気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その61~

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本日もお読みくださりありがとうございます。
今日はやっぱり " O " の母音をより充実させる為に、少し違った音を導入として使ってみようと思います。
この事は前回前々回辺りで述べた、元の音がたとえ小さくとも問題無く響きが伝わる、そのことを絵空事で無く事実として促進・強化することとなります。
そして、何で A の母音になかなか進まないのかに付きましても先にちょっとご説明しておきます。
A の音は体で言いますと、鳩尾のちょっと下辺りを中心に、まるで太陽の光の輪のように全方向へと拡散する性質を持っているが為に、下手をするとまるで捉え処の無い八方美人的で、浅薄な印象の音になってしまう可能性があります。
そこでその音が、糸の切れた凧のようになってしまわないように、O の音で体の深い処との結び付きをしっかりとさせておきたいのです。
あくまでも、U → O → A の流れで大切に音を育んで行く狙いがあります。
そして今日、O の音を更に充実させる為に用いる音とは、" M " という子音です。
股関節と顎関節の関係性を説明した回がありましたが、あの時の大腿骨大転子を擦ることなどでよく緩んだ顎、精神的にもかなりリラックスして、口がポカーンと空いてしまう位の顎の状態で、唇だけを軽く閉じて小さく唸り声をだすと" M "音の出来上がりです。
この音こそ、これまでに述べた自分の内側を満たす音、外部に聞こえているかどうかは二の次という状態へと、より簡単に導いてくれる音です。
心身の緩みで一旦骨盤を後傾させて得た吸気を、元の姿勢への回帰エネルギーと共に呼気に変換し、その呼気で子音 " M " を響かせます。
決して「む」や「ム」、「むぅー」や「ムゥー」になってしまわないように気を付けてください。
軽く小さな音で M が出せていると、微細な振動によって唇の先がこそばゆく感じることもあります。
この時、自分の体のあちこちに手を当ててみると、リラックスの度合いによって本当に体が共振しているのを感じることが出来ます。
これは、どれだけ体壁の振動を感じられるかで、どれだけ不必要な力感や緊張から解放されているかを確かめるバロメーターにもなります。
そしてここからが今日のメインの話題です。
このように M を響かせながら、今度は自分の手で、平手でも軽く握ってでもお好みで、自分の体のあちこちを軽く叩いてみます。
そう、体を叩きながら音を発するのです。叩く以外にも、掌で色んな個所を揺すってみても良いでしょう。
出来れば背中を誰かに叩いたり揺すったりしてもらうと一番良いのですが、可能でしょうか。
こうすることで更にリラックス感が促進され、体の表面近くから中心部に向かって、どんどんと余分な力が削除されてゆきます。
そう、まるで、「実はこれも余分だったの?えっ、これも余分な緊張だったの?」と、ただ普通に座って、そして小さな声を出していたそれだけの体の中に、別に無くても良い、寧ろ無い方がエネルギー循環を効率的に促進させる力感がいっぱい残っていたことに気付かされます。
そして、それらが削減されてされてされまくって、存在の最芯部がスケルトンのように見えて来るような、そんな感覚さえ覚えるかも知れませんが、その感覚を中心に、" M " の子音は体中を響きで満たし、もう体と体の外の境界線から漏れ出さんばかりの状態がやって来ます。
そうです、もうこうなってしまったら、唇を閉じたままにしておくことがストレス、フラストレーションの増大を招き出します。
そうなったら、その響きの要求に応えるように、緩やかに唇を縦長に開いてゆきます。
すると音は、" M " の子音 + " O " の母音、即ち、" MO " という新しい響きとなって、まるで巣箱から解き放たれた鳥のように自由に、自分の体と同じように空間をも満たすようになります。
この音の完成形では、日本語表記の「もーーーーー」とか「モーーーーー」と書いても別に良いかも知れませんが、プロセスはあくまでも「M→→→→Oーーーーーーーー」です。
こんな時に喉の内部では何が起きているのかと言いますと、皆さんの小指とか薬指の爪か、それらよりももうちょっと小さい声帯という、粘膜に覆われた筋肉のひだが、軽く閉じているだけです。
その筋肉のひだを軽く、でもピタッと閉じて合わせるのに必要な最小限の筋肉の働きがあるだけで、その他の力は一切使われず、こういう音で喉を壊してしまうようなことはまずありません。
今日ご紹介したような音の響きも、一度は皆さんに実際に味わって頂きたい楽しみの一つです。
このような体験をすると、それまでのご自身の声には、実はミュートが掛かっていたと思うかも知れません。
こんなにも楽で、楽だからこそ相手の防御を外して心にまで届く、そんな響きを自分の体が発することに驚かれることと思います。

つづく
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