「歌ってみた」と-14LUFSの関係

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音声・音楽
ココナラでのサービス出品を開始して1か月ほど経ちました。
おかげ様で多くのお客様からご注文を頂いていて、その中でも多いのが「歌ってみた」ミックスのご依頼です。
ミックスにOKを頂いた後、マスター音源(完成品)としてWAVファイルを納品していますが、その際に私は-14LUFSバージョンもお渡しするようにしています。
「-14LUFSバージョンとは何か?」
「YouTubeにアップする際にどちらを使ったら良いか?」
上記のお問い合わせをいただくことがあるので、ラウドネス規制に関して以下ご説明いたします。


ラウドネス値について

ラウドネス値はご存知でしょうか?
「音の大きさ」の判断については、昔からピークやVU、RMSなど様々なメーターが使われていたのですが、
「人間の耳が感じる音の大きさ」を数値化する基準として「LUFS」を単位とするラウドネス値が考え出されました。
数値化に関する細かい説明は省きますが、専用のプラグインで測定することができます。
(写真はWAVES WLM Plus Loudness Meter)
Screen Shot 2023-11-08 at 10.09.26.png

マスタリング済みのポップス曲のラウドネス値は-9~-6LUFS(ゼロに近いほど音が大きいという意味です)くらいまで達します。
写真は先日お客様に納品した音源です。測定したところ-8LUFSでした。

YouTubeにおけるラウドネス規制

バラバラの音量感でリスナーの視聴の妨げにならないように、テレビ放送では-24LUFSのラウドネス基準が設定されています。
同様に、YouTubeや音楽サブスク、SNS等のサービスにもそれぞれ独自のラウドネス基準値が存在します。

「歌ってみた」の公開の場として一番多いであろうYouTubeの場合、
-14LUFSが基準値となっています。
これを超えるラウドネス値を持つ音源がアップされた場合、再生時には自動的にボリュームが(-14LUFSになるまで)下げられる仕組みです。

その他のプラットフォームは
Instagram  -14LUFS
ニコニコ動画  -15LUFS (ユーザー側の設定でオフにすることも可)
Twitter  制限なし
Spotify  -14LUFS (ユーザー側の設定で-11,-14,-23LUFSに変更可)
Apple Music  -16LUFS(デフォルトではオフ)
Amazon Music  -14LUFS(ユーザー側の設定でオフにすることも可)
TikTok  -14LUFSくらい?(リミッターを使った独自のラウドネス制限か?)

現時点では上記のようになっています。

2種類のマスター音源

写真は先ほど例に挙げた-8LUFSのマスター音源(赤)と-14LUFSバージョン(青)です。
Screen Shot 2023-11-08 at 10.10.49.png

両者を聴き比べてみると、マスター音源は音圧も迫力も申し分ありません。
-14LUFSバージョンは、音量が小さく「マスタリング前」の音源という印象で少し迫力に欠けます。

ところが、この-8LUFSのマスター音源をYouTubeにアップしてみると前述のラウドネス制限により、超過している分(-14LUFSになるまで)のボリュームを自動的に下げて再生されることになります。
その数値は-6dbです。半分の音量にされてしまいます!

一方、-14LUFSバージョンの方は基準値ピッタリなので、ボリュームが変わらず元のまま再生されます

この状態での波形を比べてみます。
Screen Shot 2023-11-08 at 10.11.31.png

最初と違って青の方が良い音がしそうですね。
実際に両者を聴き比べてみると、
(-6db下げられた)マスター音源(赤)に対して、-14LUFSバージョン(青)は自然でクリアな音でダイナミクスが感じられます。
つまり、YouTube上での比較では-14LUFSバージョンも充分な魅力があると言えます。

実際にYouTubeにアップしてみました

YouTube上でどのような音量操作が行われているか確認することができます。
動画の画面上で右クリック→「詳細統計情報」
出てきた情報の上から4番目「Volume / Normalized」に記載されています。
スクリーンショット (26).png

-8LUFSバージョンはこちらです↓
スクリーンショット (27).png
元の音量より6db下げられて50%にされていることが確認できます。

一方-14LUFSバージョンは↓
スクリーンショット (28).png
音量操作なし、100%で再生されています。

結局どちらのバージョンを採用するべきか?

CD時代に音量音圧競争が起きたことにより、我々エンジニアは音質やバランスを多少犠牲にしてでもリミッターやマキシマイザーで爆音にして来ました。
2000年代初頭はとにかく音圧音量が大きいのが人気のマスタリングでした。
しかし、YouTubeやSpotifyがメインになりつつある現状では、
「どうせ制限がかかって音量が下がってしまうんだったら-14LUFSの方が自然な良い音で聴いて貰えるのではないか」
ということで数年前からYouTube専用バージョンを作るのが流行り始めて、最近ではCD用、配信用、YouTube用のように何種類かマスターを用意することも多くなっています。

一方で、音圧競争の結果生まれたパツパツなマスタリングは、ジャンルによってはサウンドの個性として不可欠なこともあります。
「たとえ6db下げられたとしてもマスター音源の方が良い」という方も多くいらっしゃいます。
曲やジャンル、それぞれの好みによって選択は変わると思います。

お渡しした2種類のマスターのどちらをYouTubeにアップするか?
可能であれば、公開前にどちらもアップしてみて実際にYouTube上で聴き比べることをお勧めします

私の意見としては、
・曲の雰囲気や迫力、売り物(CD)っぽさならマスター音源
・歌の自然さ、ダイナミクス、クリアなサウンドなら-14LUFSバージョン
大まかに言えば上記のような違いがあると思います。
「歌ってみた」の場合は-14LUFSバージョンの出番も多いのではないでしょうか?

お読み下さりありがとうございました。
なかなか説明が難しいラウドネス規制ですが、ご質問ありましたらお気軽にメッセージでお問い合わせください。
こちらのサービスでは納品時に-14LUFSバージョンもお渡ししております。
是非ご依頼ください!










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