うつ病や強迫性障害などのメンタル疾患にかかると、過去の嫌な経験を度々思い出し、ストレスを感じてしまうということがよくあります。
例えば、仕事で上司に嫌なことを言われたとします。家に帰ってきてもその事が頭から離れず、楽しいことをして考えないようにしても、ついつい考えてしまいます。
こいういった状態はマインドワンダリング(mind wandering)と呼ばれ、過去に起こった出来事を思い出し、未来においても同様のことが起きるのではないかと心配してしまいます。
過去に起こったことを思い出すことで、現在でもその事が起こっているような錯覚を脳は感じ、副腎からはストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されるようです。
コルチゾールが過剰になると、脳の神経細胞に悪い影響を与え、うつ病や認知症などの疾患にかかりやすくなると言われています。
考え方をコントロールする方として、闘争するか逃走する(fight or flight responses)という2つの方法があります。
1闘争する
・制圧する
嫌な考え方や感じ方を無理やり押しやり、ないものとする。
・自分自身と議論する
ネガティブな考え方を間違いであると証明しようとする。
・管理する
自分にポシティブな言葉をかけ、感情的に良くなるようにする。
・自分に厳しくなる
自分にとって悪い考え方や感じ方を持つことを自己批判する。
2闘争する
・隠れる、逃げる
自分にとって心地よくない状況をを避ける。
・気を紛らわす
テレビを見たりゲームをしたりして注意をそらす。
・無関心になる
寝たりして、考え方や感じ方に無関心になる。
・薬物やアルコールに頼る。
痛みから逃れるために、薬物やアルコールに頼る。
しかし、嫌な考えを忘れようとして、考えをコントロールしようとしてみても、コントロールできるものではありません。
考え方をコントロールしようとしてもエネルギーを使いますし、長期的に見ても、悪い考えは戻ってきてしまいます。
アクセプタンスアンドコミットメントセラピー(ACT)はこういったコントロールできない考え方を無理にコントロールするのではなく、受け入れて心理的柔軟性を身につけるセラピー療法として、アメリカのネバタ州立大学のスティーブン・C・ヘイズ教授を中心に考えられた心理療法です。
ACTはマインドフルネスと価値に重点を置いています。
ACTを学ぶことで、忘れがたい考えや感じ方に対処でき、自分にとって意味のある、充実した人生を作ることができます。
ACTの6つの原則を簡単に紹介します。
1 脱フュージョン(defusion)
思考は言葉に過ぎないことを理解して、自分にとって思考は重要ではなく、影響を受けないことを理解する。
2 拡張(expansion)
嫌な考え方や感じ方を押しやったり制圧したりするのではなく、心のなかにスペースを作り受け入れる。
3 接続(connection)
過去にいるのではなく、未来を心配するのでもなく、今ここ(right here,
right now)を意識する。
4 観察する自己(the observing self)
自分を客観的に観察することで望まない考え方に対処できます。
5 価値(value)
自分が本当に価値があると思えるものを大切にすることで、充実した価値のある人生を送ることができます。ACTには自己啓発的な側面もあり、充実した人生を送るということにも主眼が置かれています。
6 目標に向かっての行動(committed action)
充実した意味のある人生は自分にとって価値のあるモチベーションによって実行されてのみ達成することができます。
ACTは本を読み始めたばかりなので、自分でもよくわかっていない所も多いのですが、ざっくりと解説してきました。
ACTはマインドフルネスや日本でも馴染みの深い仏教思想をもと開発されてきた心理療法です。
考え方をコントロールするのではなく、受け入れることで心理的柔軟性を身につけることができ、うつ病や強迫性障害、PTSDといった様々なメンタル疾患にも応用されている科学的な心理療法です。
興味がある方は一度本を読んでみてください。
こちらの本がわかりやすく初心者の方にはおすすめです。
幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない: マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門
著者:ラスハリス