世の人。
その宗教では未信者のことをそう呼んでいた。
世の人と遊んではいけません。
世の人と友達になってはいけません。
世の人と結婚してはいけません。
母の教えに忠実だった私はその言葉に従った。
小学校の時は中休みも昼休みも放課後もひたすら本を読んでいた。
みんなが友達とドッチボールをしてても
放課後公園で遊んだり、友達の家に行っててもそれに参加したことは無い。
家に帰ってもテレビもゲームもおもちゃも無い。
折り紙や塗り絵で母が遊んでくれる事も無い。
あるのは宗教の書籍と広辞苑だけ。
中休みも昼休みも放課後も私はひたすら本を読んでいた。
小学校の図書室から本を借り、毎日最低5冊は読んでいた。
下校時は二宮金次郎かのように本を読みながら帰っていた。
お陰で低学年図書室の本は全部読み尽くしたし、高学年図書室は辞書の類以外は読み干してしまった。
クラスの男子の一部が私の事をメガホンと呼んでた。
「目が本」という意味らしい。
物語の中に入り込むと別人の気持ちになれ、現実逃避できた。
特に好きだったのは赤毛のアン、足長おじさん、アンネの日記。
いつか私の所に誰か救いの手を差し伸べてくれないかな。
この家から連れ去ってくれないかな。
そう思ってた。
小公女セーラのように実は別に親がいましたってのを考えなかったのは
残念ながら実の親だという事は疑いようがなかったからである。
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空だって飛べるよ ~はじめに~