「本店所在地」の決め方と注意点【会社のつくり方シリーズ⑥】

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法律・税務・士業全般

(まえがき)会社のつくり方シリーズとは

こちらの記事は、行政書士として主にひとり会社、小規模会社設立のお手伝いを普段から数多くさせていただいている筆者が、
「会社をつくるときに、事業者が最低限知っておきたい基本的な知識を、順番にわかりやすく」
をモットーに解説していくページです。
シリーズ全7回の記事となっており、順番に読み進めることで、会社をつくる際のポイントが分かるようになっています。
どうぞ最後までご覧ください。
※他のシリーズは以下のリンクからご覧いただけます。



こんにちは。板橋のハンコ屋ひとり社長 兼 行政書士 の青木です。
今回は、「本店所在地」について、説明していきます。
人間と同じく、法人にも住まう場所が必要になります。
本章では、会社の本店所在地を何処に定めればよいかについて、その注意点と共に解説をしていきます。
これから会社を設立しようと考えている方は、是非参考にしてみてください。

本店所在地とは

会社を設立する際には、「本店所在地」という、いわゆる会社の住所(本社)を定めて登記しなければなりません。
場所について特に決まりはなく、実際にその場所で仕事をしていなくとも構いません。
具体的に考えられる候補には、以下のような場所があります。
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では次項より、それぞれの注意点などについて、解説をしていきます。

①自宅

何と言っても、最初に思いつくのはこちらでしょう。
こちらしか選択肢がないという方も多くいらっしゃることと思います。
ただし、気を付けなければならない点もあります。
まず、自宅が賃貸アパートや賃貸マンションの場合、賃貸借契約の際に、「法人不可」となっているケースが無いかどうか、確認が必要です。
大家さんや、管理会社に確認をとっておかれるとよいでしょう。
また、賃貸物件の場合、ライフステージの変化に伴い、引っ越しなどの機会も出てくるかと思います。
本店所在地が変わった場合には、変更から2週間以内に変更登記をしなくてはなりません。
合わせて、代表者の住所変更の登記もしなくてはならず、それぞれに登録免許税(手数料)が発生します。
引っ越しが多いようですと、その都度変更登記ということになり、費用もかさみますので、注意が必要です。

②実家

実家住まいの方は、①自宅=②実家となりますので、当説明はあまり参考にはなりませんが、実家が現在の自宅とは別にある方は、実家を本店所在地とすることも可能です。
実際に行き来することが無くても、そこで仕事をしていなくても、登記自体に差し支えはありません。
メリットとしては、前項①で説明をした、引っ越しなどに伴う変更登記のケースが、自宅ほどは多くないという点です。
また、基本的に家賃が掛からないので、費用を抑えることができるという点もあります。
自宅がまだ安定していない方は、安定するまでは実家を本店所在地とするのも一つの手です。
ただし、税務関係書類など、会社の本店所在地宛に送られてくる郵送物もありますので、あまりに遠方ですと、かえって不便になることもあります。

③賃貸事務所・店舗

一番体裁がよいのは、やはり仕事用の事務所や店舗を借りて、そこを本店所在地とする方法です。
しかしこちらも注意点があります。
まず、①でもご説明しましたが、賃貸しようとしている物件が、「法人不可」または「事務所利用不可」となっていないかどうか確認をする必要があります。
物件探しの段階で予め不動産会社に、法人を設立して登記したい旨を伝えたうえで、物件を案内してもらうとよいでしょう。
しかしここで一つの疑問が浮かびます。
「法人をこれから設立するのに、その法人名義で賃貸契約はできるのか?」
答えはノーです。
順番として、賃貸借契約したうえで本店登記というのが一般的ですので、困ってしまします。
いったん個人の名義で借りて、会社設立後に法人名義に変えるのか?
このあたりは不動産会社と事前によく相談をする必要があります。
場合によっては「契約の特約」等でそのあたりをスムーズに進めることも可能な場合があるでしょう。

④レンタル(バーチャル)オフィス

最近かなり増えてきているのが、このレンタルオフィスです。
基本的には、元々ある程度の大きさがある空間を、間仕切りなどで区切り、個別の小さなスペースとして間借りできるような状態に仕上げた場所のことを言います。
バーチャルオフィスとは、その名の通り、物理的空間を借りることなく住所を借りることができるサービスです。
法人登記もできるケースがほとんどです。
メリットは、何と言ってもコスト面です。
毎月大きな賃料を払わなければ借りられないような都心の一等地を、わずかなコストで借りることができます。
本店として登記されれば、ホームページや名刺などに住所の掲載をする際にも、一定の信用を得ることが可能となります。
③で説明をした契約の際の特約なども、こういったスタートアップ向きの施設の場合、柔軟に対応できるケースが多いです。
しかしデメリットとして、レンタルオフィスやバーチャルオフィスはその契約の手軽さから、会社の実態が不明確と思われることもあります。
例えば、銀行口座の開設の際など、信用面がマイナスにはたらくケースもあるようです。

まとめ

ここまで、本店所在地の決め方について、詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
こちらについては、業種によってかなり比重に差が出る項目ですので、一概に解説をするのは難しいのですが、個々のビジネスに合った形を選んでいただければと思います。
いずれにしても、変更に費用が生じるという点は事前によく頭に入れた上で、無駄なコストが生じないようにしたいものです。
以上、法人設立への道しるべとして、是非参考にしていただけたらと思います。
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