気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その62~

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本日もお読みくださり誠にありがとうございます。
今回はもう一押し、" O " の母音、昨日からオプションとして " MOー " に転じていますが、そこを更に仕上げていきたいと思います。
皆さんは首の骨は七つあることをご存知かと思います。キリンも同じ七つなんですが、それは置いときまして、その七つある首の骨の七番目、位置で言うと一番下ですが、ちょっと触ってみてもらえますか。
後頭部の中央のラインを下へ向かって、所謂うなじを撫で降ろすと、背中と首の境界線辺りでひと際大きなボコッと出っ張った骨に出くわすと思いますが、それが第七頸椎という骨です。
バレリーナとかボクサーとか、絞り込んだ体ではよりくっきりと目立ちますね。
今回は可能であればこの第七頸椎に誰かに掌を被せてもらって、" MOー " の発音の最中、ちょうど " M " から " O " への変わり目のタイミングで、下方へ向けて押し下げてもらうということをやります。
そもそもこれまでにご紹介して来た第二パターンの呼吸とは、自意識の脱落後に発現する本能的なV字回復エネルギーでしたから、筋力を鍛えるような力の発揮とは根本的に違う動きであることは何度か述べて参りました。
しかし冷静にこの動きを観察すると、頭部という重量物を含む上半身の全てを、たったの骨盤一つ、それもほんの少しの稼働だけでゆうゆうと楽に上下動させていることが分かります。
もし皆さんが、自分の上半身と同じ大きさ重さの物体を持ち上げたり移動させようとしたら、結構な労力が必要なことに気付かれるでしょう。
第二パターンの呼吸では、そんな重労働を骨盤一つが余りにも簡単にやってのけてしまうものですから、その中にそんなに大きなパワーが秘められているとは全く自覚出来ないのです。
そこで、人の手によって第七頸椎を下に向けて、正確には骨盤の底、二つの坐骨と坐骨の間のスペースへ向けて押し下げてもらうのです。
そう、骨盤が緩み坐骨が後傾して椅子の天板との接点が一旦広がり焦点も曖昧になって、そして折り返しの動きで再び坐骨の頂点に帰って来てしっかりと立つ時、その作用によって背骨が真上に向かって伸びようとする力がどれ程強靭なのかを、このように敢えてその動きを邪魔してもらうことで自覚出来るようになります。
自意識が関与していては発揮できないパワーを、自意識には認識だけはしてもらって、それが単なる偶然とかまぐれでは無く、スキルとして自分の中に成立するものであり、再現可能であることを確認します。
この時に起こる出来事とは、" MOー " の音声が、更に大きく、更に遠くまで届くようになること。これは、自分一人ではとても気付くことが出来なかった本来的に持ち合わせている活力、存在し主張する権利に目覚めるから起こる現象とも言えます。
更に第七頸椎を押し下げてもらうことで、単純に喉の奥のスペースが縦に長く広がって、音の明瞭度が上がることも感じられるでしょう。
それから、第七頸椎を包んでいる手には、声の振動がビリビリと伝わっていて、更に、相当真剣に集中して押し下げることに取り組まないと、全く荷重としての役割を果たせない位に、坐骨から背骨に伝わる上に伸びる力には太刀打ち出来ない事態となってしまいます。
このやり取りを数回行った後に、この掌による抵抗をやめて、更に" MOー " の音を出し続けてみます。
一定の抵抗から解き放たれた骨盤の底から立ち昇るエネルギーは、内包され埋蔵されていた持てる力に目覚めて、グレードアップした音を自分のものとしてその後も出し続けてくれるでしょう。
もしかすると、産声を上げてから赤ちゃんと呼ばれた時期には普通に出せていた声、いや、その当時はその声しか出せなかった、その声を取り戻せている瞬間がここにあるのかも知れません。
聞こうと意識しなくても、ついつい聞いてしまう声、言語としての意味よりも、音そのものに何らかのメッセージ性を感じてしまう声、です。

つづく
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