AI時代の泳ぎ方⑧ エモーショナル革命始まる

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【そもそも何を言いたかったのか】

そもそもこのブログの本来のメッセージは何だったかと思い返してみると、

「AI時代を泳ぐには、システム2(論理思考)を働かせよ。
でも、システム2は怠け者だから、それをコントロールしていくには、人間が持つ本能=なぜ?、因果、妄想を利用しよう。それらの行為にAIを利用すればきっと上手くいくよ。」
といういうことでしたね。

で、今回は、人間の思考行為を生成AIがどうサポートしてくれるのか考察してみます。

生成AIの衝撃とは何か

私は、ずっと生成AI以前と以後で何がどう違うのか考え続けていました。

最も引っかかったのは、大規模言語モデル(LLM)というデータ処理の仕方です。
結果的にこれが極めて斬新な発想だったと思います。

皆さん既にご存知でしょうが、LLMとは、大量の文章データを学習させ、次に来る単語や文節を予測する(=next token prediction)という処理モデルです。

ここで生成AIの生成物がコペルニクス的転回を起したと言われています。

何が凄いのか私なりに噛み砕いて解釈すると、次に来る単語や文章が、必ずしもロジカルじゃないものが出てくるようになったということ。そしてそれが、ロジカルじゃないにも関わらず、十分伝わったり、心を動かすものだったということです。

どういうことかと言うと、人間の紡ぐ文章には、2種類あります。

一つは、ニュースとか論文、あるいは役所や会社概要の文章のようにロジカルに構成し、そして標準的な言葉で伝えることを意図したものです。

もう一つは、小説、脚本、広告コピーやキャッチフレーズのように、そこにロジカルな要素や展開はあまりないんだけど、よりキャッチーであったり、共感を誘ったり、ワクワクを提供してくれるエモーショナルなものです。
フィクション的なものと言っもいいかもしれません。

AIはそれらをひっくるめて生成できるようになった。

言ってみれば、AIは今までのラショナル一辺倒のものからエモーショナルなものまで守備範囲が広がったということです。

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だからこそ、コンテンツに関わる人たちがざわざわしているわけです。

例えば、2024年1月の芥川賞受賞作『東京都同情塔』で、著者の九段理江さんは、「文章の5%は生成AIの文章です。」とコメントして話題になりましたが、そのような使い方が既に定着し始めているということです。

元々コンピュータは、大量のデータを数学的、統計的な処理をして、ロジカルな回答を出すという性格のものでした。
我々が期待していたのは、ラショナルな回答だったわけです。

それがLLMによって、大量データの統計的処理という原則は変わらないものの、人間の言葉を対象にした途端、もの凄くエモーショナルな回答も可能になってきたということです。

なぜかと言うと、人間の言語、文章には、感情も含めてラショナルだけじゃない、エモーショナルなものが大量に含まれていたからですね。

「ああっ、人間ってそういう存在なんだな」と改めて気づかされた次第です。

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さて、このブログの冒頭で示した我々の思考のクセ、システム1とシステム2に戻って考えてみましょう。

システム2は「論理思考」ですから、元々コンピュータとの親和性が高いと言えます。AIの大量のデータ処理による数学的、統計的なサポートをもって、システム2の思考に役立てたり、判断したリすることができ、既に多くの企業が取り入れ始めています。

一方、システム1は「直感思考」です。ここには人間特有の情動や感情が混じっており、また、多くの認知バイアスにまみれていることは既に述べました。
なので、先程のLLMによって、生成AIはそういう人間臭い部分でのサポートもしてくれるようになるだろうということです。

人間はそういう存在ということを意識せよ

改めて、人間はラショナルだけでなく、エモーショナルで生きている、そういう存在であることを意識せざるを得ません。

なので、ビジネスでもそういう前提で、つまり、人間に関する部分は両方の要素を踏まえつつ、生成AIと一緒にソリューションを考えていくことができるよと示唆しているのではないでしょうか。

マーケティングで言えば、ターゲティングとかコミュニケーションやコンテンツの部分は、間違いなくエモーショナル要素が絡んでくるし、ブランディングで言えば、価値規定の部分、ポーポスとか情緒価値、あるいはインナーブランディングなどもそうです。

そういう部分は、生成AIのサポートをうまく活用するのです。

今後エモーショナルが解明される

今でこそ、Next token predictionがもたらす不思議な現象(=この言葉の次に、この言葉をつなげていくと、心を揺さぶるフィクションになる)を理屈で説明することができませんが、いずれ、人間特有の「Why?」という本能を働かせて、解き明かされる時が来るのでしょう。
言い換えれば、人間の解明が進むのではないでしょうか。
私たちはその入り口にいるのです。

ちなみに画像生成系AIも、音楽生成系AIも、まずは言葉との紐づけ(プロンプトエンジニアリング)によって、その世界観やコンテンツが生成されるという順序からして、言葉をベースにしたアウトプットです。
何にしても、言葉が原点なのです。

妄想を磨こう

これからは、AIを駆使して、こうした人間の特性を丸ごと理解しながら、仕事を進めるようになる。

すると、ビジネスの選択肢が広がることが予想されます。

で、この丸ごと理解という行為そのものは、システム2です。

つまり、システム2をしっかり使って、人間特有のエモーショナルな要素も理解して、横断的、俯瞰的に仕事を進めるのが未来の仕事の要諦ではないでしょうか。

ラショナルに比べ、エモーショナルを理解し、使いこなすというのは、普通のビジネスパーソンにとってはちょっと敷居が高いというか、専門家に任せようというのが今までの常識でした。

ですが、上記のように、エモーション領域もAIによる論理づけがなされ、サポートしてくれるようになることと考えると、そこもしっかり勉強すると強力なスキルになります。

ブログの冒頭で述べたように、人間の思考の本能、「Why?」、「因果を見極める」、「妄想」の3つの特徴から見ると、「妄想」は、自分勝手ないわゆる日常の常識から解き放たれるという思考であり、エモーショナルを多分に含んでいます。
つまり、これからは人間の妄想の部分を生成AIを使って磨いていくのがいい気がします。

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では、どう妄想を解き放つかについては、後日述べたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
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