AI時代の泳ぎ方⑥ 思考の生産性アップの決め手『思考メモ』 (いい記憶に入れ替える)

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かつて私は「スマホメモ」(2018年12月CCCメディアハウス刊)という本を上梓しました。思ったほど売れませんでしたが(笑)

反省としては、

①手帳などの手書きメモを競合として意識しすぎ、電子デバイスの優秀性を強調するトンマナに終始したこと
②メモの取り方、いわゆるマニュアルチックに全体を仕上げたため、本来訴えたかった「思考メモの重要性」があまり伝わらなかったこと
があります。

しかし、この核心の部分について、益々そう思っている今日この頃なので、改めてその考えを述べたいと思います。

大げさに言えば、「思考メモ」こそが、AI時代を泳ぐ鍵と思っているのです。
まずは、人間の思考と記憶の関係について考えてみたいと思います。

長期記憶とワーキングメモリー

人間の記憶には、長期記憶とワーキングメモリーという2つのシステムがあります。

長期記憶は、例えて言えば、脳の奥底の貯蔵庫にしまわれているもの。普段は眠っているが、いざという時に引っ張り出されるあらゆる記憶です。

ワーキングメモリーとは、今どうすべきか判断するために必要な記憶。速い意思決定が必要な時に働くもので、その都度、長期記憶から取り出されます。一度に3~5つくらい、最高7つくらいまでしか処理できないということがわかっています。

例えて言えば、まな板の上に3つから7つくらいのネタ(記憶)しかない状態です。

以上は、玉川大学脳科学研究所 坂上所長のお話からの抜粋です。

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ここまで読んで頂いて、んっ?何かシステム1とシステム2の関係に似ているなと思った方もいらっしゃるでしょう。

ただ、厳密に言うと、システム1は、ほぼ無意識に行われる脳の処理なので、ワーキングメモリーすら働いていない状態です。

なので、長期記憶もワーキングメモリーも、システム2を稼働させるための情報処理システムと捉えた方がいいでしょう。

システム2の基本は、貯蔵庫にしまった長期記憶を使って脳処理する行為です。

但し、長期記憶はワーキングメモリーの情報処理を支援するための情報も提供しています。つまり、両者は連係しているのです。

思考メモとは

拙著「スマホメモ」でも取り上げましたが、私はこの10年近く思考メモを実践しています。その数はざっくり1万2千を越えました。(思考のみならず、ファクトメモ、備忘録なども含まれています)

思考メモとは何かと言うと、自分の仕事や普段の生活での気づきや意見、「こうしたらいいのに」という妄想をコンパクトに書き込んだものです。

その効用はすごく実感していて、仕事にも生活にも大いに役立っているのですが、本格的なAI時代になるこれからは、一層、自分のスキル磨きに直結してくるのではないかという予感がしています。

このブログでこれまで、新時代に向けて、「なぜ?」と問う力、因果を見極める力、妄想力を鍛えることを勧めてきましたが、そのベースとして、思考メモが必要不可欠と思っています。

思考メモはどんな役割を果たすのか

では「思考メモ」は、どんな役割を果たすのか、前述の記憶との関係で考えてみましょう。

第1の役割:長期記憶を良質なものに更新する

思考メモは、その時浮かんだ自分の考えを文章化、図示化したりして、目に見える記録として残そうという行為です。

この時、システム2が働いており、文章への変換や書いたことの信憑性の検証など脳はエネルギーを総動員するので、長期記憶の候補として残ります

但し、長期記憶として定着するところまでいくかどうかは保証の限りではありません。

しかし、何かの時にこのメモを見返したり、書き直したりすることによって、それは大事な長期記憶として保存されるようになるのです。

ちょうど学者が数多くの実験を行いながら、その都度自分の着想を確かめると完全に自分の頭に定着するようなことです。

つまり、思考メモは長期記憶の定着候補として有力であり、日常見返すことにより、実際そうなっていきます。

この思考の内容自体は、システム2で磨かれていますので、より良質な記憶、つまり、次の思考のための良質な素材と言えるわけです。

このように、思考メモ行為は貯蔵庫にある長期記憶を良質なものに更新することを促進するわけです。
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第2の効用:ワーキングメモリーの活性化

一方、ワーキングメモリーは、今まさに処理しようとしている問題について限られた情報で処理するわけですが、その時、まな板に乗っているネタは、長期記憶として定着したもの、言い換えれば昔からあまり変わらない、ちょっと古いネタが多い傾向があります。

思考メモは、新しい考えを刺激として脳に与えることで、フレッシュで良質なネタに入れ替えることができるということです。

例えば、友人たちと談笑している時、何らかのトピックについての簡単な解釈を加えて説明する機会ってありますよね。そんな時、過去の思考メモを思い出して引っ張り出し、すかさず話すような行為です。

つまり、思考メモを長期記憶から咄嗟に引っ張り出すことによって、ワーキングメモリーとして活用しているわけです。

そしてそれは、ほぼ直感であるシステム1もいいものに変えることができると私は思っています。
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因みに、人間の脳の働きとは、ニューロンをどんどんつなげていく行為です。860億個あると言われるニューロンのうち、問題の解決に必要な適切なニューロンどうしがつながりあって、指令が出されます。

これを長期記憶とワーキングメモリーに当てはめれば、思考メモの刺激によって、良質な長期記憶が、その時に使える素材=ワーキングメモリーとして、ニューロンどうしがつながり、引っ張り出されるというわけです。

思考メモは思考の生産性をアップさせる

総括すると、思考メモは思考の生産性をパワーアップさせるベースの行為であるというのが私の考え方です。
メモを蓄積し、常に新しいものに更新していくことによって、脳を刺激し、思考の生産性はアップしていきます。
つまり、思考メモをビッグデータとして、脳の本能である①なぜ?と問う力、②因果を見極める力、③妄想の力を発揮させようということなのです。
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以上は推論です。私の頭で捻りだしたものです。
最新の脳科学、認知科学を勉強、検証しながら、わかりやすく説明を試みてみました。笑

思考メモについては、まだ語るべきことがあります。それは次回に。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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