トオル22歳(蟹座O型)の今日の短歌

記事
小説
〜これは、私ではない「誰か」の今日を綴ったストーリー短歌です〜

大学3年生の秋、僕達は出会った
出会いは運命的

僕が気に入って、毎週のように通っていたブックカフェの、いちょう並木が見渡せる窓側の席で、僕らは偶然同じ本の上巻と下巻を読んでいた

上巻を読んでいた僕は、下巻を読んでいる彼女が本の中間を過ぎたあたりのところで、涙ぐんでいるのを見てしまった。

それは、きれいな涙だった・・・

見惚れていた僕に気づいた彼女は、涙を拭いもせず
「たぶんあなたも泣いちゃうと思うよ」と泣き笑いの表情で言った。

僕らはそんな出会いをした。


彼女と付き合って半年が過ぎた7月

それぞれの希望した会社に就職した僕らは、以前のように頻繁に会うことができなくなっていた

LINEの既読がつくのが遅くなったし、既読がついてからの返信もすぐに来なくなった。
それは僕も同じ。
お互いさまだった

こうやって恋は終わっていくものなのだろうか


そんなことを考えていた、静かに雨が降る初夏の夜・・・


彼女が傘もささずに、僕の家の前に立っている
僕には状況がつかめなかった

目の前の彼女は、7月の雨に濡れ少し震えていた
その目には、あのときのようなきれいな涙が光っていた

僕は考える間もなく彼女を抱きしめる
会えなかった時間も、返信の遅いLINEも
そんなことはどうでもいい


大切なのは、「僕は彼女が好きだ」という事実


僕の背中に回された彼女の腕は、震えていたけれど温かかった


そんな僕の今日の短歌

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