うつの家族に共感するためのポイント:5選

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1.共感とは何か

①定義
共感とは、コミュニケーションの基盤です。自分と相手は別の人間でありながら、「あたかも」自分がその人になったつもりで、体験や感情を共有することです。

共感、エンパシー(empathy)は、他者と喜怒哀楽の感情を共有することを指す。もしくはその感情のこと。
例えば友人がつらい表情をしている時、相手が「つらい思いをしているのだ」ということが分かるだけでなく、自分もつらい感情を持つのがこれである。通常は、人間に本能的に備わっているものである。
しかし、例えば反社会性パーソナリティ障害やサイコパスの人物では、“共感の欠如”が見られる。近藤章久は深い共感と直観を精神治療の根幹とした
(wikipedia)

②共感力が高い人の特徴
一つは「聞き上手」です。ただ音として聞くのではなく、相手がどんな意味を持ってその言葉を使いこの話をしているのか、の意図を読み取ろうとします。

二つ目は「非言語コミュニケーションの使い方が上手い」です。非言語コミュニケーションとは、言葉ではない情報交感です。
目線、仕草、表情、声のトーン、相手との距離、沈黙の長さなどを使って、どれだけ相手の状態や話を理解しているか、を伝えるのが上手です。

三つ目は「感情のコントロールが上手い」です。
人間ですから相手の話に反発したり、自分の記憶が呼び起こされて感情が上下したりしますが、それを管理しながら相手と接することができます。

四つ目は「柔軟な想像力」があります。
自分と同じ感想や経験ではないとしても、得た情報から相手の立場や気持ちを、常識や「〜であるべき」などに捉われず想像して理解することができます。

五つ目は「深い自己理解」を持っている点です。
相手に共感するとき、自分自身の感情や考え、傾向を理解していないと相手に引っ張られ過ぎます。相手の感情に飲み込まれることは共感ではありません。自分自身を確立しているからこそできるのが「他者への共感」なのです。

2.精神疾患の家族に共感するコツ5選

共感のメリットをご理解いただけましたでしょうか。
では実際に「難しいけどやってみよう」と思えるための共感のコツをご紹介いたします。

コツその1:感情を共有する
相手の感情を理解するだけでは、「こっちだって辛いのに」という気持ちからの板挟みは解消されません。
自分が何に困っているか、何をどう感じているか、少しでもして欲しい努力は何か。
そうした普段から感じている感情を、相手に伝えましょう。
『夜眠れない分、朝起きられないことは仕方がないし、寝られるなら寝てほしいと思っている。
でも私は仕事があるから朝物音を立てるのは仕方がないんだ。
それを「静かにしてほしい」と言われると辛い。朝の準備の物音は我慢して欲しい』
と伝えることは間違いではありませんし、相手も「言ってもらえてよかった」と思うかもしれません。

コツその2:お互いに非難や批判を避ける
共感は「あたかもその人になったつもりで」相手の感情や状況を疑似体験する作業です。
相手が辛いと感じていることは、辛いことなのだ、と認識するのです。
そこへ「それくらい頑張らないと」とか「大したことじゃない」のような自分自身の判断を下してしまえば共感は失敗です。
相手の意見や感情を否定せず、受け入れる態勢が大事です。

コツその3:自分の限界を認識する
自分(家族、ケアラー)の許容量や限界を知って起きましょう。
あたかも自分が相手になったつもりで辛さを疑似体験すると、優しい人はそれをまるっと解決してあげようと思ったり、自分が肩代わりしてあげようと思うかもしれません。
それが出来る余裕があるならアリの選択かもしれません。

ですが、自分にも自分の生活と、役割と、感情と思考があります。
それらのために使うエネルギーまで差し出してしまうと、共感を通り超えて今度は燃え尽き共倒れのリスクに直面します。

共感するためには、特に精神疾患の人に共感するときには特に自分自身をよく知っておく必要があります。

コツその4:質問を上手に使う
相手の辛さをあたかも自分自身のことであるかのように想像するためには、情報が必要ですよね。
情報を得るためには、適切な質問が効果的です。
自分の辛さを「しんどい」とだけ表現するなら、それを具体化出来るような質問をしてみましょう。

体が重い、○○もする気がしない、△△くらいなら出来る、AとBならどっちが近い?など。

クリアになっていくほど、聴き手の想像力と共感の度合いも高まります。

コツその5:共感の言葉と非言語情報
まずは非言語情情報の活用です。
上述した「共感力が高い人」の特徴の一つにも挙げました。
言葉以外の情報から相手の状態を探りましょう。

もう一つは自分が相手に感じている気持ちを、共感を示す言葉で伝えましょう。
「辛そうだね」「分かるよ」「○○みたいな感じなんだね」
と返すことで、共感しようとしている意思が伝わりますし、もしズレていれば指摘してくれるでしょう。
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3.それでもやっぱり共感できない…と思う方へ、3つのアドバイス

アドバイス1:共感と同一化は違う
「同一化」とは、他者や物事と自分を結びつけ、自己との一体感を生じさせる行為です。主軸が「自分」なので、相手を自分側に引き寄せる行動です。
ですが結び付けられなければ一体感は得られません。
精神疾患の辛さを健康な人と結びつけることは困難です。
結び付けられなければ「出来ない」と思ってしまうでしょう。
共感のコツは「あたかもその人になったつもり」です。

アドバイス2:自他の境界線は譲らない
相手に共感することと、自分の意思を曲げることは全く意味が違います。
自分の考えとして「○○してほしい」と思っていて、相手に共感した結果「今は○○は難しいかもしれない」と理解することが出来るかもしれません。
そうであっても、「○○してほしい」と考えた自分なりの理由まで否定する必要はありません。して欲しいことの形を変えればいいだけです。
ここで自分なりの理由まで否定しようとするから、共感が苦痛になってしまうのです。
共感したとしても、相手は相手、自分は自分です。
その境界線は守りましょう。

アドバイス3:反対意見を言ってもいい
共感は同意でも賛成でもありません。
「理解する」ための作業です。
相手がどのように辛いのか、困っているのか、を理解しないままでは一緒に生活するのが難しいから、共感をするのです。

共感したことで理解した結果を踏まえて、「でも自分は○○だと思う」という意見を伝え手もいいのです。
もちろん伝え方に工夫は必要ですね。
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4.まとめ:共感は我慢ではない

何故家族相手に共感が難しいと感じるのでしょうか。
それは「自分側が我慢している」と感じるから、ではないでしょうか。
我慢とは、何かをねじ伏せる行為です。
相手に共感することで、それと反する自分の感情や考えをねじ伏せなければいけない、と思ってしまうと、確かに共感は難しいでしょう。

共感は、我慢や同調ではありません。
相手を深く理解することで、質の高いコミュニケーションを実現するための行動です。
共感した結果、自分とは考えが違う、と思ったら、次の段階へ進みましょう。
それは相互理解と妥協点を探るための会話です。



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