空だって飛べるよ 2話 パンの耳を食べて過ごした幼少期

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朝ごはんはパンの耳だった。

それは近所のスーパーに置いてあり
私たちもよく買いに行かされた。


3斤用パン袋一杯にパンの耳が詰められ、マジックで無造作に値段が書かれていた。

一袋大体30円〜50円。

食パンや菓子パンがきらびやかに並んでる端に、無造作に置かれていた。

一日に一袋しか売られてないのだが、買いそびれることはまずなかった。

きっと誰も買う人なんかいなかったのだろう。

たまに無くなっていると母が慌てていた位だから。

袋の中にはサンドイッチ用に耳を落としたスティック状の物や、辛うじて四角を留めている物などが一緒くたになって入っていた。

それをトースター一杯に広げ、カリカリに焼いてマーガリンを付けて食べるのだ。

取れる所のギリギリまでスライスされた耳は中央に大きく穴が開いてた。
穴の周りは生地が薄いので全体をカリカリに焼いて食べようと思うと、穴の周囲が黒く焦げた。

たまにふわふわの部分が残ってる耳を見つけると、すごく得した気分になったものだ。

そんな中、父だけは毎日「白いご飯」を食べ、切れ端を寄せ集めたサービス品とはいえ「刺身」を食べ、「瓶ビール」を飲んでいた。

缶ビールより高価な瓶ビールを飲んでいたのは、缶ビールには缶の匂いがして美味しくないからだそうだ。

「そんな贅沢なこと言ってられるのか」幼心にいつもそう思ってた。

自宅の庭に鶏が二羽飼われていた。

恐らく父の趣味だと思う。
借家の小さな庭に父の手作りの鶏小屋があった。

毎朝卵を産んでくれる貴重な鶏なのだが、その餌がパンの耳だった。


小学生になった私たちは餌作りをさせられた。
パンの耳を細く切り、みじん切り。
大根の葉(スーパーにタダで捨ててある)もみじん切り。

そこに鶏用の飼料を混ぜて小屋の中に入れる。
「大根の葉をあげると卵の黄身が盛り上がった良い卵を産む」と父は自慢げに語っていた。


鶏舎独特の匂いと、手を入れると突かれそうにな勢いで向かってくる鶏達に餌を入れるのは苦行だった。


そしていつも
「私達のご飯は鶏と一緒なのか」と思っていた。


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空だって飛べるよ ~はじめに~
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