第34回:企業価値評価の投資銀行実務 ~ ベータ値

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第34回:企業価値評価の投資銀行実務 ~ ベータ値

この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。

さて、前回に引き続き、投資銀行の実務に関連したトピックを紹介して参ります。
【前回の記事】

今回は、企業価値評価における割引率を設定する際に使われる「ベータ(β)値」について、どのようなものがあるか説明したいと思います。
⇒ ①ヒストリカル・ベータ、②バーラ・ベータ、③(Bloombergによる)修正ベータの3つを以下に取り上げて参ります。②については自分の手で計算するのが難しくデータベースによっては取得ができないものになりますが、良く使われるものになります。

最初に少し復習になりますが、割引率(WACC)の計算において、パラメーターであるCost of Equity(株主資本コスト)を計算する際に「ベータ値」というものが利用されます。詳細についてはブログ第9回をご参考頂けますと幸いです。

一般的には、ベータ値は「株式市場のインデックス(例えば日経平均株価)と個別企業の株価の相関関係を示す指標」であることから、インデックスの変動率と個別株価の変動率の相関係数を計算することで求められます。

こうして計算されるベータ値のことは、過去の株価動向に基づくものであることを念頭に、「Historical Beta(ヒストリカル・ベータ)」と呼ばれます。

投資銀行の実務においては、この「ヒストリカル・ベータ」ではなく、それ以外の方法によって計算されるベータ値が利用されることも多くあります。

まず代表的なものが「Barra Beta (バーラ・ベータ)」と呼ばれるものです。これは MSCI Barra社というアメリカの会社が計算/販売しているベータ値のことで、投資銀行等で使われる金融データベース(主たる例としてはCapital IQ)を通じて取得できる数値になります。

これは自分の手では計算できず、MSCI Barra社の統計モデルによって計算されるものになりますが、いわゆる「Predicted Beta」(=予想ベータ)と呼ばれており、将来の収益への期待値等を反映したものとして認識されています。

コーポレート・ファイナンスや企業価値評価が「将来の数値」を考えるものであることから、ベータ値についても、将来の要素を勘案したBarra Betaが使われる理由となります。

但し、実際の計算ができない/Barra社が出している数字を所与として取るしかないことから、数値が大きく変動した場合に、その要因分析が困難である点が挙げられます。

次に、登場する頻度は下がりますが、アメリカの金融データベース会社であるBloomberg社で見られる、「Adjusted Beta」(=修正ベータ)というものがあります。

Adjusted Betaは自分でも計算ができ、次の計算式によって算出されます:
Adjusted Beta.png
※尚、Bloombergにおいて、Historical Betaは”Raw Beta”と呼ばれています

理論的根拠としては、どのような個別銘柄の株価動向も、中長期的に見れば、「市場平均並み」つまり「ベータ=1」に収れんしていくはずだ、という考えに基づいています。そのため、①Historical Beta と②市場平均としてのベータ=1、という2つの項目に対して上記の通り加重平均を取る計算式となっています。

但し、この加重平均の取り方については、全ての業種・銘柄について画一的に取られているため、やや使いにくいという主張もあると理解しています。

本日はここまでとなります。最後までお読みいただき、誠に有難うございました!次回以降もどうぞ宜しくお願い致します。

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【ディスクレーマー】
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