涙の奥にあるもの・・・久保建英

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コラム
東京オリンピックが終わり、次はパラリンピックですね。自分の主観になりますが、オリンピックで密かに期待・楽しみにしていたことは、サッカー男子のメダル獲得、それも銀以上、でした。

もともとサッカーフリークな自分なので当然といえば当然ですが、今回のチームは本当にドリームチームのようでしたので、今後の日本A代表にもつながる楽しみがあり、期待とワクワクでいっぱいでした。
結果はロンドンと同じ4位でしたが、予選リーグの戦いや選手たちのガチなプレーを見ていると、今後の飛躍をとても期待できるものだな、と思いました。
さて、その中で印象的なシーンは、これまた主観ですが、3位決定戦メキシコ戦終了直後の『久保建英選手の号泣』シーンです。他の選手が同じことをしていても印象には残らなかったと思います。

それはなぜか・・・

それを紐解くカギは、久保選手の今までの歩みに関係していると考えます。
久保選手、日本の至宝として、現在世界最高峰スペインリーグの、これまた最高ランクに位置するレアルマドリードというチームに所属しています。ここ2年ほどEU圏外枠の関係でレンタル移籍されており、その移籍先でも力を発揮できたりできなかったり、ストレスの溜まる日々を送っていたのでは?特にこの1年はそうだったのだろうと個人的には思っていました。
知る人ぞ知るですが、久保選手はとても若い、いや子供のころからその才能を見込まれ、これまたスペインリーグの最高ランクに位置するFCバルセロナというチームの育成世代にスカウトされ、その将来を期待されていました。いろいろな事情があって、15歳(?)の頃に日本に帰国し、FC東京に加入、18歳(?)の頃だったかと思いますが、J1の試合に出場し大活躍をしていました。その活躍を評価され、現在所属するレアルマドリードに移籍したのでした。
このような文句なしの経歴をもつ久保選手。なぜあの涙につながったのか・・・

決勝をかけたセミファイナルでスペインに敗れた日本。
敗戦直後、久保選手は一点を見つめて呆然としている、いや、落胆というよりも「今の『日本のチーム』の実力であればしょうがないのかな」という諦めに近い心境であったように見えました。それが一転3位決定戦で敗れた直後はその直後から号泣。
3位決定戦の前に、久保選手はインタビューに答え、「なにがなんでも自分が決める、3位で銅メダルを獲得する、そのメダルを先輩である吉田、酒井選手に!」と『宣言』していたのでした。ようは『覚悟』をメディアに伝えていたのだと思うのです。『覚悟』ですから背を崖に向けて戦っていたのだと思います。結果は実らず敗戦・・・

実のところ、こうやってメディアも含め、自分で堅い誓いをもって発信し、有言実行が今まで叶わなかったのは、彼の人生の中でこれがはじめての経験だったのでは?と、あの周囲を気にせず号泣したことに表れていたのではないかと思います。

天才ゆえにひとつひとつのハードル、壁を今まではすべてクリアしていけた。そして本当に大きく、強く、堅い壁にぶつかり、はじめて超えることができなかった。そのときに自分に降りかかる情けない心境があの号泣だったのではないか、そんな風に感じました。

「責任感が強いがゆえ」、「先輩たちに申し訳ない」、「プレッシャーからの解放で」・・・そんな風にメディアでは語られていましたが、彼の本当の心境というのは、自分にできないものはないと思っていたものが、人生で、はじめてできないことにぶつかったことによる『自分に対する情けなさ』であり、プレッシャーや周囲への申し訳なさもあったとは思いますが、一番は、あくまでも久保選手本人の内面、だったのだと思うのです。

これを感じたとき、日本にも本当に内面から自分に向き合い、内面から真の意味で『悔しい』と感じることができる選手、いや人材がいるんだなぁ、とすごく自分なりにうれしい気持ちになりました。
豊かな日本では真のハングリーな人材は育たない・・・そうやって自己肯定感を無駄に否定する論調が多い日本において、それを覆す人材が出てきたぞ、と・・・

彼の今後の活躍がなされるかどうか、それは誰にもわかりません。
ただ、あの年代で、内面からくる、自分軸を完全否定される「敗戦」という現実にぶちあたり、真の意味で悔しいと思える経験ができたことで、更なる高みを本気で目指せる『ココロ』ができたのではないかな、と思います。
そして忘れてならないのは『涙』です。涙によりそれまでの自分を縛っていたなんらかのものからの『解放』になったのでは?と・・・
どちらにしても、久保選手のあの号泣は、彼にとっても、場合によっては日本という一国にとっても、大きく変化する転換点になるのではないか、と個人的には夢を膨らませてしまいます。

彼ほどではなくても良いので、年齢に関係なく、あの久保選手のような『本気の涙』、『自分への情けなさ』、『有言不実行となってしまった羞恥心』これらを経験しつつ、そこから立ち上がることを生きているうちに実行したいものです。
3まわりくらい大きく、包容感のある人間になれ、そしてなによりも、『自己肯定』できることによる、真の意味での心理的成功を手に入れることができるでしょうから・・・

オリンピックは勝ち負けの世界です。もちろん、それだけじゃないよ、という声もあるでしょう。ただ、目指すのはメダルであり、その結果、勝者・敗者が生まれる・・・そこにフォーカスするだけでなく、メディアを通じて報じられるワンシーンの映像から、選手たちの心境に思いを巡らせるのもまた、トップアスリートの集まる場であるからこそ、質の高い思考を生み出すものになるのかな、と、東京オリンピックを見て一番に感じたことでした。
みなさんは、どんなシーンでどんなことに思いを巡らせましたでしょうか?自分自身の内面をぜひ振り返っていただくと、意外なことに気づくかもしれないですね・・・
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