キャリアを考える時のこと ~人の発達段階、転機~

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コラム
ライフキャリアデザインカウンセラーの澤地(さわちゃん)です。

私自身の、あるいは来談者の方のキャリアを考える時に、「今、どのようなステージに私は(この方は)立っているのだろう?」ということを意識します。

そのステージは、過去から現在、そして現在から将来にわたってあたかも川の流れのようなビジョンとして私の意識の中に描かれます。どのように生きてきて、今ここの生はどうあるのか、そしてこれからはどう歩もうとしているのか・・・、ちょっと哲学的で浮世離れした感じに思われるかもしれませんが、私が誰かのキャリアに向き合うときはそんなことを思うのです。

答えはその人自身の中に必ずあるものだと思いますので、外からとやかく言うことでは本来ないのかもしれません。しかし、ひとりだけでは答えにたどり着けないこともあるのではないでしょうか。その人に誰かが寄り添うことで答えを見い出すに至ることも有り得ることと考えます。今回は私がキャリアに向き合うとき、どのようなことを意識しているかをお話ししたいと思います。

心理学者のダニエル・レビンソンは、成人の発達について研究をし、人生には「発達段階」があり、その発達段階の中には、「過渡期」があると言っています。主なものを挙げますと、ひとつは17歳~22歳くらいの「成人への過渡期」、次は40歳~45歳くらいに「人生半ばの過渡期」、そして60歳~65歳くらいに「老年への過渡期」があります。いずれも過渡期は人生の次のステージに上るための橋渡しの時期にあたります。(ただし、1970年代のアメリカ人男性についての研究であることについてレビンソンは断りを入れています。)過渡期においては、「過去とうまく折り合いをつけ、未来に備えなければならない。」としています。私もこの点に注目し、その人自身にとって前向きにキャリアを開拓するエネルギーとなるようなかかわりができればと考えます。

特に、人生100年時代に突入した今、もしかしたら「老年への過渡期」は少し後にずれて、「人生半ばの過渡期」が2度くらい訪れるのではないか、とも思います。もちろん人生は人それぞれ異なることを承知の上で、もし一般的な会社員であれば・・・という前提ですが、1度目は35歳~40歳くらいに「管理職になる(ならない)」「大きな仕事を任される(任されない)「転職を考える(考えない)」などの転機が訪れるころ、2度目は50歳~55歳くらいに「この先の社内キャリアが見えてしまう」「定年後のキャリアについて考える」「早期退職をして独立する」などの転機が訪れるころ、のような状況が想像できます。(この段階で「老後」を想像することは、まだ時期的に遠くリアリティに欠けますし、中々難しいのではないでしょうか。)もちろん、仕事だけではなく、家族関係や社会との関係の中で起こる出来事も転機に影響すると考えられます。

「転機」を上手に扱うことができれば、人生の次のステージで「最盛期」を迎える可能性がぐんと高まります。心理学者のウィリアム・ブリッジスは、「転機の始まりは、何かが終わるときである。」と言っています。そして、途方にくれたり、時には空しい気分になったり、混乱や苦悩をくぐり抜けて、新たなことに向けて考えや行動を統合してゆく、としています。ここは非常に重要な点ではないでしょうか。

「今ここで」何かに悩んだり、苦しんだり、決着をつけたり・・・があるからこそ、自身の転機を前向きに統合してゆくエネルギーを得ることができるのでしょう。転機を自分自身で創り出してゆくこと、あるいはいつか訪れる機会に対して準備をしておくこと、偶然に上手に対処できること・・・自身の発達段階や転機(のきっかけ)を見つめる眼差しを持つことで、そのような構えでいることが出来るのだと思います。「キャリアというのは偶然性によって決まる。」とし、「計画された偶発性(Planned Happenstance)」を提唱した心理学者のジョン・クランボルツは、好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心などの行動特性が自身に訪れるチャンスをキャリアにつなげてゆくことに寄与する、と言っています。私自身、ぜひそういったワクワクするような行動特性を身に付け実践したいものだと思います。

ところで、人生100年時代が当たり前に語られるようになって久しいですが、レビンソンの書籍に引用されている「タルムード」の箴言がとても興味深かったので、ご紹介しようと思います。

五歳は読書(聖書)
十歳はシシュナ(立法)
十三歳は十戒(道徳的責任)
十五歳はゲマラ(タルムードの註解書)
十八歳はフーパ(婚礼の天蓋)
ニ十歳は生計を求め(職に就く)
三十歳は十分な力を身につけ
四十歳は理解し
五十歳は助言を与え
六十歳は長老となり(英知、老齢)
七十歳は白髪
八十歳はゲブラ(年齢の新しい特別な力)
九十歳は歳月の重みに曲がり
百歳はあたかももう死んで、この世を去ったかのようになる。
(D.レビンソン「ライフサイクルの心理学」より引用)

これは「人間の年表」としてあらわされたものだそうです。どのような印象を持たれたでしょうか。私はこれを読んだときに、とても励まされた気持ちがしました。人生の歩みはどのように進むか分からないけれど、この年表のように俯瞰することで、人生は誰のものでもない自分のものでしかないことは間違いないのだと思いました。だからこそ私はキャリアに向き合うとき、私自身は、あるいは来談者の方は、今自らどのステージに立っているのか?について、意識的であろうとするのでしょう。

今回は私がキャリアに向き合うとき、どのようなことを意識しているかをお話ししました。私は2023年9月からライフキャリアデザインカウンセラーを名乗り、個人や世帯の職業生活設計や資産設計のお手伝いをしようと決意し、今の会社での仕事を続けながら複業をすることにしました。保持資格としては国家資格キャリアコンサルタントとAFP(日本FP協会会員)をコアスキルとして、これまでの会社生活や人生経験で学んできたことを活かして会社内や地域社会に向けた価値創造につなげようと考えています。

私は来談者の方に今回お話ししたような支援でお役に立つことを使命とするライフキャリアデザインカウンセラーでありたいと思っています。ご関心を持っていただいた方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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