初☆ユーチューブ動画投稿裏話⑦~終わり~

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コラム
2023年の二月に私の父が亡くなりました。
その前の年、2022年秋ごろから、実は私、嗅覚がほとんど機能していなかったんです。
動画撮影時点、2023年11月なんですが、実はニオイしてませんでした!

すぐに病院に行けばよかったのですが、当時はまだコロナ禍。下手に病院に行って、コロナうつされるのは嫌だし、コロナ後遺症で嗅覚がなくなる人もいるという話を聞いていたので、コロナ外来とかそういう方向の診断されたらややこしいな・・・って結局病院には行かなかったんです。

父の危篤で実家に帰ってからは、自分が病院に行くどころの話ではなかったですしね・・・。

うちの父、前に書いたように古本好きだったんです。
死ぬ前にも「蔵書は古本屋に売ったりしないでほしい」とつぶやいてましたね。
「欲しいという人にあげるならまだしも、一緒くたに『はい、いくら』で二束三文で買いたたくような古本屋には渡さないでほしい」と。

その当時は、何ドリーマーなことを言ってやがる、このジジイと思いました。
すべての壁がふさがるほどの本をどうせいっちゅうんじゃ!!介護ベッドの周りにまで本が浸食している状態で、何をほざいてやがる・・・。
死ぬ間際の人に残酷なことも言えないので「そーだねー」なんてテキトー答えてましたけどね。

それで、私、嗅覚がなかったわけですが、実家の匂いというものも感じられず。
そして父の独特の匂いというものも全くわからない。
とうとう父が死んでお葬式というときになっても、お線香の匂いも、ユリのむせかえるような匂いも全くしなかったのです。
まるで、映像を見ているかのような、臨場感のなさ。
自分の鼻を呪いました。

父が亡くなり、お葬式が済んだ後、私は実家の蔵書整理という難題に取り掛かることになるのです。
二か月くらいかかりましたね。

まずは、ボロボロで今にも破れて分解しそうになっている古い本だけより分ける作業をしました。
それを段ボールに詰めて、なるべく日の当たらない押し入れの奥の方にしまい込みます。
(古本カフェなど開業考えている方がいらしたらご一報ください。いい感じに茶けている本、割とありますヨ)

その後は、雑誌類だけより分けます。雑誌は雑誌でタイトルごとに分類しました。
大型本、特に美術系、仏教系などは大型の本が多いので、それはそれで別に分類します。
文庫、新書で分けて、あとは、ジャンルごとに分類しました。

能・狂言関係、民俗学、民話、哲学・思想系、美術関係、西洋思想、マルクス、トロツキー、ロシア革命関係・・・
折口信夫(折しも、ジャニーズの事件関連で再注目されていましたね)、柳田邦男、宮沢賢治、中野重治、吉本隆明の本は、それだけで一つのコーナーができるほどありました。
ジャンルにものすごい偏りがありますね(笑)

これでも、一時よりは蔵書減っていた方なのです。というのも、数年前に、私が実家に帰っていた折、ブチ切れて古本屋にごっそり引き取ってもらったからです。段ボールに何箱も運び込んだが、受け取った金額は3000円ぽっちでしたね。

本というのは、いつでもあるようでいて、実はないものです。
一度手放すと、その本はもう永久に手元から離れます。
アマゾンで注文できる♪と思っていらっしゃるかもしれません。
ですが、アマゾンで注文できる本なんて、ほんの一握りなんです。
最近は、出版されてもすぐに絶版になってしまい、注文できない本が多いのです。
あの時の、あの本・・・と思っても、手に入らない。
皆さんも、本を手放すときは、じっくり考えた方がいい。
その本は本当に未来永劫、手放してもいい本なのかと。

手からこぼれ落ちたものは、二度と戻ってこない。
記憶の中を探して、その気配を手探りするしかできなくなるんです。

嗅覚って、記憶と結びついているっていうじゃないですか。
私にとって、一連の父の死とお葬式は、嗅覚と結びついていない映像の中の出来事なのです。
私だけが隔離されている世界の出来事なのです。

家族の誰にも共感してもらえない、誰にも分ってもらえない、言ってもせんないことだと分かっています。
だけど・・・だからこそ、こんなところでこっそり白状してもいいですか?
最後におとーさんの匂い、もう一度、嗅ぎたかったな。
残り香が消えた後に、嗅覚が戻ったところで、取り戻せないものがあるんです。
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