暴力は絶対にいけないことだし、文明社会においては絶対に許してはいけない行為である。
しかし、一方で、「言葉の暴力」というものが存在することも、また事実だ。
今回のウィル・スミス氏のアカデミー賞の壇上でのビンタ事件を見て、私はこの大前提を前にして、少し考え込んでしまった。
彼はその場面で、クリス・ロックというコメディアンに自身の妻であるジェイダ・ピンケット・スミスさんの外見を揶揄するようなジョークを言われ、激昂してロック氏に平手打ちを喰らわせてしまったのだ。
このことは大問題となり、アカデミー賞の歴史に残るような出来事となった。
業界内外でも、これについての様々な意見が飛び交った。一部はスミス氏を擁護する一方で、その「有害な男らしさ」を非難する声も多く上がっている。
その後、スミス氏は映画「ドリームプラン」で主演男優賞を受賞し、受賞スピーチで涙ながらにアカデミー関係者とノミネートされた人々に謝罪。しかし、ロック氏に謝ることはなかった。
会場にいた女優のニコール・キッドマンさんやルピタ・ニョンゴさんの啞然とした表情がネット上ですぐに笑いのネタになり、業界関係者が一斉にスミス氏を非難する事態となった。
コメディアンのロジー・オドネルさんはスミス氏の行動を、「正気を失ったナルシストの有害な男らしさ」として、強く非難している。
一方で、アイドルグループ「ワン・ダイレクション」の元メンバー、リアム・ペインさんはスミス氏を擁護。彼の行動について、「彼にはその権利がある」と語った。
アメリカでは、ロック氏を擁護し、スミス氏を非難する声が多数となっているようだが、日本のネット上では、スミス氏を擁護する意見が多いようだ。
むしろ、「よくやった」「胸がスッとした」という意見も結構あって、ここは日本と欧米の意識の違いなのだろうか、と思ってしまう。
日本でも、乙武洋匡さんの動画で、彼が「スミス氏に同情した」という主旨のことを仰っていて、なるほどと思った。
私も、「幸せのちから」「アイ・アム・レジェンド」など、彼の作品は結構見ていて、好きな俳優のひとりである彼に、少なからず同情を覚える。
あれだけの大勢の観衆の前で愛する人を馬鹿にされて、怒らないのはおかしいし、無理ではある。
しかし、いずれにしても暴力はいけない。
今回のロック氏の発言は本当に最低で、最悪のものであったが、言葉で返すなど、他にやり方があったのかもしれない。
恐らくは反射的に手が出てしまったのだろうが、許されないことと言えば、それはそうである。
今回のことを許してしまえば、次のウィル・スミスが出て来ることになってしまうかもしれないのだ。
最低野郎は放っておけばよかったのかもしれない。
それにしても、あんな最低のジョークで笑う観客もどうかしている。アカデミー賞の品位って、一体なんやねん、と思ってしまった。
私も時事ニュースというか、こういう話題を取り上げて私見を述べることはあまりないが、今回はちょっと話させてもらった。
ちなみにウィル・スミス氏の妻、ジェイダさんは現在、脱毛症を患い、髪を刈り上げている。
では、皆さん、良い一日を。