買い替えを考える前に知っておく パソコンの寿命と不調の原因

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写真などの画像データを加工・補正するのも、保存するのにも欠かせないのがパソコンです。原稿を書く人ならば、文書を打つのにも、調べものをするにも必要です。

しかし、原稿を仕事とし、その仕事には写真撮影も付随するライターでさえ、大半は「とりあえず使っている」状態のようです。パソコン自体に興味を持つ人は少数派で、不調になってから慌てることが少なくありません。

ライターで、かつパソコン自作歴20年の私が、パソコンの寿命やパソコンが不調になる原因について、基本的なところをご説明しましょう。ただし、私の知識は聞きかじり程度です。知っているパソコンも自分が使う分だけで、それもデスクトップ機ばかりであることは、先にお断りしておきます。

コンデンサーの寿命がパソコンの寿命

コンデンサ copy.jpg
サウンドカード(音声を入出力するための電子基板)上のアルミ電解コンデンサー。中には電解液が入っており、これが次第に蒸発することが劣化の一因になる。
私がパソコンの自作を始めたころ、周りの詳しい人に「何年ぐらい使えますかね?」と尋ねると、答えは「フルに使っているのならば、3、4年も持てば十分でしょ」でした。

「そこがコンデンサーの寿命の限界。ほかの電子部品は大丈夫でも、コンデンサーがだめになる」と知ったのは、ずっと後でした。

コンデンサーは、電気を一時的に蓄える電子部品です。パソコン内の土台部分であるマザーボード(基盤)との関連で、よく話題になることが目立ちます。しかし、電源ユニットや拡張カード(機能拡張のためのカード型電子基板)などほかのパーツも、コンデンサーがないと成り立ちません。パソコン1台では少なくて800前後、多いとその倍以上が使われています。

素材や特徴など、さまざまな分類の仕方があります。ただ、パソコンパーツの寿命や耐久性を考える場合、「85度対応のアルミ電解コンデンサー」「105度対応のアルミ電解コンデンサー」「固体コンデンサー」に3つに注目することが多いようです。

105度対応のものの寿命は85度対応のものの4倍、固体コンデンサーはさらに数倍といいます。かつてはマザーボードなどパーツの寿命が短かったのは、85度対応のものが主に使われていたからです。

その85度対応のものを、105度対応のものや固体コンデンサーで置き換えたとすると、「3、4年も持てば十分でしょ」だったのが、「10年前後持つ」「数十年持つ」になります。もちろん、「マザーボードの仕組みに大きな変化がなければ」「ほかの要素は無視すれば」の話です。

実際の製品では今は、「負荷が高くなるCPU周辺は固体コンデンサー、逆のところはアルミ電解コンデンサーにするなど、1枚のマザーボードの中でも状況に応じて使い分ける」が主流になっています。

コンデンサーやほかの電子部品の品質が上がったのは、どうやら2005年から2010年ごろのようです。たとえば、マザーボードの大手メーカーGIGABYTEは、この時期に、「Ultra Durableシリーズ」「Ultra Durable2シリーズ」「Ultra Durable3シリーズ」などを矢継ぎ早に出しています。「Ultra Durable(ウルトラデュラブル)」とは「超長持ち」の意味で、いずれも、高耐久性・長寿命をセールスポイントにした製品です。

私が使ってみても、「この時期から後のマザーボードならば7、8年、もしかしたら10年でも大丈夫だな」が実感です。

長期使用を考えるのならば、ハードディスクよりもSSD

かつて、記録装置がもっぱらハードディスクだったころ、「半年単位・1年単位で考えると消耗品だ」といわれていました。実際、保証期間が半年しかない製品もあったと記憶しています。

SSDは読み込み・読み出しの早さに注目が集まり、使われ始めました。当初はハードディスクよりも寿命は短いとされていました。しかし、改良が進み、今では、いくつかあるタイプの中でもっとも寿命の短いものでさえ、ハードディスクよりも長寿命です。

この寿命の短いタイプのSSDの場合、5年程度がめどとされることが多いようです。実は、年数よりも「容量全体を通しての回数で考えて、何回読み書きしたか」で決まるようです。スマホのバッテリーが、「何回、放電・充電したか」で寿命が決まるのに似ています。

ハードディスクにしろSSDにしろ、不調や故障があっても、その範囲はほかのパーツに及ぶことはありません。私がわざわざ強調するのは、家電店やパソコン店に修理に出し、SSDなどの故障となると、店員から「パソコンを買い替えたほうがいいですよ」と言われることが多いためです。私の周りだけでも何人かいます。中には、買って1年余りで言われた人までいました。

ハードディスクもSSDも初期不良が多く、寿命についても個体ごとの差が目立つパーツです。店員のいいなりになっていては、無駄な出費がかさむだけです。まずは、交換で考えましょう。

簡単に故障するメモリ・当たり外れのある電源ユニット

私が組んでいるパソコンでも実際に壊れたことがあるのが、メモリです。繊細なパーツらしく、人間の体にたまった静電気だけでも壊れます。そのため、手で触るときは、先に金属に触れて放電しておく必要があります。

ただ、私のパソコンでメモリが故障したのは、手で触れたタイミングではなかったので、何が原因かはわからないままです。

自作派でなくても、増設で買い足す人も多いでしょう。保証期間は長めの方が安心です。中には、「永久保証」とする製品もあります。しかし、5、6年もすれば、次の規格に移行し、使えなくなることが大半です。「永久」にはほとんど意味はありません。

メモリが「トラブルさえなければ、ずっと使える」のに対し、「寿命があるので、いずれ確実に壊れる」のが電源ユニットです。これもコンデンサーがいくつも使われていて、寿命を左右するようです。

「電源ユニット・寿命」でググると、「電源ユニットの寿命はPCなら通常は3~5年」と無数に出てきます。あるいは「2〜5年」です。あまりに同じ表現なので、おそらくは自身の経験ではなく、大半が「リライト」でしょう。他人の記事を元に、書き直しているだけに思えます。

私の実感としては、「安物でも5年ぐらいは持つ。ただし、当たり外れがある」です。数日使って、壊れたことがあります。予備としてしばらく使わずにいたものなので、保証期間も過ぎていて、返品・交換もできませんでした。これは同じ製品を先に使っていて、気に入ったので、もう1台買い足したものです。元のものは6、7年使えました。

最も多いトラブルは接触不良

私のパソコンライフの中でも、最も頻繁に起こるトラブルは、接触不良によるものです。

デスクトップ機の場合、ほとんどのもので、冷却のためのファンが用いられています。ごくごく小さいものですが振動が発生し、何カ月・何年も使っていると、ケーブル類の挿し込みに影響を与えます。緩んでしまう可能性があるのは、ハードディスクやSSDに用いられるSATAケーブルや、マザーボードへ挿し込んだメモリなどです。

さらに、これら挿し込みの金属部分が空気中の成分などと化合して、変質し、信号のやり取りが悪くなる場合があります。平たくいえば、錆(さび)るのです。

この錆は専用のクリーナーを使って、取り除く必要があります。これで回復することも珍しくありませんが、念のためをいえば、「接点復活剤」も使ったほうがいいでしょう。通電性のある被膜を金属の上に作り、その作用で接触不良を回避します。

デスクトップ機の中はホコリだらけ

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CPUクーラー用のファン。羽根の隙間から、ヒートシンクが見えている。たまには、ファンも外して掃除しないと、この部分にこってりとホコリがたまる。当然、風が通らなくなり、CPUの冷却もできなくなる。
デスクトップ機は半年も使えば中はホコリだらけになります。特に厚く積もるのが、CPUクーラー部分です。狭い間隔でフィンを重ねたヒートシンクに、直近からファンで風を当てているのですから、ホコリがたまるのも当然でしょう。冷却能力が下がり、CPUが高熱になります。夏場にパソコンの動きが不安定になるのならば、疑ってみる必要があります。

また、どの場所とは特定できなくても、積もったホコリが電気を通すことで、流れてはいけないところに電気が流れることもありえます。規模が小さいとはいえ、「ショートする」わけです。実際の私の経験としても、調子が悪くなったパソコンをほぼ解体して、マザーボードの裏までホコリを取ることで、回復したことがあります。

まずは、「パソコン」とひとまとめに考えるのをやめてみる

接触不良もホコリによるトラブルも、そうわかってしまえば、「故障というほどの故障ではない」と思えるかもしれません。パソコン自作派ならば、中を開けてケーブルを挿し直したり、そうじ機でホコリを吸い取ったりすれば終わりです。

パソコン内部に興味のない人にすれば、本格的な故障と違いはありません。しかも、何年も使っていれば、かなりの高率で発生します。もしかしたら、昔ながらに「パソコンって、3、4年持てばいいものなので、そろそろ買い替え時期かも」と考える人もいるかもしれません。

「パソコン自体に興味を持ちましょう。詳しくなりしましょう」といいたいところですが、一足飛びには難しいでしょう。「パソコン」とひとまとめにとらえるのではなく、「マザーボード」「SSD」「メモリ」「電源ユニット」と、パーツ単位でイメージできるようになるのが第一歩です。

「パソコンが壊れた」といっても、パソコンの中身全部が壊れているわけではありません。実際には、「パソコンの中にある○○のパーツが壊れた」です。たいていは、そのパーツを入れ替えるだけで済みます。

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