ライター兼カメラマンがやるコーディングと一般的なコーディングの4つの違い

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私は日ごろはライター兼カメラマンとして活動しています。元は全国紙の記者・カメラマンでした。

ほかの多くのWeb製作者とは違い、必要とあればコンテンツ(文章、写真など)までかかわることができます。著作権に対する意識も、「昨日今日、『仕事としてうまみがありそうだ』とWeb制作に飛び込んできた人とは大違い」と自負しています。

この記事では、私がコーダーとしてどのようにWeb制作にかかわろうとしているかをご説明します。

1.Photoshop やIllustratorで作ったカンプのクセや限界を理解している

まずは、この画像の左側のフォームをご覧ください。Photoshopで作られたカンプ(一部)をご覧ください。名前欄が上の名と下の名、電話番号欄が市外局番などを分けてある点などを除けば、ごくありがちなタイプです。

入力フォーム2 copy.png

しかし、よく見ると「名前」欄と「住所」欄、「メールアドレス」欄で高さが微妙に違っています。「メールアドレス」と「メールアドレス(確認)」の文字部分も「メールアドレス」のほうが出だしで少し右にずれています。「住所」「お電話番号」などの文字の上下の空き方にもバラツキがあります。

これは本来は写真補正ソフトであるPhotoshopで作成したの主な原因でしょう。Illustratorでも同じことが起こります。また、Web制作のために開発されたFigmaやAdobe XDでも起こりうることです。

私がコーディングした右半分をご覧ください。それを除くと、微妙な差とはいえ、スッキリしているはずです。(枠のラインがあったりなかったりするのは、キャプチャー画面を縮小したためです)

Photoshopなどのソフトについて浅い知識しかなければ、そこそこコーディングに慣れた人でも、「1pxでもコーディングとの違いがでないように」との「ピクセルパーフェクト」を目指すだけで、自分の裁量で「入力欄の幅は変える理由がないところは同じにする。項目と項目の間は均等にする」はできないでしょう。

2.画像の補正ができるので、写真の質を上げたり、色調をそろえたりできる

サイトの写真が雑だと、訪問者は長く見ることはできず、滞在時間が短くなります。場合によってはそこが「離脱ポイント」になり、サイトからは逃げてしまうかもしれません。にもかかわらず、意外にむとんちゃくに使われているのをよく見かけます。

・カメラマン、デザイナー、ディレクターの3人ともが見逃した写真のピンぼけ
しばらく前、「うちのデザイナーさんはすばらしい。ちゃんと意図をくみ取って、こんなすばらしいバナーを作ってくれた」と、画像付きのTweetが流れてきました。Web制作会社の社員で、Webディレクターをやっている人によるものです。

ベースに使ったスイーツの写真はピンぼけでした。スマホ画面や、パソコンでも小さめのモニターならばわからない程度ですが、20インチ以上ならばはっきりわかります。一般の人ならば「ピンぼけだ」とまで指摘できなくても、違和感ぐらいは持ったでしょう。

カメラマンもデザイナーも見落としたようです。これらのメンバーを監督し、仕事内容をチェックする立場であるはずのWebデザイナーも同様で、ダメ出しをするどころか称賛したわけです。

・Webディレクターは写真がわからなくても、むしろ普通
カメラマンがピンぼけを見逃したのは論外です。ただ、Webデザイナーとなると「論外」とまでいっていいかどうかは迷います。というのは、Webデザイナーが写真の内容までカバーすべきかどうかは微妙なのです。実際、今回のようなピンぼけなどの画像もよく見かけます。

Webディレクターの多くが知らないようなのですが、仕事レベルの写真は撮ったままでは完成品ではなく、色調補正などのレタッチが必要です。どれだけ高性能なカメラを使っても、事情は変わりません。というのは、必要なのは「その場の光の状況を正確に再現する」ではなく、「見た人の記憶に残った光景を再現する」だからです。

ここでは詳しく解説する余裕はありません。それでも、一例だけ挙げておくと、「白色のお皿に赤っぽい照明が当たってその色に染まっていても、見た人は『白色のお皿』として記憶」します。掲載する写真も赤いままは出せません。

・使おうとしている写真は、本当はもっと見栄えのするものかもしれない
私ならば、コーディングをやりながらも、写真など画像のピンぼけ・手ブレ、色調の調整不足、トリミングの失敗などに気が付きます。もちろん、WebディレクターやWebデザイナーにフィードバックもします。

また、一枚一枚は問題がなくても、ページ全体で見たときに、濃淡や色調がそろってないと、ページ全体から雑な印象が漂ってしまいます。これらはそろえなければいけません。

撮影したカメラマンまで戻さなくても、必要とあれば私のところで補正します。「その補正で、写真はどのくらい変わるのか」の例を挙げておきます。

標高1,000メートル以上の山上から琵琶湖を眺めたところです。ガスがかかっていますが、肉眼での印象が近いのは補正を掛けた下の写真です。写真に撮ると、手前の山上も地表も同じ条件で画像として残ります。しかし、肉眼で見れば山上と地表で違う目の動きをさせています。そのため、脳裏に残るのは下の様子になるのです。
補正前(データサイズのみ変更).jpg

補正後.jpg

3.文章の間違いを直したり、平易な表現に改めたりもできる

「サイトの記事をどうするか」は本来、編集者とライターが担当します。しかし、Webの世界では、必ずしも一定のレベルが確保されているわけではありません。どちらも資格が必要な職種ではないので、なんの経験や学習もしないままでも、名乗ってしまえば「編集者」や「ライター」なのです。

また、LPページが典型ですが、文章の量が少なく、編集者やライターまで用意するのは大げさになって、打ち合わせの手間や費用の面で無理になる場合もあるでしょう。

私にコーディングをお任せいただければ、文章に問題があっても、私の方で気が付きます。わざわざチェックしようと思わなくても、自然とやります。

特に指定がなければ、共同通信社の『記者ハンドブック』に準拠します。大半の地方新聞の表記は用字用語集である『記者ハンドブック』を採用しています。つまり、「新聞記事と同じく、平易な表現だけども、政治・経済、科学、芸術、スポーツなどどんなジャンルでもカバーできる言葉遣いに直す」ということです。

しかも、校正ソフトも用意しています。これだけで、間違いがなくなるわけではありません。チェックする人間のスキル次第で、完ぺきに近づくかどうかの違いがでてきます。しかし、ソフトをつかうことで校正作業が大幅にはかどるのは確かで、いざ、本気で原稿をチェックするにも、さっと取り掛かることができます。
Screenshot from 2023-03-03 09-01-23.png

4.著作権を熟知しているし、順守して仕事をしてきた

模写サイトをポートフォリオとして使うコーダーは少なくありません。どこかのスクールなどが、「そのように使っていい」として用意したものならば、法的には問題はあありません。

しかし、実に多くのコーダーがネットで見かけただけのどこかの企業や団体のサイトを模写して、「ここまで正確にコーディングできます」と誇示しています。なかでも、模写の対象として代表的なのが、「慶應義塾大学病院」です。「慶応大学病院」「模写」「ポートフォリオ」でググると無数に見つかるでしょう。

慶応義塾大学病院.jpg

著作権者である慶応大学義塾病院の許可を取っていなければ、著作権侵害です。また、取っている例は聞いたことがありません。

このようになるのは、これまで著作権物を扱ったことがない人の多くが「短期間の学習で、手早くお金を稼ぐことができる」と信じて、コーディングを始めたからです。「彼・彼女らの多くは、職業人としての経験も限りなく少ない」とさえ見えます。

私はかつては全国紙の記者・カメラマンでした。著作権で失敗すると、自分の首が飛ぶだけではなく、会社全体にも迷惑がかかります。組織立ってやっているので、少しでも危ういと厳しい指導を受けました。また、自分の側が著作権を侵害される側に回る可能性もありました。繊細にならざるをえません。間違っても、「慶應義塾大学病院のサイトを模写して、ポートフォリオとして公開する」などできません。

また、「どの程度ならば、著作権に引っかかっらないか」も文章についても画像についてもわかります。

たとえば、新聞記事ならば……

・本文が読めたらアウト
・画像も図柄がわかるとアウト
・見出しの文言については著作権は発生しない
・レイアウトについては、よほど凝ったものでないと著作権は発生しない。一般紙面ぐらいならば大丈夫

……です。これらは過去の判例から判断できます。

そのため、「本文や写真にはぼかしを入れる。見出しは残す」が著作権法に違反しない新聞記事の転載のやり方です。

ほかのこと同様に、コーディングをやりながらでも、意識しなくてもコンテンツとして用意された文章や画像については、これらに対するセンサーが働きます。

専門家がどれだけ集まっても、すき間ができる

一つのサイトを作るには、Webディレクター、Webデザイナー、コーダーなどなどたくさんの専門家が必要です。さらに、コンテンツ部分のためには、ライターやカメラマン、編集者もそろえなければいけません。ここまで話にはで出てきませんでしたが、サイトの検索順位を上げるためにはSEO対策の専門家、サイトの全体的な方向を決めるにはWebプランナーなどもいたほうがいいでしょう。

しかし、これはあくまで建前です。先に見たように、「Webディレクター」といっても、単に会社側の担当者というだけの素人も珍しくありません。クラウドソーシングを通して低報酬で募集を掛け、その素人でしかないWebディレクターが選考すると、どの程度のレベルの人が集まるかは推して知るべしです。

まともなレベルの専門家が集まっても、安心ではないのも、先に見た通りです。写真の補正や文章の手直しのように、どの人の守備範囲に入らない部分が出てくる可能性があります。

「そこで、私のような人間の出番だ」と考えています。コーダーでもほかの立場でもチームに加えていただくと、すき間のそこそこの割合は埋まるだろうでしょうし、そうさせていただきます。

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