16歳、NYへ渡る

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今思えば、よくもあんなことが出来たものだと思う。
後悔はないし、素晴らしい体験であったことは間違いないが、子を持つ親となった今となっては、過去の自分に感心するやら恐ろしささえ覚える。

タイトルだけを見れば、あまり驚くことではないかもしれない。今時、留学をする子は少なくないのだから。けれど、これはそういうことじゃない。
「16歳、留学をする」ではないのだ。

私は、留学することもなく、頼る知人もなく、泊まるあては最初の二週間ユースホステルに予約したのみという状況で、アルバイトで貯めたなけなしのお金を握りしめて(これは比喩。ちゃんと財布に入れて)たった1人でNYへ渡ったのだ。

なぜ行ったのか?

若者がよく言うアレ・・・「自分探しの旅」ってやつも一つ。
世界を見てみたかった。と言うのも一つ。
けれど何より、「一人きり」になりたかったから。

当時、家庭の事情もごたついていて、私は思春期真っ只中、通っていた高校でも想定外の問題が持ち上がり・・・
一言で言うと私は完全に迷子になったのだ。
それまでは、自分なりに描いていた人生の道筋が確かにあったのに、それが突然かき消えてしまった。
その頃の毎日は、荒波に揉まれている気分だった。
人生の大事な岐路に立っていると言うのに、落ち着いて考えることも出来ず、何をしたいのか、どうしたいのかもわからず、周囲の大人たちの言葉に、期待に、がんじがらめになって、私は溺れそうだった。
そして、生き残るために必死で泳ぎ、荒波から逃げ出したのだ。

それを思い立ったのは、既にもがき疲れ、何もする気力が起きなくなり、暗くなった部屋で明かりもつけずにポツンと座り込んでいた時だった。

「このままでは、生きながら死んでいるのも同じ」

そう思った。そして、続けてこうも思った。

「どうせ、死んでいるのも同じなら、死ぬ気で何かしたってもう失うものなんてないんじゃない?」

そう思えた瞬間、完全に日が暮れて暗くなっていた部屋に一筋の光、糸口、脱出口・・・そんなようなものが見えたのも覚えている。

つづく・・・

悲惨な体験に遭ったのなら、逃げるには二つの選択肢しかない。そのまま溺れてしまうか、泳ぎ切るか?わたしは泳いだわ、とても速く・・・
ーCharlize Theronー
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