AI時代の泳ぎ方⑤ 妄想の力

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ビジネス・マーケティング

【前回までのおさらい】

ここで、ここまで述べてきたことを一旦整理してみましょう。

まず、人間の脳の思考には、システム1(直感思考、速い思考)システム2(論理思考、遅い思考)があること

また、脳の思考には、怠け癖があって、日頃から省エネモードのシステム1で済まそうという傾向があること

しかし、AIと共創するこれからの時代を考えると、システム2を働かせることが必須になること

その方法論として、

①「なぜ?」と問う力
②因果を見極める力
③妄想力

という人間の本能を利用するのがいいということ

でした。

妄想は、「~だったらいいのに」が起点

今回は、3つ目の「妄想力」です。

「妄想」も誰もが備えている本能です。授業中の妄想、小説、映画、宗教…、考えてみれば、人類が妄想にふけっていたり、妄想から生み出したコンテンツの例は枚挙にいとまがありません。

具体的な思考プロセスで言えば、何か目の前に問題や気づきがあって、 「~だったらいいのに」というマインドが起点になります。

身近な例で言えば、スーパーのレジ待ち。それぞれ長い列をなしていたら、どこが一番速いだろうと私はいつも悩みます。そんな時、各列の買い物量の読み込みとかキャッシャーとのやり取り時間(人により大きく異なりますよね、例えばデジタル処理に疎そうなシニアがいるとか)などをAIが瞬時にやってくれて推定待ち時間を表示してくれたらいいのに、などと妄想します。
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妄想には2種類ある

で、妄想には2種類あると私は思います。

一つは、フィクション妄想。これはいかにもありそうないことを面白がってどんどんつないでいくタイプの妄想です。これらは、コンテンツとなり、それ自体を共有して楽しむというエンターテインメントに価値化されていきます。

もう一つは、ビジネス妄想。上述のレジ待ちの妄想のように、実際にビジネスで価値化できそうなアイデアに帰結させていく妄想です。

私は後者の妄想力のある人がこれから重宝されるだろうと思います。
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ビジネス妄想にはシステム2をかませよ

人間の妄想はシステム1が主エンジンです。前回、システム1は安直な因果関係に基づく勝手なストーリーづくりが好きと述べました。これが妄想の土台になっているわけですね。

で、ビジネス妄想では、このシステム1のストーリー構築の力を生かしながらも、そこに遅い思考システム2もかますことで、過去にないけど実現可能そうな妄想が生まれると思っています。

具体的には、「~だったらいいな」のフィジビリティ・チェックをすることです。浮かんだビジネス妄想を、「本当にできるのか」、「実現するには何が必要なのか」を見極めることです。生成AIの登場で、この部分は非常に手軽にチェックできるようになりました。ここでしっかりAIを使い倒しましょう。
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過去にないけど実現可能そうな妄想とはどんな妄想?

私がやった過去の創造力強化研修の例を示しましょう。

テーマは、「自動運転の未来」でした。ワークショップ形式で、各グループに妄想させ、それを自動車会社にプレゼンするという想定で作業をしてもらいました。その中の一つのグループは実にユニークな妄想を描きました。それは、まず、自動車メーカーの企業城下町で、自治体ぐるみで工場やオフィスへの道を全て自動運転OKの道路にしてしまいます。そして、車内には、デスクやPCや通信設備、あるいはコーヒーマシンなど執務できるスペックが揃っており、そこでの移動時間は全て勤務時間に含めることができるという発想でした。

彼らは「働き方改革」という社会課題に対し、移動時間の有効化という視点を自動運転技術に結び付けて、これだったら実現可能という落とし込みを行いました。

こうした着想が大事になってくるということです。

いずれ、このブログで妄想研修のやり方も具体的に述べたいと思います。

いすれにしても「~だったらいいのに」は、現実ではあり得ないところまで妄想を働かせるのが人間という所が本章のミソです。ここはAIではなく、やはり人間のシステム1思考の出番です。

また、だからこそ、そこでさらにシステム2を働かせ、しっかりした分析やフィジビリティチェックに基づく実現可能なアイデアに結び付けることで、ビジネスに使える妄想力が鍛えられるというのが私の考えです。

ビジネス用語では、クリエイティビティ、企画力、戦略プランニング、アイデア創出など色々な言葉がありますが、私に言わせれば、元は妄想力だと思います。

妄想習慣の勧め

ではどう鍛えればよいのか?

結論から言えば、日頃から、色々な場面で「~だったらいいのに」、「~だったら面白いなぁ」、「~すれば解決するのに」という妄想を巡らせることです。これは、私たちがどのようにして物事を改善できるかについて、創造的に考えることを促します。

次回は、こうした思考癖をつけるために、思考メモという習慣が非常に有効であることについて述べたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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