中小企業経営のための情報発信ブログ130:地頭力

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今日は、「地頭力(じあたまりょく)」について書きます。
地頭力という言葉を最近よく聞くようになりましたが、自分の頭で情報を処理し、問題を解決する力のことです。
「地頭力」(じあたまりょく)ブームを巻き起こしたのがベストセラーとなった細谷功著「地頭力を鍛える」(東洋経済新潮社)で、「日本全国に電柱は何本あるか?」といった例題に始まり「フェルミ推定」のプロセスを紹介しつつ、「好奇心」「論理的思考力」「直感力」と言った地頭力のベースとそれらの上に重なる仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの構成要素とその鍛え方が解説されています。考える力を身につけたい人には知的トレーニングにもってこいの本です。 
1.地頭力とは
 地頭力というのは、簡単に言えば、自分の頭で情報を処理し、問題を解決する力のことです。 
 インターネットの進歩により、多くの情報がネットに氾濫し、検索すればどのような情報にも接することができます。専門家と素人とで情報量という点では大差がなくなってきています。膨大な情報量そのものを「コピペ」するという姿勢は人間の考える能力を退化させいずれは思考停止にしてしまいます。AIと人間との違いは考える力にあるはずです。特にAIでは代替できない本当の意味での創造的な「考える力」です。 
 細谷氏によれば、地頭力はシンプルに表現すると「結論から」「全体から」「単純に」考える3つの思考力になります。つまり、「結論から考える」仮設思考力、「全体から考える」フレームワーク思考力、「単純に考える」抽象化思考力の3つです。これらの思考法については過去にも紹介していますので参考にしてください。 
 この3つのベースになるのが、「論理思考力」と経験と訓練で鍛えられる「直感力」で、更にそのベースには知的好奇心があります。 
 この3つの思考力は訓練によって鍛えることができ、その鍛え方が紹介されているのが、本書です。 
2.フェルミ推定 
 地頭力を鍛えるための強力なツールとなるのが「フェルミ推定」です。 
 「フェルミ推定」というのは、正確に把握することが難しい数値を、論理的に概算するもので、「原子力の父」として知られるノーベル物理学者エリンコ・フェルミの名前に由来します。 
 「日本全国に自販機は何台あるか」「世界中で1日に食べられるピザは何枚あるか」といった把握することが困難な膨大な数量について、何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法をフェルミ推定と言います。 
 フェルミ推定のような思考が求められるのは、仕事の「川上」つまり、事業や商品・サービスの概要やコンセプトを考えるような状況で、何らかの意思決定が必要とされる場面です。DXと呼ばれるICT化の進展やVUCAに伴う商品・サービスやビジネスモデルの抜本的勝つ迅速な変化の中で、重要性が高まってきています。先行きが見通せない時代では、完璧主義よりも仮説検証を繰り返す「プロトタイプ型」の仕事のやり方がマッチしている場合が多いのです。 
 フェルミ推定の基本プロセスは、 
アプローチの設定 → モデルの分解 → 計算の実行 → 現実性の検証 
です。このプロセスを駆使する場漫画随所にあり、3つの思考力を鍛える地頭力のトレーニングに適したツールとなるのです。 
 例題を見てみます。 
【例題】日本全国の道路の合計距離は何キロメートルか? 
 この問題を考えるポイントは次の3つです。 
1:すぐに検索に頼るのではなく、知っている知識や情報だけでなんとかする。
 2:正確性よりも「ざっくり全体像を描く」ことを意識する。 
 3:それでも「算出根拠」を明確にする。
この解決の1例は次のようになります。
例題の解決例
 1:日本の総面積を推定し、それを(道路の密度が違う)都会と郊外に分ける(知っていればそのまま使い、知らなければ、東京ー大阪間など知っている距離から日本を長方形で近似することで算出する。更に東京ー大阪間を知らなければ知っている身近な区間の距離や新幹線の速度と時間等から・・・と、とにかく粘ってなんとか算出する) 
 2:単位面積(例えば1平方キロ)当たりの道路の長さを仮定する(例えば郊外は1キロメートル単位、都会は100メートル単位の格子状にする)
 3:上記より実際の数値を算出する。
 このフェルミ推定をする際に、「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」が駆使されるのです。別段正解を出す必要はありません。頭を使って考えるということが重要なのです。
 「オックフォード&ケンブリッジ大学 世界一『考えさせられる』入試問題」(河出出版)という本がありますが、このフェルミ推定で解かなければならないような入試問題が出ています。 
 ①もしこの紙を無限に折りたたむことができたら、何回折れば月に届くでしょうか 
 ②牛一頭には世界中の水の何%が含まれていますか 
 ③世界に砂粒はいくつありますか
知識重視の日本の大学入試とは大違いです。
3.『結論から考える』仮説思考力 
 仮説思考とは、次のような思考パターンです。 
Ⅰ:今ある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し
  Ⅱ:常に最終目的地を強く意識して 
  Ⅲ:情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る。
 フェルミ推定で仮説思考力を鍛えるポイント
Ⅰ:少ない情報からでも仮説を構築する姿勢 
  Ⅱ:前提条件を設定して先に進む力
  Ⅲ:時間を決めてとにかく結論を出す力
4.『全体から考える』フレームワーク思考力
フレーム思考は大きく分けて、「対象とする課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰力」と「捉えた全体像を最適の切口で切断し、断面を更に分解する分解力」で構成されます。分解力は「分類」と「因数分解」に分けられます。 
 フェルミ推定の「アプローチの設定」から「モデル分解」に至るまでのプロセスは、フレームワーク思考そのものです。 ポイントは次の5つです。 
Ⅰ:全体→部分への視点の移動 
 Ⅱ:切断の「切り口」の選択
 Ⅲ:分類(足し算の分類)
 Ⅳ:因数分解(かけ算の分類)
 Ⅴ:ボトルネック思考
5.「単純に考える」抽象化思考力
 抽象化思考力とは、次の3つのステップによる思考です。 
Ⅰ:対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」し 
 Ⅱ:抽象レベルで一般解を導き出し
 Ⅲ:それを再び具体化して個別解を導く
 フェルミ推定を活用して抽象化思考力を鍛えるポイント
Ⅰ:モデル化 
 Ⅱ:枝葉を切り捨て
 Ⅲ:アナロジー(類推:ある事象を類似のものから説明する)
フェルミ推定で最も大切なのは知的好奇心です。問題が生じたときや課題が与えられたときに、知的好奇心を持って目を輝かせるか、嫌々やるか、最初から諦めるか、は地頭力に比例しているように思います。地頭力のベース・根本には知的好奇心が必要不可欠です。
これは、個人だけでなく企業についてもいえることです。何事にも知的好奇心を持って目を輝かせて取り組む先に思いもかけないようなアイデアが生まれイノベーションを起こすことができるのではないかと思います。
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