「合同会社」のメリット・デメリット【会社のつくり方シリーズ⑤】

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法律・税務・士業全般

(まえがき)会社のつくり方シリーズとは

こちらの記事は、行政書士として主にひとり会社、小規模会社設立のお手伝いを普段から数多くさせていただいている筆者が、
「会社をつくるときに、事業者が最低限知っておきたい基本的な知識を、順番にわかりやすく」
をモットーに解説していくページです。
シリーズ全7回の記事となっており、順番に読み進めることで、会社をつくる際のポイントが分かるようになっています。
どうぞ最後までご覧ください。
※他のシリーズは以下のリンクからご覧いただけます。



こんにちは。板橋のハンコ屋ひとり社長 兼 行政書士 の青木です。
今回は、「合同会社」について、説明していきます。
近年、非常に多く設立がされている組織形態であり、割合としては、新設法人のおよそ4分の1が、この合同会社という実態があります。
これから会社を設立しようと考えている方は、是非参考にしてみてください。

合同会社は「人ありき」

合同会社の一番の特徴は、「所有と経営の一体化」です。
株式会社では、「所有と経営の分離」が特徴でした。
つまり、合同会社では「出資者」=「経営者」が基本となります。
このあたりの考え方については、下記の記事で詳しく解説をしていますので、よろしければ合わせてこちらもご覧ください。

上記で取り上げた例でいうと、「アムロ」自身がガンダムを作って、自分で操縦までするということです。
両方の役目を担いますので、アムロという人の手腕がそのまま法人(ガンダム)のポテンシャルとなります。
つまりは、合同会社は、「人」という経営資源にスポットが当たった法人組織であると言えます。
実は、この組織形態は、現代ビジネスに当てはめやすい側面が多くあります。
例えば、コンサルティングやネット物販など、小資本で個人ビジネスのように始められる多くのプラットフォームが現代では数多く存在します。
フリーランスと呼ばれる「個」のノウハウやアイデアが、会社の価値や経営資源となるような事業形態がとても多くあります。
株式会社が「資本ありき」であれば、合同会社は「人ありき」といった側面があります。

合同会社のメリットデメリット

2005年に新設されたこの合同会社ですが、年々設立件数が増えており、あのAmazonやAppleの日本法人も、合同会社の組織形態を採用しています。
しかし、やはりそこにはメリットとデメリットがあります。
さてここからは、筆者なりに、メリットデメリットと感じるところを、以下に述べたいと思います。
他にも書籍やネットなどで、様々な論評があるかと思いますので、ここだけではなく、いろいろな意見を参考になさってみて下さい。
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※株式会社の場合は基本的に上記の逆と思ってください。
では次項より、上記の各項目について解説していきます。

[デメリット①]事業規模拡大に向かない

合同会社の場合、前にご説明した通り、「出資者」=「経営者」となります。
これは言い換えると、出資したら必然的に経営もするという意味です。
大規模な資金調達などを行う際の、いわゆる第三者割当増資が行えません。
よくネットニュースなどで、
「スタートアップやベンチャー企業の○○が、大手企業やエンジェル投資家などから、○○億円の資金調達を受けた!」
などといった話題を、目にする機会があるかと思います。
これは一般的に、その企業の株を大手企業が保有する(買う)ことで、その購入資金がベンチャー企業に入るという仕組みになっています。
これはすなわち、株式会社ならではの資金調達形態であり、出資した投資家がその企業の経営にまで参画するかと言ったら必ずしもそういったわけではありません。
(中には経営に参画する場合もあります。)

[デメリット②]事業承継がしにくい

①と似通った部分はありますが、例えば外部から役員を呼んだり、社長を誰かに譲るといった状況となった場合をイメージしてみてください。
株式会社であれば、株式の売却等で実質的な経営権の移転などがしやすいといった利点があります。
一方で、合同会社の場合は、どうしても人と会社が一体になっている要素が強いので、そういったことに柔軟に対応することができません。
さらに合同会社の場合、出資者が亡くなった場合でも、出資者の地位は当然には相続対象にはなりません。
(「定款」で、出資者の地位は相続の対象になる旨を別途定めれば可能)
株式会社であれば、株式が相続の対象となるので、例えば配偶者や子などに事業(会社の財産)を承継させることが可能です。
また、社員(出資者)が退職するとなった場合、合同会社では、出資額の返還をしなければなりません。
会社が成長していれば、その分の成果も合わせて返還をすることとなり、金額面で争いが起きたり、会社にその分の現金がない場合は、事業資産の売却などといったことも起こりかねません。

[メリット①]意思決定の自由さ

合同会社は株式会社と違い、株主総会や取締役会といった機関設計の必要はありません。
その分自由で、迅速な意思決定が可能とされています。
もし社員(出資者)が2名以上の場合でも、合同会社の場合は原則、出資金額の比率ではなく社員(出資者)一人につき一票の議決権(過半数で決議)となります。
また、定款の定めにより、社員(出資者)の中から「業務執行社員」を選定することができます。
その場合は、会社の意思決定権はこの業務執行社員のみが持つようになります。
業務執行社員を選定した時点で、それ以外の社員(出資者)は意思決定権を無くすことになります。

[メリット②]設立コスト、維持コストが低い

ここで合同会社と株式会社の設立にかかる費用を下記にまとめてみます。
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上記を見ても、合同会社のほうが圧倒的に設立費用が安いです。
さらに、維持コストという部分では、株式会社の場合は、取締役の任期は最大10年という規定があり、再任の場合でも1万円の登録免許税が掛かります。
合同会社の場合は役員の任期といったものは存在しません。
さらに、株式会社の場合は決算公告が会社法第440条において法律上義務付けられており、これにも費用が生じることとなります。

【一目瞭然】(株)・(同) あなたはどっち!?

今まで比較してきた事をまとめると、概ね以下のような事となります。
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作成:int行政書士事務所

株式会社と合同会社の肩書き

最後に、株式会社と合同会社とで異なる呼称(肩書き)について、確認しておきましょう。
合同会社の場合は「代表取締役」という肩書ではなく「代表社員」という肩書きになります。
※株式会社の略称は(株)○○ 合同会社の略称は(同)●● となります。

まとめ

ここまで合同会社について、詳しくみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

私個人の意見としては、合同会社はそのうち、単年では設立件数で株式会社を超えるのではないかと見ています。
それぐらい、いまのビジネスにフィットしていて、かつ合理的な法人設立形態だと思っています。
しかしながら、まだまだ認知されていない面も多々あり、特に社員(出資者)が複数いる場合の合同会社設立には、注意が必要なことは、今まで述べてきたとおりです。
合同会社では、「定款自治」の原則があり、定款の記載内容次第で、その人に合った会社にカスタマイズことができます。
しかし、会社を設立する段階で、そこまでの知識を備えて会社の定款を設計するというのも、これまた簡単ではない話しかと思います。
そのような際には、我々のような専門家が、適切なアドバイスを行うことで、依頼者にフィットした法人設立を手助けすることができるでしょう。
以上、法人設立への道しるべとして、是非参考にしていただけたらと思います。
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