20. 【革新的!新認知行動療法】アクセプタンス&コミットメントセラピーとは

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最近、ラス・ハリス著『幸せになりたいなら 幸せになろうとしてはいけない』を読んで色々と目から鱗な考え方を得られたので、皆さんにもシェアさせて頂きたいと思います。

▼今最も注目を集める、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)とは
アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)とは、マインドフルネスの考え方に基づき心の柔軟性を高めることによって、心の健康を取り戻す療法のことです。

アメリカの心理学者スティーブン・ヘイズ(Steven C. Hayes)らにより開発されました。
Acceptance&Commitment Therapyの頭文字をとってACTと呼ばれています。

この療法が今世界的な広がりを見せている理由の一つに、医師などの専門家による療法としてのみならず、一般の人々がストレス対処・軽減するのにも取り入れることができる設計になっている点があります。

医師のラス・ハリスが複数の書籍で分かりやすく解説しているので、もし興味がある方がいらっしゃったら是非読んでみてください。
私が読んだ『幸せになりたいなら 幸せになろうとしてはいけない』は、一番初めに読む入門書としておススメです。

▼受容し、責任を持って行動する
ACTがこれまでの心理療法と大きく異なるのが、「受容(Acceptance)」することを重視している点。

これまでの心理療法は、辛い気持ちやストレスを引き起こす歪んだ認知を「コントロールして治す」スタンスが主流でした。

しかしACTでは、辛い気持ちやストレスを受容し、居場所をつくってあげることで、人が意味ある行動へ向かうことができるよう助けます。

ACTで実践する「受容」をラス・ハリスはこのように定義しています。
自分の思考と感情をあるがままの状態にしておくこと。その思考・感情が喜ばしいものでもつらいものでも、心を開いて、それを受け入れる場所を作ること。

思考に抗うのをやめ、それが自然と湧き起こったり消えたりするのに任せること。
心や身体がしんどいのであれば、まずはその状態を素直に受け入れることがアクセプタンスです。

そうすれば、会社を休むなり、医師に相談するなり、自分の人生をよりよくするために、「行動すること」(taking action)へとつなげていくことができます。

コミットメントには約束・責任という意味がありますが、「あるがままの感情」を受け入れたなら、よりよい人生にするために、何をするかを考え、その実行を自分と約束し、責任をもって行動に移すのです。会社を休み病院に行くと決めたら、それを実行します。
これが「コミットメント」(Commitment)の意味するところです。

▼ACTの6つの基本行動原則
ACTでは、自分の思考を受容し、人生が意味ある方向へ向かうよう行動していくための6つの行動原則を定めています。

①脱フュージョン:「思考」を「言葉」と「イメージ」の組み合わせに過ぎないと認識する。
まず、思考は私たち自身がつくりあげた「ただの物語」だと理解することが重要です。

私たちは、言葉とイメージを使って、色んなことを常に思考します。そしてその思考は感情を生み出します。

例えば、職場でミスをして上司に怒られたとします。
家に帰って、過去の同じようなミスを思い出したり、明日もまた怒られるのでは、と想像してしまいます。

「今ここ」で起きていないことを思考した結果、憂鬱な気分になったり、ストレスを感じてしまいます。

新聞には、事実に基づいた記事が書かれていますが、それが100%の真実というわけではありません。事実のある一場面を切り取って、ある一つの視点から書かれているものです。

私たちの思考も、まさにそれと同じです。ある一部の記憶や感情を拾い上げてつくった物語を、私たちに何度も聞かせてくるのです。

私たちは、つい自分の思考を「真実」と捉えてしまう傾向があります。この状態を「フュージョン(融合)している」といいます。つまり、思考と現実が融合してしまっている状態、ということですね。

しかしそれはあくまで、「思考する自分」が勝手につくりあげた物語であって、100%真実ではないのだということを、まず認識します。

脱フュージョンするための技法はいくつかあります。
・思考が自分の邪魔をしてきたら、「私は今、〇〇という考えを持った」と心の中で確認する。
・よく出てくる物語に名前をつけて、その物語が出てくる度に「また「私はダメ人間」物語だ。」と心の中で確認する。
・思考している自分の心に対して「心よ、ありがとう!」と感謝を伝える。
このようなステップを踏むだけで、思考している自分を客観的に見つめることができ、雑念にとらわれている自分に気づきます。

②拡張:不快な感情を受け入れ、居場所をつくる。

ネガティブな感情が生まれても、それを追いやろうとせず、居場所をつくってあげるように意識をオープンにして広げます。

ネガティブな感情を追い払わない理由は、「自分はダメだ」「どうせ失敗する」といったネガティブな感情を一時的に拒絶しても、それは必ず繰り返し現れ、しかもより大きな感情になってぶり返すからです。

拡張は、椅子に座ったり仰向けになって、深呼吸しながら自分の身体の感覚や感情に意識を向けていくことで訓練することができます(瞑想の手法ですね)。

③接続:集中し「今ここ、この瞬間」に意識を置く

拡張に慣れてきたら次は、あれこれと他のことを考えて意識が逸れる状態から脱して、「今この瞬間」にだけ集中することを考えます。

接続のエクササイズはいくつかありますが、例えば自分をとりまく環境と繋がる練習として、深呼吸をしながら、自分の周りに聞こえる5つの音に注意を向ける、あるいは自分の身体の感覚5つの注意を向けてみる時間をつくってみると良いでしょう。

④観察する自己:「思考する自分」を客観的に見つめる「気づく自己」に意識を向ける

ACTでは2種類の自己が定義されています。
①思考する自己:いわゆる「マインド」。判断、比較、創造、記憶等を司る。
②観察する自己:何かに気づきはするが、価値判断はしない。集中、注目、気づきを司る。

「思考する自己」があるからこそ、私たちは勉強したり仕事ができたり、クリエイティブになることができます。

その一方で、何かに集中しようとしているときに、やり残した仕事のことを考えたり、SNSで見かけた友達の投稿のことを思い出したりしてしまうのです。集中力を削がれたり、ネガティブな感情に苦しめられます。

思考する自己に惑わされず、観察する自己を意識することで、この「気づき」の瞬間の感覚を強く意識し、それを何度も繰り返していくと、「思考する自己」と「観察する自己」との違いが身体感覚をともなって明確に理解できます。

すると「思考はただの思考」に過ぎないと、「脱フュージョン」することができます。この「観察する自己」を集中的にトレーニングするのがマインドフルネス瞑想ですね。

⑤価値の確認:自分が大切にしたい価値を明確にし行動指針とする
①~④までを読んでいただくと、「ACTとマインドフルネス瞑想って何が違うの…?」と思われるかもしれません。

ACTは、マインドフルネスの技法も活用しながら、人生を豊かにするための「行動をとる」ことを重視しています。

①~④はマインドフルネスの考え方に基づく行動ですが、⑤・⑥は「実際に行動する」ための考え方です。

行動を起こすためのエンジンとなる「自分の価値」を、ラス・ハリスは以下のように定義しています。
・心の中のもっとも深い欲望。何になりたいか、どんなものを支持したいか、世界とどのように関わりたいかなど。
・人生を通して私たちを導き動機づける主要な原理。
価値観を明確化するためには、自分がどんな人生を望んでいるのか、どんな人間になりたいか、心の深い部分で一番重要だと考えていること、について自問自答するか、グループワークやキャリアコンサルタントとの対話を通じて行うことがおススメです。

⑥目標に向かっての行動
ここまできたら、あとは具体的に計画を立て、行動するのみです。

その行動は小さなものでも大きなものでも構いません。それが自分の人生にとって有効なものであれば、良いのです。

『豊かで意味ある人生は行動によって作られる。だがどんな行動でも良いわけではない。それは価値によって動機づけられた、効果的な行動でなければならない。
意味ある人生は、強い意志的行動によって、何度失敗しても、何度コースからはじかれても飽くことなく挑戦することによって築かれる。』
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