自尊心タイプによって変わる、できなかった課題への取り組み方
記事コラム
マインドセットによって失敗への反応が変わってくるよーというお話がありました。
「文化的な背景や風習とかも子供の成長には影響があるよな〜」なんて本を読む中で感じていた昨今、教育心理学研究の中に『失敗課題の対処』についてのお話がおもしろかったのでメモ。
□□□自尊心タイプ□□□
こちらは1986年の研究で日本の小学5年生169名を対象に行われた研究になります。
簡単にまとめると、
・評価スケールを作って、「自分に対する自分の評価」と「自分に対する他人の評価」を行う。
・２つの評価をもとに自尊心タイプを分ける。
・自尊心タイプから自己イメージ、学業成績、友人関係の関連を調べる
自尊心タイプは
自分の評価が高くて、他人の評価が高い(HH)
自分の評価が高くて、他人の評価が低い(HL)
自分の評価が低くて、他人の評価が高い(LH)
自分の評価が低くて、他人の評価が低い(LL)
みたいな組み合わせでタイプ分けされます。
子供の自尊心、特にアイデンティティが確立していない時期の自尊心というのは、自分自身の自己認識だけでなく他人の評価も大きく影響するというところから、他人の評価という観点を入れたそうな。なるほどな〜
結果をまとめると
▼【自己イメージについて】
・LLは自己嫌悪感が強く、何をやってもダメだという否定的な自己イメージを示した
・HHは肯定的な自己イメージを持っている
・LLよりもLHの方が自己イメージが低かった
・HLはLHよりも他者理解ができ、自分の意見を伝えることができた
・外からの自尊行動だけでは、自信があるから行動しているのか、無力感から行動するのか判断が難しい
LLよりもLHの方が「自分のことは大したことない」って評価しているのは意外だな〜。
▼【学業成績について】
・他者評価の高い自尊心タイプの学業成績得点が他者評価の低い自尊心タイプと比べて高い
自分に自信がなくても、周りが「あいつはできるやつだ」って思っていたらテストの点が良いってことですね。
▼【友人関係について】
・他者評価の高いタイプは友人から好かれやすい
そりゃそうだという内容。
おもしろいのは「好ましい人」として選ばれた自尊心タイプは自己評価が高いグループよりも低いグループであるところ。サンプル数が少ないので断定できませんが、日本人の謙遜の美徳が影響しているんじゃないかと推測されるそう。
□□□失敗課題に対する反応□□□
この研究にはまだ続きがありまして、それぞれの自尊心タイプの子供が失敗課題にどう対応するかを調べたんです。なかなかおもしろそうですよね。
調べてみたのは
課題を提示するときに
「新しくテストを作ったのでやってください」(日常ストレス)
「努力次第で解ける問題を作ったのでやってください」(努力ストレス)
「あなたたちを評価するためにテストを作ったのでやってください」(評価ストレス)
と別々のストレスを与える。
「再びこの問題をやるとしたらどの問題をやりたいか」
を自尊心タイプごとのリアクションを調べる。
①失敗課題の再選択数
「もう一度このような問題をどの問題をやりたいか」を各ページ毎に選んでもらう。
②失敗課題に対する構え
なぜその問題を選んだか理由を確認し分類する。
a:積極的構え→成功体験に変えるための再挑戦
b:解決的構え→挑戦傾向がある
c:未解決な構え→失敗を放置して困難を避ける
③失敗課題により生じる不安
難しい問題に直面したときにどう思ったか。
「不安に思った」とか「心配ではなかった」とか
結果をまとめると
▼【失敗課題の再選択数】
・LLはどのストレス下でも再選択数は少ない
・努力が必要な課題はLHよりHLの方が再選択数は多い
・評価ストレスを与えた場合は自己評価が低いタイプは再挑戦しようとしなくなる
▼【失敗課題に対する構え】
・LLは未解決的に終わらせてしまう傾向がある
▼【失敗課題により生じる不安】
・HHは不安が強いが遂行行動が阻止されにくい
できなかった問題の学習において「努力すればできるよ！」という指示はHL群にとっては自信獲得の意欲を起こさせる傾向があるっぽいけど、自己評価が低い人たちには意欲喚起できないから一様に「努力すればできるから頑張れ！」って声かけても効果が薄いかも！
また、どんなストレス下でもLL群は成功課題を反復して失敗を失敗のままに放置してしまう傾向があったそうな。復習する内容も適切に設定してあげないと自尊心獲得のためにできるやつを繰り返しちゃうって感じですかね。
自律性を尊重して勉強を任せるにしても自尊心タイプで自己評価が低いグループは効果的に勉強できるように工夫が必要っぽいですね。ちょっと頭の片隅に置いといてもよいかもです。
