見た目はおっさん、心は中学2年生 その4

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コラム
ちいこの保健室へようこそ!

学校の保健室の先生を29年間勤めました。


見た目はおっさん、心は中学2年生のⅠ君に
ひどい言葉を投げつけ、過呼吸にしたA先生に
はじめ私は「なんてことするんだ!」
と、怒りの気持ちで、いっぱいでした。

でもⅠ君の
「A先生は、僕のこと
心配しているから怒ったんだと思う」
という言葉を聞いて、考えてしまいました。

今学校では、自分のクラスや、
自分の部活動の生徒のことには
一生懸命対応するけれど、
それ以外の生徒に関しては、
あまり深入りしない、というのが普通です。

だって、自分の担当の範囲内のことで
手一杯なのに、他に首を突っ込んで
めんどくさいことになったらたまらない。
そんな気持ちが、
教員の中には必ずあるのですから。

だから、学年主任といえども
担任以外の生徒のことに、
深くかかわりたくないでしょう。

また、教員をしていると、
苦しいけれど苦手なことに
チャレンジする生徒、
できないことを繰り返し練習して
できるようになる生徒、
人一倍時間をかけて勉強して
成績を上げる生徒をたくさん見ています。
それは本当に、感動するほどです。

「それなのにⅠ君は、
いつも保健室に逃げ込んで
一体何をやってるんだ。
ひとりひとり違うことはわかっている。
でも、少しぐらいがんばらないと
Ⅰ君の将来はどうなってしまうのか…。」
A先生は、そんな気持ちで
いたたまれなくなったのかもしれません。
指導の方法は、間違ったかもしれないけど。

それに、Ⅰ君の状況をよく理解している
私や担任の先生が、
「今はがんばらない時期。
ゆっくり休まなければいけない時期です。」
ということを、他の先生方に
よく説明しておくべきだったな…
とも思います。


Ⅰ君にとっては、
病気で休んでいる最中に、
突然現れた先生に怒鳴られ、
過呼吸になるという
最悪な状況になってしまったわけですが、
そんな中で、Ⅰ君が発した心優しい一言が
私に、あらたな気づきを与えてくれました。

人を攻撃しても何も変わらない。
それより、人を思いやって、
理解しようとすることの方が前進する。

Ⅰ君は、その後も相変わらず
よく保健室に来ましたが、
保健室の隣にできた、適応指導教室で、
少人数でなら勉強に取り組めるように
なっていきました。

見た目おっさんの中学2年生Ⅰ君に、
私は人として大事なことを
教えてもらいました。

おしまい




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