましたが、企業が持続的成長を進めるためには「人事制度から働き方・組織文化まで一体となった変革を推進し、『人材で勝つ』企業を目指す」べきなのです。
 具体的な取組みとしては
Ⅰ:多様な個の意欲・思いに真摯に向き合う
Ⅱ:個々のキャリア開発・評価・育成に労力を惜しまない
Ⅲ:組織運営や働き方の無理、無駄をなくし、従来以上に人材マネジメントに時間を充てる
などが挙げられます。
 コロナ禍で在宅勤務・リモートワークが一般化し、個人が自らの意思で働き方を選択できるようになると、会社側もその存在意義を明確にし、求心力を高めていく必要に迫られます。その中で重要なのは人材であり、さまざまな取組みを通じて「人材で勝つ企業」を作り上げなければなりません。そして、「人材で勝つ企業」は「働きやすい会社」ではなく「働きがいのある会社」なのです。
 このところ、働きやすさよりも働きがいが重要であると気づき始めた企業が増えてきています。従業員のエンゲージメントサーベイを定期的に実施し、上司と部下との1on1ミーティングをとり入れ、キャリア支援策を充実させ、社員の働きがい向上を求め、賞与に反映させる企業まで出ています。
 今後、こうした企業が増えていくことが期待されます。
2.部下と上司が一緒に高められる組織へ
 「働きがい」は「働いた甲斐があった」という意味で、覚悟を決めて行動した後に覚える感情です。「甲斐」というのは「その行為に値するだけのしるし。また、それだけの値打ちや効果」(大辞林)です。勇気を持って努力して覚悟を持って覚える感情、つまり、やりきった後に覚える感情なのです。「働き」というのは、人偏に動くと書きます。人のために動くことです。従って、「働きがい」というのは、人のために覚悟を持って一生懸命努力してやりきったときの喜びのことです。
 企業全体の働きがいは、顧客や市場、社会のために働く喜びであり、経営理念に通ずるものです。働きがいのある企業ほど、経営層から現場社員に至るまで、ほぼ全員は組織の外にある顧客や社会に意識が向いています。
 上司と部下が、ともに組織の外を向き、お客様のために何をなすべきかを話し合い、一緒に行動できる企業こそが本当に働きがいのある企業・組織です。
 しかし、一方で、働きがいというのは、一人ひとりの心の内側から沸き起こる気持ちであり、外から高めることは容易ではありません。つい、部下に何を働きかけるかを考えがちですが、まずは自分に向き合うことです。自分の働きがいを高めることです。よかれと思って部下に働きかけたことが、部下の働きがいを削いでしまうというケースもあります。部下の働きがいを高めるというよりも、部下の働きがいを削がないことに意識を向けるべきです。まずは覚悟を持って一生懸命自分の働きがいを高める努力をすれば、部下はそれを見て自分で働きがいを高めてくれます。
3.上司が捨てるべき5つの固定観念
 人間誰しも、自分の中に、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)や固定観念を持っています。こうした偏見や固定観念を捨て去ることです。
Ⅰ:「上司と部下は上下関係」という固定観念・・・上司と部下というのは役職の違いであって人間的には対等、上下関係はありません。「上司は上、部下は下」「部下は上司の命令や指示に従うもの」と考え、権力を振りかざす上司は多いのです。上司と部下というのは単に勤務年数や経験によって与えられた役職の差でしかありません。どちらが偉い、どちらが偉くないということではないのです。役割の違いであって対等だと考えなければなりません。対等な関係において部下を動かすのは「命令」ではなく、「この人と一緒に仕事がしたい」という自発的な動機です。上司の真摯に仕事に向かう姿勢が部下の共感や感動を呼び、部下の心を動かすのです。
Ⅱ:「『肩書き』が動機付けのカギ」という固定観念・・・上下関係とともに「肩書き」も大きな力を持っています。部下が上司に従順に振る舞うのは、上司個人の力や人徳ではなく、会社から与えられたポジションの力です。従来型の組織では、がむしゃらに働いてきた人ほど、部長や課長などの肩書きに固執する傾向が強いと言えます。しかし、ライフワークバランスを重視する人や再雇用された人などは昇進・昇格に興味がありません。こうした人たちをいかに動機づけるかということも重要な課題です。部下が上司に任された仕事によって、自分の持ち味を活かし、才能を開花させて働きがいを感じられるかということが大切になります。ここでも昇進・昇格といった外発的動機付けではなく内発的な動機付けが重要です。
Ⅲ:「部下は監視すべき対象」という固定観念・・・管理職は部下を監視するのが仕事ではありません。部下のマネジメントは監視することではなく「認めて、任せる」ことです。監視を強化しようとすれば、人はやる気を失って受動的になる、あるいは監視への反発から余計に悪い方向に向かう、批判を恐れてネガティブな結果を隠そうとするなど、良いことはありません。上司が部下を監視しようとするのは、部下への不信感があるからかも知れません。しかし、何度も言うように、ビジネスは人と人との関係、よりよい人間関係・信頼関係で成り立ちます。不信感を抱く前に信頼関係の構築に取り組まなければなりません。
Ⅳ:「上司もプレイヤー業務を担うべき」という固定観念・・・管理職の多くはプレイヤーでもあります。プレーヤーとして実績を上げてきた人ほど、いつまでも第一線で活躍できると思い込んでいます。それも固定観念です。プレイヤー業務に固執しすぎていると、いずれ自分の仕事がなくなります。上司の本分は、自分が率先して仕事をするのではなく、部下を動かして組織としての仕事をさせることです。上司の中には仕事ができる部下に嫉妬して仕事を取り上げようとする人もいます。部下を動かし組織として仕事をするためには、むしろ仕事ができる部下は歓迎すべき存在です。確かに日本の企業ではマネジャーでありながらプレーヤーを兼務している人は多いですが、プレーヤー業務を全部捨てることは難しくても、7割ぐらいは部下に任せるのがいいのです。それによって部下も成長の機会を得ることができます。
Ⅴ:「組織のリーダーは男性が担うべき」という固定観念・・・「リーダーは男性であるべき」「女性に管理職は向かない」といった固定観念は捨てるべきです。数日前の報道で、日本はジェンダー平等は146カ国中116位とありました。多様性が叫ばれる中、大幅に遅れています。今は男性も育児や介護を担う時代です。男性中心の社会は時代遅れです。上司の役割は部下を動かすことです。上司が常に現場に張り付いて仕事をする必要はありません。部下の心を動かす共感力については固定観念にとらわれたミドル男性よりも女性の方が向いているかも知れません。男性だから女性だからといった固定観念は捨て去り、適材適所に優秀な人材を男女関係なく配置することです。
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