空だって飛べるよ 5話 カルト宗教①入団

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私は両親からただの一度も誕生日を祝ってもらったことがない。

お金がなかったからでは無い。
おめでとうの言葉すらかけてもらったことが無いのだ。
両親とも健在だが死ぬまで口にされる事は無いのだろう。

母は私が3歳の時にある宗教に入団した。
貧困と暴力から逃げるために宗教に走ったのか、宗教にかぶれているので父の暴力が始まったのか私は知らない。
自称キリスト教を名乗るその宗教は何を置いても「神」が優先だった。
自分の命より、子供の命より、神。

たまに宮崎の祖父母の所に家族で行くことがあった。
母方の実家なのに夜中に突然「おい、行くぞ!」と家族を叩き起こし、何の承諾も得ずに泊まりに行くのだ。
今のようにスマホがある時代ではなかったので祖父母からしたらビックリである。

祖父母の家に行くと父の暴力が無いので嬉しかったが私は極度の乗り物酔いだったため、山道をスピード違反しながら走る荒い運転で毎度嘔吐していた。
私が吐いても誰も気にも止めず車を止めることも背中をさする事もなくただ一人でビニールを抱えて吐き続けていた。
気持ちが悪くて窓を開けたくても「A子(妹)の喘息が出るから」と隙間程度しか開けさせてもらえなかった。

それでも祖父母宅に行くと父の暴力がないし、まともな食事が出来るので嬉しかった。
祖父母は後に母から勧誘され同じ宗教に入るのだが、その前は年末に行くとお年玉をくれていた。
でもそれが私たちの手に渡ったことは一度も無い。
帰りの高速で父はポケットから私たちのお年玉の袋を出し、私たちの目の前で堂々と破って高速代として使っていた。


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空だって飛べるよ ~はじめに~
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