『五輪書』 宮本武蔵が現代に生きていたら・・・Part1 地の巻

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『五輪書』(ごりんしょ)は、日本の剣客である宮本武蔵が、江戸時代初期に著した武道の書です。以下に、『五輪書』の要点を詳しく説明します。

1. 剣術の技術: 
『五輪書』は、剣術や武道の技術に焦点を当てています。宮本武蔵は、彼自身が実践した経験から、剣術における戦術、動き、攻防のテクニックを詳細に解説しています。これは、剣道や武道の修行者にとって、実践的な指南書として価値が高いです。

2. 武道の哲学: 
『五輪書』は単なる戦闘技術の指南書ではありません。武蔵は戦闘の哲学や心構えについても語ります。相手を知り尽くし、戦闘において冷静な判断力を保ち、自己鍛錬を怠らないことが重要であると述べています。

3. 武道の無差別性:
 『五輪書』は、特定の武道に偏らず、あらゆる武道に通用する原則と技術を提供します。武蔵は、武道の本質は武器や道具に依存せず、自身の身体や精神の鍛錬にあると考えました。そのため、この書はあらゆる武道を学ぶ者に役立ちます。

4. 戦略と心の持ち方: 
『五輪書』では、戦術的なアドバイスに加えて、戦闘への臨む心構えや哲学も語られています。敵を知り、自己を知り、冷静な判断力を持つことが、戦闘において成功するために必要とされると説いています。

5. 日常生活への応用:
 宮本武蔵は、武道の修行は日常生活にも応用できると強調しています。自己鍛錬や自己超越は、戦闘技術だけでなく、個人成長やリーダーシップにも適用できるとの信念を持ちました。

『五輪書』は、武道家や剣術の修行者だけでなく、個人成長やリーダーシップ、戦略思考に興味を持つ多くの人々にとって、価値ある教訓を提供する文学的な古典とされています。


地の巻


まず、武士は文武二道といって、二つの道を嗜むことは道である。た とえこの道に才能がなくても、武士たるものはそれぞれの身の程に応じ 兵法の道を修行すべきである。だいたい武士の考えていることを推 測すると、武士はただ「死」という道を嗜むこと(死を覚悟すること)、とい う程度に考えているようだ。死を覚悟するということにおいては、 武士に限らず、出家 (僧侶)でも女でも、百姓以下にいたるまで、義理 を知り、恥を思い、死を覚悟するということにおいては、その差別はな いのである。

武士が兵法を修行する道は、何事においても人に優れるということが 本義であり、あるいは一対一の初合いに勝ち、あるいは数人の戦いに勝ち、 主君のため・わが身のために名をあげ、立身もしようと思うこと、 これこそ兵法の徳によってできるのである。また世の中には、兵法の道 を習っても、実際のときの役には立たないだろうという考えもあろう。 そのことについては、いつでも役に立つように稽古し、いかなる事態に まこと も役に立つように教えること、これが兵法の実の道なのである。

一 兵法の道を大工にたとえたこと。大将は大工の棟梁として、天下の (法や規範)をわきまえ、その国の利非曲直を糺し、その家の秩序を保つこ、まさに棟梁の道である。大工の棟梁は同等伽藍の墨金を覚え、宮殿や楼閣の設計図を理解し、職人たちをつかって 家々を建てる。

これは大工の棟梁も武家の棟梁も同じことである。家を建てるため木配りをするときは、まっすぐで節のない見栄えの よいものを表の柱とし、少し節があってもまっすぐで強いものを裏の柱にし、たとえ弱くても節のない木の見た目がよいものを敷居・鴨居・戸・障子にとそれぞれにつかい、節があってもゆがんでいても強 いものはその家の強さを要する個所個所を見分けて、よく吟味してつ かえば、その家は長く崩れにくいものである。また、材木のうちでも節が多く歪んで弱いものは、足場にでもし、後には薪にでもすればよい。


棟梁が大工を使うには、その技術の上中下の程度を知り、あるいは とこまわ 床廻り(床の間)、あるいは戸・障子、あるいは敷居・鴨居、天井以下、 ねだ それぞれの技量に応じて使い、腕の劣るものには根太(床板を張る横木) くさび を張らせ、もっと悪いものには楔を削らせるといったように、よく人 はかど てわ を見分けて使えば、仕事も捗り、手際がよいものである。捗り、手際 がよいというところ、何事も手抜きしないこと、使いどころを知ることと、やる気の程度を知ること、励ますこと、限界を知ること、これらの事どもは棟梁の心得である。兵法の利(道理)もこのようなものである。

兵法の道では、士卒たるものは大工であり、自分でその道具を研ぎ、いろいろな責め道具をつくり、大工の箱に入れて持ち、棟梁の指示に ころりよう 従い、柱や虹梁 (化粧梁)などを手斧で削り、床・棚を鉋で削り、 透かし物や彫り物などもして、よく寸法を確かめ、隅々やめんどう(長廊 下までも手際よく仕上げること、これが大工のあり方である。

大工の技術を手にかけてよく仕覚え、墨金の法をよくわきまえれば、 後には棟梁となるものである。大工の嗜み (心得)は、よく切れる道具 を持ち、ひまには研ぐことが肝要である。その道具を使って、御厨 子、書棚、文机、卓、または行灯、俎板、鍋の蓋までも上手に作り上 あんどん げること、大工の最も大事な仕事である。士卒たる者は、このようなものである。よくよく吟味しなければならない。

一 大工の嗜みは、歪まないこと、接合部分をきちんと合わせること、 剣でよく削ること、擦り磨かない(磨いてごまかさない)こと、あとで捩れないことが肝心である。

兵法の道を学ぼうとするならば、ここに書記すところの一事ひとことに心を入れて、よく吟味すべきである。

わが兵法を学ぼうと思う人は、修行の法(決まり・規則)がある。

第一に、邪でないことを思うこと(願うこと)。

第二に、兵法の鍛錬に励むこと。

第三に、もろもろの芸(武芸・芸能)を学ぶこと。

第四に、さまざまな職能の道を知ること。

第五に、ものごとの利害得失をわきまえること。

第六に、あらゆることについて鑑識力を身につけること。

第七に、目に見えないところを洞察すること。

第八に、わずかな事にも注意をすること。

第九に、役に立たないことをしないこと。




次回から水の巻編です。
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