ドイツ語暗号解読 イギリスの息子編⑥~母さん、またダメだったよ~

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コラム
母さん、今回もまた卒業試験、ダメだったよ。

うぅ・・・多分、みんなこの時の青年の気持ち、痛いくらいよくわかると思います。現役の学生さんだけでなく、いい大人も、おじいもおばあも・・・みんなこの気持ち、知ってる。
100年以上前だろうが、変わらないお母さんに対する子どもの気持ちです。
タイミングいいかと思って、母の日に合わせて公開したかったのですが・・・すまん、体力がついて行かなかった(泣)

自分を信じてくれてる人をがっかりさせてしまう、ダメな自分、だけど、それでも受け入れてくれるお母さんのこと、だから余計に喜ばせたかったのに・・・できなかった。

イギリスの大学では5月に講座が終了、成績が出ているようです。

時系列から考えるとこう。
5月初めにエドワード七世が逝去。各国の新聞などで報道されたはず。
5月20日に葬儀が執り行われる。
5月20日過ぎて、お母さんは、そろそろ卒業試験の結果が出てるかなと心配しつつ、だけどプレッシャーになってはいけないと、気軽な手紙をイギリスの息子に出した。
「大英博物館には行った?ハイドパークは?」「この間お葬式あったわよね、フランツ公、プリンセスと一緒に行ったのかしら?」なんて、どーでもいい話題で深刻さを消したかった。気楽な雰囲気を出したかったのではないでしょうか。そして、ついでみたいに「試験結果出たらちゃんと連絡するのよ!」なんて、書いたかもしれません。

5月後半から6月初めのあたり。
結果の報告が遅いので、お母さんは心配になり、思い切ってイギリスへ国際電話をかける。
さすがにもう結果は出ているだろうと思ったが、この時点ではまだ成績発表が出てなかった。
お母さんとの電話の後、試験結果が出る。
息子、今年も卒業できませんでした・・・。

お母さんに報告しなきゃ、ダメだったこと、伝えなきゃ・・・。イヤだな、お母さん、がっかりするだろうな、気が重いや・・・。
6月半ば、息子さんがお母さんに葉書を出す←今ココ
ぐずぐずと本題に入らず、歯切れ悪く、天気がいいとか、大英博物館のこと、フランツ公とプリンセスのこと・・・・母の大した意味のない質問に対して律儀に返事している。

そしてとうとう・・・
母さん、今回もまたダメだったよ。
「これが人生ってもんですよね」
「また」ってことは去年もダメだったのでしょうね。
今年こそはと挑んだが、やっぱりダメだったのでしょうね。

最後に「しばらくしたら帰ります」と葉書の余白、ギリギリところ、隅っこに書いてありました。
お母さん、手紙読んで「早く帰っておいで」って心から思ったでしょうね。

もういいじゃん。頑張ったじゃん(→知らんけど)
早くママのところに帰りなよ・・・。
だって、1910年。数年後には、戦争が始まるんだよ。フランツ公も身分違いの奥さんも、殺されちゃうんだよ。
君だって、もしかしたら兵士として戦場に行くことになるかもしれないじゃん。
※第一次世界大戦は史上最悪の塹壕戦として知られています。

早く帰りな、ママのところへ。
一分一秒でも早く。
そしてドイツのさわやかな夏を楽しめばいいじゃん。
湖に泳ぎに行ったり、サクランボ摘みしたり、自転車で旅行したり、ママのケーキ食べたり、子供の頃、丘の上でチューした幼馴染と再会とか・・・そういう幸せなことだけしなよ。

試験に落ちたって別にいいじゃん。
そんなこと、もう、どうだっていいじゃん・・・。
ママがブレーメンで君の帰りを心から待ってる。
それだけで、幸せな気持ちになれないだろうか?
元気な姿でママのところに帰る方が、ずっとママを喜ばせるはずだよ・・・。

・・・うん、それでも、それでも・・・・卒業証書を持って帰りたかったよね。
ママに見せてあげたかったよね。ワカル。

なんだか、切ない気持ちになってしまいました。
今回も、一枚のポストカードでホームドラマが垣間見れましたねぇ。
怒涛の数日間、極上のミステリーを読むより充実した日々を過ごすことができました!
毎日、毎回、別のストーリーが立ち上がり、そして壊れ、そして最後には母思いの、まだちょっと甘えっこな息子、息子のことを愛して気にかけている母の姿が浮かび上がりました。
あぁ、楽しかった。

完成した翻訳を読んだら、きっとびっくりするだろうな・・・って依頼者様のことを思い浮かべたら、ウクク~って楽しい気分になりました♡
長年手元にあった古いポストカードにこんなドラマが潜んでいたなんて知ったら、きっとびっくりなさるはずです!

依頼者様!
今回も、どうもありがとうございます。
優しい世界を私に見せてくれて、どうもありがとう。
今回、これ以上は無理というところまで世界観を再現することができたと思うんです。色々サポートしてくれたおかげです。特に、最後のポストカードの表の写真を送って下さらなかったら、とんだ勘違いしたままだった可能性もあります(笑)
助けられました!
とっても楽しかったです。ありがとうございました!!

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