前回は、妄想をビジネスに落とし込むスキルについて私の考えを述べました。
そして、妄想力を高める研修を紹介するといいましたが、その前に私がやってきた研修を通じて考え続けてきたことを整理して述べたいと思います。
私はクライアントに対する研修、社内研修、海外での研修など数々の研修を実施してきました。
研修と言っても、私の分野は「ビジネス・プランニング」です
ビジネスプランニングとは、新規事業、商品開発、企画提案など、何か新しい価値を創って提案するという領域の業務です。
要するに「企画の仕方」ですね。
ビジネス・プランニング研修の中身
ビジネス・プラン二ングというのは一定の様式があるので、その工程を可視化し、フレームとして提示しすることにより、そこに考えた結果を埋めていくという方式を取っています。
フレームはその効用を納得してもらえれば、各所で何を考え、何を入れ込めばいいのかに集中できるので、思考の生産性を上げることができます。
プログラムは3つ
プログラムは、①創造力研修、②企画力研修、③プレゼン研修の3つからなっています。
①創造力研修は、前回の「妄想力というスキルの身につけ方」で概説した考え方をエクソサイズ形式の研修に仕立てたものです。妄想力=創造力と捉え、妄想を膨らませ、ビジネスにプラグインする形作りをします。
②企画力研修は、ビジネス・プランニングの中心となるもので、オリエン課題を与え、それを解決し導き出したビジネス・アイデアを企画書という形で帰結させる研修です。
企画書には一定のフォーマットがあり、それを「リボンフレーム」というフレームを埋めていくことで一本の流れを作り出すようにします。
③プレゼン研修は、文字通りプレゼンの演習を皆の前でしてもらうもので、条件として、企画力研修で作成した企画書に基づいてプレゼン原稿をまず先に書き、それを暗記させ、プレゼンは原稿なしで行うというものです。
プレゼン原稿を書くことで、企画書の文章とプレゼン原稿の口語が融合し、相手を説得しやすくなるという私自身の経験に基づいています。
研修のやり方
研修には、ざっくり座学中心とエクソサイズ方式の2種類ありますが、プランニングスキルの場合、やはりエクソサイズ型が中心になります。
エクソサイズ型とは、仮の課題を与えてそれを解かせるというやり方です。
答えのない問いを設定し、その解決に向けて様々な思考を巡らせ、考えさせることが効果的だからです。
今時はそういうアクティブ・ラーニング形式が多いですね。
ラーニング・ピラミッド
ラーニング・プラミッドをご存知でしょうか?
これは、学習方法と学習定着率の関係を示すモデルで、アメリカ国立訓練研究所(NTL)が提唱したもので、以下の7つの学習法を学習の定着率順に並べたピラミッド形式で表現しています。
講義: 講師からの一方向的な知識伝達。学習定着率は約5%
読書: 参考書や課題図書を読む。学習定着率は約10%
視聴覚: DVDやテレビ・ラジオ番組を視聴する。学習定着率は約20%
デモンストレーション: 実演を見る。学習定着率は約30%
グループ討論: グループディスカッションやディベートを行う。学習定着率は約50%
自ら体験する: 学習内容を自ら実践(練習)する。学習定着率は約75%
他の人に教える: 学習した内容を他者に伝える。学習定着率は約90%
この図で言えば、エクソサイズ型研修は5と6を組み合わせたものになります。
ですから、学習定着率が上位2~3番目高いメソッドなので、大方の人に有効なはずです。
つまり、このブログのタイトル「研修は本当に役立つのか」に関しての答えは、「間違いなく役立つ」ということです。
とは言え、学習の定着という部分に関して、少々引っ掛かるのものがあるというのも私の実感です。
ここからその観点で私の研修に対するインサイト=課題を2つ述べてみます。
ロジックづくりが苦手の人が多い
一つ目は「ロジックづくりが苦手な人が多い」です。
例えば、企画書の冒頭は、大抵市場環境分析などの分析パートが来るわけですが、そこでの整理があまりうまくないということ。大方は並列型になってしまいます。
その原因は、このブログの冒頭でも言っていますが、まず、「Why?と問う」や「因果を見極める」ような思考習慣があまりない、日常の表層的な業務が繁忙なため、あまり突き詰めて考える場面が少ないからかなと思っています。
なのでここでは、しっかり時間をかけて考える体験を重視します。
つまり、システム2思考をしっかり働かせることが必要です。
また、「全体にどう一本筋が通っているように見せるか」についての配慮が不十分なことが多いです。
これは、コトバの難しさというものがあります。
現代の情報過多時代において、取捨選択した情報を、どう端的に表現し企画や提案に結び付けていくか、という観点から、それには適切なコトバを抽出していく技術が必要ですが、そういう経験が少ないという所でしょう。
一過性という決定的な欠点
もう一つの研修インサイトは、もっと構造的な問題です。
つまり、一過性で終わってしまう人がほとんどということです。
研修時やその前後は、皆、一生懸命に学ぼうとするわけですが、それが終わってしまうと、喉元過ぎれば熱さを忘れるではないですが、研修時のモチベーションは消え、そこで得たものも脳の奥底にしまわれてしまうわけです。
まあ、研修あるあるなのですが、教える側としては、これをどうにかしたいと考えるわけです。
つまり、課題は研修後なのです。
研修を本当に自分のものにするためには何が必要?
研修という学習法は有効である。が、定着のためには課題がある。
この気づきから、それを本当に定着させるためには何が必要か考えてみます。
前述ように、多くの人の課題は、
ロジカル・シンキングに慣れないこと
研修が一過性に終わってしまうこと
です。
つまり、解決するには、
ロジカル・シンキングを日常的ににトレーニングすること
研修のエクソサイズをその後も続けること
になります。
具体的に落とし込んでみます。
まずは、後者からです。
様々なケースへの当てはめ
研修で得心がいった考え方、フレームを使って、自ら仮想課題を設定し、エクソサイズしてみることです。
様々なケースを想定し、脳をトレーニングすることで、思考の仕方の要領が身に尽きます。
これは研修をする側に回っているということでもあります。
要するに、ラーニング・ピラミッドの6番目。一番身につくやり方です。
私の領域で言えば、ビジネス・プランニングの様々なケースをリボンフレームを使ってシミュレーションしています。
同時に、データとして溜めています。そのことで何かの時に役に立つ可能性が増えます。
特に、企画領域、マーケティング領域のリスキリングをしたい方々にとっては効果的だと思います。
また、今の仕事に身近なものや自分の関心領域から始めると強い動機付けになるでしょう。
思考メモ習慣をつける
で、前者ですが、ロジカル・シンキングの継続とは、このブログの基本メッセージである『システム2(論理思考)を働かせよ!』ということです。
そのためには、6回目、7回目で詳述ましたが、思考メモ習慣が有効です。
思考メモは、「日常の何気ない気づき、あるいは妄想アイデアをこまめにメモすること」と述べましたが、その作業は、基本ロジカル・シンキングから成り立っています。
また、文章化する時点でコトバの適切な当てはめのトレーニングにも
なっています。
例えば、私のメモに「読書やTVからの気づき」という欄があるのですが、その一節で
~【人生は超複雑なあみだくじ】と岡田斗司夫氏が言っていた。言えてるな。なので過剰な野心を持ったり、無駄に心配し過ぎでもしようがない。適当にあがいて、後は成り行きに任せるしかないか~
というメモがありますが、この文章は平たく言うと「人生はこうだから、私はこう生きるべき」というロジック構成になっています。つまり、ロジカルシンキングのトレーニングなっているわけです。
また、「超複雑なあみだくじ」という気の利いたキーワードを脳に焼き付けることができるという効果もあります。
以上、研修を自分のものにする考察を述べてみました。
次回は、学習というものが生成AIによってどう進化していくか、それをどう取り入れるか考察してみたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。